「三浦春馬の命日だからツイートしよう」の前に読んでほしい話

2021年7月17日 09:44

名前を出しておいて申し訳ないのだが、私は彼のファンだったわけではない。

だから「自分語りに彼を使うな」と、怒りを感じる人がいるかもしれない。

しかし勝手ながら彼の死に対し、大きな悲しみとモヤモヤを感じている。

同級生が亡くなって、タイムラインは情報過多。そのとき私は

高校三年生のとき、同級生が亡くなった。死因については「不慮の事故だ」という話と、「若い女性の自殺と見られる人身事故があった」という話が混在している。

彼女は、一年生のときに同じクラスで、入学後はじめて話しかけてくれた子だった。学校以外で会ったことはないけど、ホームステイの班も一緒だったから、結構仲はよかったんだろう。

黙祷をした日の夜、同級生はSNSで、思い思いの言葉をぶつけていた。

「いやだ、うそでしょ、帰ってきて」
「早すぎるよね、信じられない」
「卒業式では、あの子の名前を呼んでくれるといいな」
「私たちは待っているから、いつでも帰ってきてね」

本気で悲しんでいる子に対しては「気持ちを整理しているんだな」と思えたが、それに乗じてなにかしら言おうとしている人たち。

そんな言葉を見ていたら、頭が情報過多になって、自分の気持ちを言葉にするエネルギーが残っていない。だから未だに、悲しみが消化不良なんだと思う。

同級生の死以来、追悼ツイートにはモヤモヤしてきた。

そんな私が、人気若手俳優の死を知ったのは、友だちのまぬけなツイートだった。

「三浦春馬死んだの本当？　頭ぼんやりしてる」

信じられなくて検索をかけたら、ニュースサイトの一面に彼の名前と、あの端正な顔写真。

それだけで心は痛いのに、検索に引っかかるのは、彼へのメッセージ。

一枚だけ手元にあったツーショットとともに、「優しい人でした」と投稿する芸能人。写真を投稿し、好きなドラマを上げて、もう一度演技が観たいと嘆くファン。

タイムラインをのぞけば、ファンと公言していた訳でもない知人が「残念すぎる」「ご冥福をお祈りします」などとツイートしている。

悲しんでいらっしゃるところ申し訳ないのですが、私はすごくモヤモヤしてしまうんです。

メディアが著名人の自殺を扱う場合、「報道を過度に繰り返さない」「センセーショナルな見出しをつけない」「正しい情報を提供する」というガイドラインがある。

自らと著名人を重ねて、自殺する人を生まないためだ。

しかし、自殺で大切な人を亡くした人への配慮でもあると、私は考えている（ファンへの配慮でもあるだろう）。

そして気軽なツイートが検索で引っかかり、多数の目に触れる現代、私たちもこのガイドラインを意識するべきだ。

誰かの発言は「報道を繰り返す」ことにも、「センセーショナルな見出し」にも「憶測での情報発信」にも、誰かを傷つける発言にもなりうる。

なにが引き金になって、悲しみがあふれ出すかは、周囲の人あるいは本人自身にもわからないものだ。

高校時代のある日、友人がこう言っていた。

「電車の話してたときに、A子が『事故のこと思い出すからやめて』って言いだしたの。ほらA子、事故で亡くなった子と、仲よかったよね？」

友人は配慮できなかった自分を反省していたが、内容を聞いても、事故と結びつくようには感じられなかった。

だけどA子にとっては、悲しみの引き金だった。彼女はこれから電車の話題が出るたびに、事故を思い出すのだろうか。けれどこれからずっと電車の話をせずに生きていくことは難しいだろう。

SNSでの追悼が全て悪いとは、私も思っていない。

ただ正直言って「そのツイートは、心に留めておいてもいいんじゃない？」「とりあえず『なにか言わなきゃ』って思ってない？」という投稿も存在する。

残念ながら、自殺って全然珍しいことではない。

私も高校の友人以外に、二人の若い知人を自殺で亡くしている。

あなたのタイムラインにも、誰かの自殺報道で悲しい過去を思い出す人や、言葉にできないくらいの悲しみを抱える人がいても、おかしくない。

だから誰かが亡くなったとき「投稿しなきゃ」と思っても、少しだけ待って考えてみてほしい。

※最後に三浦春馬さんに対して一言添えるべきだと思うのですが、こうした場での追悼メッセージに違和感があるため、省略させていただきました。

以前、著名人の追悼について掲載していただいたものです。よろしければ、こちらもお願いします。

読んでいただいてありがとうございました！どんな記事でも、どんな反応をいただいても、おすすめ聖飢魔IIが出るようになってます！DEVIL BLESS YOU!