クロドリ=Black bird 。理不尽に立ち向かう勇気をもらえる絵本。「ラン・パン・パン」
こんばんは。まにまにです。
4冊目にふりかえる絵本はこちら!
評論社
再話 マギー・ダフ
絵 ホセ・アルエゴ / アリアンヌ・ドウィ
訳 山口 文生
【Amazonより】
クロドリは、王様にたたかいをいどむため、武装して出かけました。クロドリのおくさんが、王様にさらわれてしまったからです。とちゅう、ネコと木の枝、川、アリが仲間に加わり、クロドリの耳の中におさまって、いっしょに行くことになりました。クロドリは、王様の前にとおされましたが、さて…。
こちらはインドの民話です。
ちなみに、上記にある「再話」とは
昔話や伝説、世界の名作文学などを、子供向けにわかりやすく書き直したもの。--goo辞書より
とのことで、イメージ的に日本の浦島太郎とか雪女とか、大昔は口伝で、というかお母さんがしてくれる「おはなしおはなし」的なものに挿絵をつけて、絵本にしたものと思われます。
「耳の中におさまって」なんておはなしでしか表現しきれないですし…
どういう状況?どういうこと?と思いますが、それは深く追及してはいけないところですね。味方たちがクロドリの耳の中に入っていくシーンは、ちょっと漫画的な表現で描かれています。
当然ながらだんだん狭くなっていく耳の中。それもちゃんと描いてあってクスッとします。
タイトルの「ラン・パン・パン」は一体何なのかというと、クロドリがたたく太鼓の音です。さらわれた奥さんを取り返そうと、クロドリは武装して出かけるのですが、その武装品のうちの一つが太鼓というわけです。
まさしく、インド版さるかに合戦!仲間に脈絡がないところも似ています。巨悪を倒しに仲間を連れて向かうところは桃太郎なんかも同じですが、「身内を傷つけられた理不尽に立ち向かう」といった点でさるかに合戦がより近いと思います。
おそらくですが「立ち向かう強さも必要」という教訓を子供に教えるため、世界各国にこのようなお話があるのではないでしょうか。
ちなみに完全武装したクロドリはかなり眼光が鋭く、色使いもあいまってまさに眼光炯炯。ちょっとドキッとしました。めっちゃ怒ってるじゃん…という感じ。
奥さんのことが本当に大好きで、なんとしてでも取り戻さねばならぬ。と思っているのが強く伝わってきます。
仲間の力を借りて、どうやって王様と戦うのか。王様は、小さなクロドリに大人げなくなにを仕掛けてくるのか。ぜひお手に取って結末を見届けてください。
クロドリって?
さて当然沸いてくる疑問として、クロドリって本当にいるの?それとも単に「黒い鳥」の総称なの?はたまたカラスなの?というのがあると思いますが、クロドリは、実在するとある鳥のことを指します。
「Black Bird」というヨーロッパなどに生息する鳥のことで、日本語では正式に「クロウタドリ」というそうです。訳によって「クロドリ」になったりするそう。
こちらです!
絵本のクロドリの面影がある気がする…!
目がきりっとしている…!
日本ではまれな旅鳥として北海道から沖縄まで目撃情報があるそうです。見たことがある人がいるかもしれません。
かなりの美声を持つ鳥で、あのナイチンゲール(小夜啼鳥)に代わるともいわれるそう。実は絵本の中で、王様の身勝手の犠牲になった理由が、「鳴き声が美しいから」であったので、まさにこの鳥のことですね。
また、Black Birdは様々な創作物のモチーフにもなっていて、あのビートルズの楽曲に同名のものがあるほか、「Bye bye black bird」というジャズの曲もあります。この曲はパブリックエネミーズという映画にも登場しました。
(デリンジャーの最後のセリフ!本当ならかっこよすぎです)
Black Bird にはさまざまま意味や解釈が込められていることが多く、「黒人」「奴隷制」というスラングだったり、「売春婦」のことと解釈している方がいたりと、想像以上に深い意味を持つ鳥であるといえそうです。上にあげた二つの曲に共通するイメージは(あくまで私のですが)、つらくて非情なこの場所からもう飛び立とう、といったところでしょうか。
マザーグースの「6ペンスの歌」に出てくる24羽の「クロツグミ」もこの鳥のことだそうです。他にも、実はあらゆる作品にこの「Black Bird」が顔を出しているようなので、見つけたらニヤリとしてください。
そういえば伊坂幸太郎さんの作品に「バイバイ、ブラックバード」という小説がありますね。未履修なので今度読んでみようと思います。
固い夫婦愛で権力に挑むクロドリ。
いざというときは決心してやらねばならぬのだ、という教訓を得られる絵本です。
読んでくださってありがとうございました!
明日はシン・エヴァンゲリオンを見に行ってきます。楽しみすぎる…