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『仕掛人 藤枝梅安』は本格時代劇にBL風味とグルメ要素が加わって最強

池波正太郎原作の時代劇映画となればシニア層がメインターゲットに思われるが、新たな女性ファンも狙った作品だと思う。フェロモンがすごい。

黒が似合うSっ気の紳士おじさん=藤枝梅安(豊川悦司)と、愛嬌あるまんまる笑顔のかわいいおじさん=彦次郎(片岡愛之助)の「フェロモンむんむん映画」である。たぶん100分くらいに圧縮できそうな映画なのに2時間以上の尺になってるのは、全てこのフェロモンの長さである。カッコいいおじさんをじっとり撮るカットの長さ、最高かよ!

中身は二人の殺し屋のハードボイルド時代劇なのだが、殺しの仕事後はなんだか寂しい気分になって、お互いの家にお邪魔して、お互いが相手のために作った美味しそうなご飯をよばれあうという仲良しおじさんのグルメ映画でもあるのだ。「彦さん、泊まって行きなよ」と付き合ってるカップルみたいな会話をしながら、先にこたつで眠ってしまった彦次郎に自分の上着をかけてやる梅安の姿に、「こういう時代劇、観たかったんよ!」という新しい観客層はたくさんいると思う。あくまで仕事のパートナーの距離感を維持しつつ、なんだかBLっぽい空気感のプロの殺し屋二人、最高かよ!

この二人が来月公開の「梅安2」では二人旅をするというのだから、もうわくわくが止まらない。たしか原作に手が触れて「あっ」となる場面があるが、ぜひ映像化よろしくお願いします。

褒めてばかりだと嘘くさくなるのであえて勿体無いと思ったところを言うと、新しい女性ファンを呼びこめる作品にしてはハードボイルドっぷりが本気でハードなこと。詳しく言うと、女性が酷い目に遭うシーンが何回か出てくること。しかも、かっこいいおじさんじゃなく、ちょっと気持ち悪いおじさん(そういう演出になってる)が加害者なので、あれは繰り返し出てこなくても良かったなーとは思った。「冷酷な現実」をしっかり描く必要性は感じつつも、やっぱりカッコいいおじさんだけ観ていたい。

ただ、映画としては映像も美術も役者陣も本当に超一流。
「針の殺し屋」という虚構っぽい主人公に説得力を持たせるために、全体をとことんリアル路線で貫いている。昔、脚本家の先生が「大きな一つの嘘のために百の本当を用意しろ」と言ってたのを思い出す。
この重厚さは何時間でも観ていられる映画世界になっていて、好きな人には本当にたまらないだろう。かく言う私も何時間でも観てられる。特に、梅安と彦次郎の仲良しシーンは!



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