見出し画像

シンエヴァンゲリオン考察:父性と母性はいかに碇親子を救うか②〈オイディプスコンプレックスとは?〉

 碇シンジが綾波レイに抱く”恋心のような何か”はオイディプスコンプレックスであると考える。言い換えれば、綾波レイが綾波ユイである事の証明として、碇シンジはオイディプスコンプレックスを抱いていると言える。これはシンエヴァンゲリオンを”父性と母性:そこからの自立”というテーマを語る上で欠かせない要素であると考える。今回は皆さんに馴染みのない、オイディプスコンプレックスについて解説し、エヴァンゲリオン考察の補助とする。

【オイディプスコンプレックスとは?】

 上記の記事で、シンエヴァンゲリオンを”父性と母性”の観点で考察する上で欠かせない概念や作品を紹介した。その一つにオイディプスコンプレックスを上げている。しかし、親切心のない紹介であった為、ここで詳しく記したい。まず、wikipediaレベルで言えば以下のようになる。

オイディプスコンプレックスとは、母親を手に入れようと思い、また父親に対して強い対抗心を抱くという、幼児期においておこる現実の状況に対するアンビバレントな心理の抑圧のことをいう。引用:wikipedia

これでは詳細に欠けるので以下を引用する。

男児は、母親に異性感情を抱くが、社会的にそれが許されないために、自分の気持ちを抑える。そして、自分は男であるから、いつか、父親のような存在になることができ、母親のような女性をめとることができるという意識を持つことによって、それを納得する。そして、母親とは別な女性に愛情を抱くようになる。このようにして、男の幼児の欲望は変化して、社会的なシステムに組み込まれていくのである。

 以上から、男児が幼少期に抱く母への感情が父を遠ざけ敵視し、母を欲するようになる事がわかる。この事を”母性の中に女性性を幻視する”と表現しよう。


【オイディプスコンプレックスと碇シンジ・綾波レイ(綾波ユイ)】

 この幻視が碇シンジが綾波レイに抱く女性性なのである。シンジは作中でレイに恋をしているように描かれる。レイ(綾波タイプ)もまた、シンジに惹かれるように設計されていると劇中で明らかになる。もっと言えば、レイがシンジに惹かれるからこそ、シンジもまた惹かれるのである。だがこれは男女の恋愛ではない。

 レイがシンジの母である綾波ユイを元にして作られたクローンである事から、母との恋愛は成就しようがないのだ。つまり、今までシンジがレイへ抱いていた気持ちは恋愛感情ではなく、母性の中に女性性を幻視している、母性への憧れ、それを物にしたいという男児の欲求なのである。すなわちオイディプスコンプレックスだ。またこの証明から、エヴァンゲリオンのヒロインが綾波レイでない事、つまりシンジが抱く女性性の対象は他にいる事がわかるのである(本稿では取り上げない)。

【まとめ】

 以上、碇シンジが綾波レイへ抱く真の感情に迫った。作品を通して、シンジというキャラクターは母性を知らず、女性性も知らない”男の子”として描写されている。エヴァンゲリオンはそんな”男の子”が”男性”へ変貌する物語であると考える。そして、碇ゲンドウが”男性”から”父親”になる物語なのだ。次回はゲンドウが”父性”を獲得する様子を考察していく。


画像1

↑モロー《スフィンクスとオイディプス》


【おまけ】

 以下、オイディプスコンプレックスの語源となったギリシア神話のオイディプスの物語を紹介する。


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?