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忘れないうちに: 好きな曲に巡りあえた日


"Back to Alexandria (原題: وحشتيني )"という、母と娘のすれ違いと和解を描いた、コメディタッチのロードムービーを見てきた。
フランス語のセリフがほとんどだが、舞台はエジプト。
明るいエジプトの太陽を浴びて、いつも見ているダウンタウンの景色と、アレキサンドリアの蒼い海が新鮮に映る。

映画そのものも良かったので、あとで感想をまとめることにして、この映画はロードムービーにつきものの劇中挿入歌がまた良かった。
どれも古き良きフランスやエジプトの音楽で、その時代に生きていたことはないはずなのに、聞いているととても懐かしい気持ちになる。

その中でも「これはいい出会いだ!」と思ったのが、愛の哀しみを歌った"Ahwāk (I adore youの意味)"という1959年発表の曲である。
冒頭のメロディーと歌詞の調和は、思わず口ずさみたくなるほど耳に心地よい。
そしてなにより、アブドゥル・ハリーム・ハーフェズの声が素晴らしい。
直訳調だが、歌詞の冒頭はこんな感じだ。

愛しているよ(愛しい人よ)
あなたを忘れられたらいいのに
そして、あなたと一緒に私の魂も忘れることができたらいいのに
迷ったときには、たとえあなたが私を忘れてしまっていたとしても、私はあなたのものであり続けるだろう

あなたのことを忘れてしまおう
私にあなたの冷たさを忘れさせてほしい 
それでも、あなたとともにいたときの苦しみを思うと懐かしい
あなたを思うと涙が流れる
どうか帰ってきておくれ

Ahwāk wa atmannā law ansāk
wa ansā ruhī wayyāk…
のリズムが頭から離れない。
久しぶりに、「あ、これ歌えるようになりたいな」と思う曲に出会えた。

そういえば、アラビア語ってこんなに美しい響きだったっけか、とふと思った。
日々の疲れと語学力不足を理由に、「義務」になっていた言語を、また好きになれそうな気がする。9月の第1日目。とても良い日になった。

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