1995 ネパール -7-
ポカラについて、私がやりたかったことの一つ。それは、ヒマラヤ山脈を見ながらポカラ湖で船に揺られながらギターを弾くこと。
楽器や歌や踊りは、その国や地方のエッセンスが詰まっていると思う。あるいは、初対面の知らない者同士の共通言語を見つける近道だと思う。
そんな事はあとから分かったのだが、暇を弄ぶことのないように、海外の一人旅ではとりあえずフォークギターを必ず持ち歩く事にしていた。
タイにいたときも、その後どこの国に行ったときも、ギターをきっかけに友達が増えた。セブ島では夜中に浜辺でギターを弾いていたら、コッソリそれを聴きに来た人達がいたっけ。私が弾き語りしていたサザンオールスターズなんて、きっと知らないはずなのに。
みんなではないが、ギターを渡すと奏でることができる人もそれなりにいた。それを聴くのはとても楽しかった、ポカラ湖以外では。
スーッと船が近寄ってくる。観光客を乗せた小型船だ。私は独りギターを弾き語りして気持ちよく過していた。
おーい、ちょっと聴かせてよ
うーん。じゃあ、とTears in heavenを演奏した。
スゲー!じゃぁちょっとギター貸して?
はい。
って、私よりもギターも上手く歌もステキな船頭さん。正直バカにされた気分が否めなかった。その観光船に乗っていた人達にとっては、またとないアトラクションだったに違いない。
湖を後にして、私はホテルの近くにあった食堂へ行き、仲良くしていた男性の店員さんにギターをケースごとプレゼントした。
もし良かったら、これ使ってね。
その後、ギターの弦のスペアを添えていなかったことが心残りだった。私が旅の道中で使い古したギターの弦は、その後どの位切れることなく使えたのだろうか、と。
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