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夜のネオン街とイケメン客引き

おはようございます。

社会福祉士×ダウン症児パパのTadaです。
Tadaのイントネーションは夜と同じです。


仕事が遅くなった夜

僕の働く街では21時過ぎたあたりから壊滅的に公共交通機関が弱体化する。

そもそも決して強くはないうえに弱体化するからたまったもんではない。

そんなわけではなからバスで駅に向かうという選択肢を捨て、早歩きで駅に向かった。

職場から駅までは約2キロ。
最近はめっきりできてないけどお昼休みのランニングで3キロ弱走っているので苦を感じる距離ではない。

久しぶりの夜道。
どんな風景かと少し心昂る自分がいた。

普段見慣れた景色でさえも
時間が変わるだけで別世界のようになることもある。

スタートから1.5キロほどは実に静か。
定時帰宅の時間であれば、群れをなすほどではないけれど、会社員や学生が視界に確実に入る程度には人がいる。しかし夜は誰もいない。見渡す限りの無人。疎らだけど車は通るので時折ライトで遠くまで照らされるけれども、やはり人はいない。代わりに鈴虫らしき良い音色で鳴く虫の声が聞こえる。
うん、風流かな風流かな。

うってかわって駅までラスト500mほどの道のりは飲み屋街だ。ネオン街といえばなんだかロマンチックに聞こえるからタイトルには使ってみたものの、さしてネオンは見当たらない。
しかし、活気はあった。さすが飲み屋街。ごきげんな輩たちが楽しそうに千鳥足で歩いている。普通に仕事終わりだけど、それだけで少し楽しい気持ちになる。
ほらあれ、飲まなくても酔えるタイプです僕。

そんな飲み屋街はお客さんだけが賑わっているのではなく、むしろ客引きらしき軍勢の方が多く感じた。軍勢といっても群れをなしているわけではない。ひとつのお店の前に群れをなして客引きしていたらそれはもう世にも奇妙な物語だ。

ちゃんとお店ごとに1、2人の客引きが立っている。

縄張り的なアレはあるんだろうか。
客引き同士の抗争的なアレはあるんだろうか。
夜の街とは縁遠い生活をしている僕は妄想が膨らむ。

しかし強く願うことはただひとつ。

「どうか絡まれませんように」

そんな淡い願いは軽く打ち砕かれるのであった。

ワクワクとピリピリを交互に出しながら飲み屋街を歩いていく。残り50mほどで飲み屋街を抜ける!と思ったその時、

目があってしまった。

なんかイケメンな客引き。

お顔立ちもLDHにいそうな感じでよかったが、なにより全体のバランスがよかった。

スーツスタイル。
暑いからジャケットは着ずにジレ。

ちょいワルイケメンのスーツをビシッと着こなす様は、つい目指してないのにも関わらず羨ましく思えてしまう。

有線のイヤホンマイクを装着している僕はそそくさとその場を立ち去ろうとした。その時、

イケメンが僕の方に体を向けてひとこと

「こんばんは、お店、紹介しましょうか?」

重低音の響く声。風貌も相まってバチェラーシリーズでお馴染みの坂東さんのようだった。そしてイヤホンマイク装備の男にこうも爽やかに客引きをする度胸。なんか自然体で素晴らしかったよ。

しかし早く帰りの電車に乗りたい僕は
スマホを持ってない手を彼に向けて立ててみせ、そして目線で語った。

「ごめんね」


彼は察したかのようにスッと去っていった。
おぉ、去り際もイケメン。

いや、

よく考えたら歩いてたのは僕なのでスッと去ったのは彼ではなく僕だった。

イケメンという枠を設定すると何をしてもイケメンと思ってしまう。しかし実はそうでないことに気づけたことは収穫だった。

人間は簡単に思い込む。無意識に思い込む。
そして勝手に自分や他者のイメージを構築してしまう。

実はそんなことない

なんてことは山のようにある。

わかっちゃいることも
何度も思い出す機会がないと忘れてしまう。

ありがとうネオン街
ありがとうイケメン客引き

おわり。

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