ヒッチハイク

あれは大学卒業直前の、3月半ば。就職先も決まって暇を持て余していた私は、当時通っていたとある講座仲間3人で、ヒッチハイクの旅に出た。

いま思えば、相当思い切った思い出作りだ。「大人になったら出来ないこと、やってみたいこと、やっておきたい!」なんて気持ち一つで、実際の行動に繋がるんだから、とんでもないものである。(当時、母には相当心配された。そりゃ、親の立場からしたら怖いのも頷ける。母よ、心配をかけてごめん。)

計画は至って単純。出発地は東名高速入口でもある用賀IC。目的地は、岐阜の白川郷。画用紙とペン、交渉と運を頼りに、踏み出した。

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旅の全容を細かに書くときりがないので、結論から。ヒッチハイクでの旅は、大成功。無事に白川郷に辿りつき、帰りも用賀まで帰ってこれた。行き帰りに乗せていただいた車は、計10台。

なかなか拾ってもらえずドキドキしていたところ声をかけてくださった、マダムなおばさま。これからの私と同じ職種で働いていたという、素敵な老夫婦。THE関西なノリで道中楽しませてくれた、若いサラリーマンの二人組。夜中凍えていたところをこっそり拾って乗せてくれた、大きなトラックのおじさん。乗せてくれたことに加え、道中飲み物を奢ってくださり、かつ白川郷の頂上まで送ってくださった紳士なおじさま。「乗せてあげたいけれど、軽で人数オーバーしちゃうからダメね。ごめんね、頑張って」と、声をかけてくださったご家族。まだまだ、いっぱい。

会うことは、もうない。まさに、一期一会。もうあれから、10年近くも経つのに、いまだにこの時の出会いは鮮明に覚えている。見ず知らずの私たちを車に乗せるのは、声をかけるのは、勇気がいったろう。

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画用紙とペン、交渉と運だけを持ってスタートした旅、得たものは。

「ずっと忘れない、一期一会の出会い」。

「知らぬ人とも縁をもてる、人のあたたかさ」。

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