見出し画像

2022年3月の日記~自分は町の消費者なのか、それとも生産者なのか~

3月*日
スキーの検定試験を受けようと思い立ち、日帰りで長野県のスキー場に行った。ともに受検するのは大学生が多く、リフトで一緒になったときに話をすると、ぼくも30年近く前に出ていた大会が終わった直後だという。「八方尾根の宿で居候しているのですが、今日は検定を受けるために朝の仕事を免除してもらって来たんです」と話してくれた男子大学生とは「えー!ぼくも30年近く前、八方尾根で居候していたのよ!」と大変盛り上がった。でも当時ぼくが居候していた宿はもう廃業してなくなっていたり、ぼくが所属していた大学のスキーチームは数年前に解散してしまったりと、無くなってしまったものも多い。今も大学時代のスキーチームのOBたちとOBツアーを年に一度開催しているが、新たに加わるOBが生まれることはなく、これもまた先細ることが決まっている。「スキーが好き」な気持ちだけは死ぬまで持ち続けて滑り続けたい。

3月*日
人が集まると揉め事は起こるものだし、そう考えると組織に揉め事はつきもので、そういった相談や悩みごとが持ち込まれることも多い。その時にいつも考えるのは、揉め事を解決しようと考えるのではなく、揉め事を忘れるくらいの何か新しいことを起こそうということ。揉め事は多くの場合みんなの「足を引っ張る」のだけれど、必ずしもそれをきれいに解きほぐす必要はなく、振り切って蹴っ飛ばしてしまってもいい。そして、どちらかと言えば後者の方が早いことが多いと、ぼくは思う。

3月*日
アソブロックを卒業して「さりげなく」という名で出版社を経営している後輩から原稿執筆の依頼を受けた。京都芸術大学から制作を頼まれている冊子に掲載するためのものらしく、テーマが「遊さん、遊んでますか?」だという。「遊び」がテーマの冊子らしく、その中のイチ企画として、「リアル遊さん」に原稿を依頼して連載化するのだそうだ。果たして続くのかとも思うのだが。
「遊さん、遊んでますか?」と聞かれたら「はい、遊んでます」と即答なのだけれど、それだけだと中身がないので、テーマについて時間をかけて考え色々と思うことを書き出し1本の原稿にまとめたら、文字数が依頼ちょうどの1,800文字くらいになった。出来もなかなかいい。翌日、推敲も終え送稿する前に念のため依頼文を読み直してみたら、依頼事項に、
1.800文字程度のエッセー
2.プロフィールと写真
と書かれていた。あれ「1,800」じゃなくて、「1、800」だったの?しまった、1,000文字も多いじゃないか。

3月*日
ラジオを聞かない人には何のことやらなのだが、車移動が多いのでもっぱらradikoで毎日楽しんでいる。たぶん一番使っている有料アプリだと思う。いくつかあるお気に入り番組の中でも順位を付けろと言われたら、優勝は「問わず語りの神田伯山」。この番組が、時に過ぎた毒舌が出るにも関わらずあのようないい形で成立するのは、スポンサーがいいからだなあと思う。CMも番組の一部だということに、スポンサー自身の理解が深く、本人にナレーションさせるのもその一環なのだろうが、番組が好きで・応援したくてスポンサーをしているのがすごく伝わってくる。番組を守っている、という感じすらある。
反面、スポンサーが足を引っ張る代表格が「ザ・ラジオショー」。月~木がナイツ、金は中川家、土はサンドイッチマンがMCで、内容は楽しいのだが、間に「10-10-10」「10-10-10」という弁護士事務所のCMが繰り返され、結果、トークの流れをすべてをぶち壊している。
「過払い金が戻ってくるぞ~!」
「身内がたとえ死んでいてもB型肝炎が理由なら金がもらえるぞ~!」
「がっつり取って俺たちと山分けしようぜ~!」
と、聞こえのいい言葉でひたすら呼びかけるのだが、倫理観に欠けた、ほんとに卑しい内容のCMで気持ちが荒む。
そう思うと、TVもきっとそうで、かつて「東芝日曜劇場」や「花王名人劇場」、あるいは日立が支え続けた「世界・ふしぎ発見」など、企業名が出る、出ないは別にして、企業が愛を注いだ(それは広く市民のために)番組があったと思う。

3月*日
きょうとNPOセンターの社内研修(通称若手会)に参加した。理事の一人でフリースクール「アウラ学びの森」を運営するKさんがみんなに話をするということで聞いてみたくなった。聞く専で参加するつもりが、途中で話を振られたこともあって、ついつい調子に乗ってしゃべってしまった。反省である。
その最中、「団さんそれって、スキハラですよ」と言われて驚いた。「好きなことは?」「将来どうなりたい?」と聞き続けることは、ハラスメントにもなり得るらしい。こちらは良かれと思って問いを発しているのだけれど(その問いに向き合うことで本人が何かしらの気付きに出会えることを期待して)、いろんな見方、捉え方があるのだと思った。ハラスメントの種類がどんどん増えていく世の中だけれど、行き過ぎると窮屈な自己責任社会が広がるだけで、若者にも、社会にもメリットは少ないと思うのだがどうなのだろう。

3月*日
友人に誘われ、徳島県神山町で行われた2泊3日のスタディツアーに参加した。地域活性という意味での町の歴史のレクチャーに始まり、様々な取り組みの現状を視察したり、関係者の話をたくさん聞いたりした。学ぶことが山盛りで、感動したり、悔しかったり、驚いたりと大きく感情が動く3日間だった。
小さな町だからこそという面もあるのだろうが、そこに住まい・暮らす人たちが、町の消費者ではなく町の生産者だった。町自体の生産者なのだ。一時は限界集落とラベルされた町が少しずつ活気を取り戻し、やがて視察の絶えない町になったのは、そこに住む人々が、自分ができることを少しずつ積み重ねていった結果だと思った。何より、新しいことを始めようとする若者が多かった。それは、そんな風に頑張る上の世代を見たからに他ならないと思う。評論家が少ない、実践者にあふれた町。また行こう。

3月*日
4月、新年度。受験・進路を考えるタイミングに来た長男中3と、アソブロックの新卒2年目Sくんが話す場を設定してみた。息子にとっては、親世代よりもかなり近い「先輩」で、雑談の中、色々と質問をしていた。わがごとを振り返ると、この時期、勉強も大事だが、なぜ勉強をするのかを考えることの方がたぶん大事で、それは、働くのも、経営するのも、同じだと思う。
その根源的な問いに向き合うための第一歩は、たくさんの人の話を聞くこと。この企画が、何かの役に立つのか、はたまた立たないのか、誰にも分からないが、そんな風に勝手な支援ができている自分には、ちょっと満足している。それで十分である。S君、付き合ってくれてどうもありがとう。