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加齢により嚥下機能が低下する理由と正しい予防法

食物を認知し口まで運び、咀嚼し咽頭、食道、そして胃まで運ぶ過程を担う機能を摂食嚥下機能といいます。

この機能が低下してしまうと命にかかわる場合もあります。特に高齢者は、加齢にともない嚥下機能が低下することが判明しています。

そこで今回は、加齢と嚥下機能の低下について詳しく解説します。

加齢による筋力の低下により嚥下機能が変化する

加齢は、身体のあらゆる部位の機能低下を引き起こす要因といわれています。嚥下機能もそのひとつで、解剖学的には、舌骨の上下にある筋肉繊維が「萎縮」「緊張の低下」「緩み」を引き起こすことで、咽頭の位置が下に垂れ下がってしまい、結果として嚥下機能が低下すると考えられています。

咽頭の位置が垂れ下がると、嚥下時の咽頭閉鎖のタイミングがズレてしまい、気道へ食物が流れやすくなってしまうのです。これを「誤嚥」と呼びます。

このように、加齢によって筋力が衰え出すと、今まで正常だった部位の構造や場所が微妙に変わり、さまざまな障がいを引き起こしてしまうのです。

加齢による嚥下機能の低下で増えるリスク

加齢によって嚥下機能が低下すると、以下のようなリスクが高まります。場合によっては命に関わる重大なリスクもあるため、注意しましょう。

1. 「むせ」が多くなる

前述したように、嚥下機能が低下すると気道に食物が入りやすくなり、「むせ」が多くなります。むせが生じるということは気道に入りそうな食物を反射で押し返している証でもあります。「最近、むせることが多くなったかも…」と感じる人は要注意です。

2. 栄養不良になる

「むせ」が多くなったり、嚥下機能が低下したりすると飲み込みやすいものを摂取しがちになります。そのため生野菜や飲み込むのに時間がかかるものを食べなくなり栄養が偏ってしまうリスクが高まってしまいます。栄養が偏ったり不足したりしてしまうと免疫力の低下や皮膚の異常なども併発する恐れがあるのです。

3. 脱水症状を引き起こす

むせたくないがために、水分摂取を控えてしまう人も少なくありません。ただ水分は人間にとって重要であり、あまりにも水分を摂取しないと、夏場に限らず脱水症状を起こしてしまうリスクが高まります。一気に飲まなくてもよいので1回ごとにこまめに飲むようにしましょう。

4. 食べ物が気道を塞ぎ窒息する

嚥下機能が低下すると、口腔内で作った食塊が気道を完全に閉鎖してしまい、窒息のリスクが高まります。正月によく起こるお餅の事故は、この嚥下機能低下による窒息が主な要因といわれているのです。

5. 誤嚥性肺炎を起こす

食物が気道や肺にまで入り込んでしまうことを「誤嚥」といい、その誤嚥によって細菌が肺へと侵入し、肺が炎症を起こしてしまう状態が「誤嚥性肺炎」です。誤嚥性肺炎は嚥下機能低下によるリスクのなかでも、死に直結するケースであるため、気をつけなければなりません。

6. 食欲が減退する

今まで、むせることなく楽しめていた食事が、嚥下機能低下によって楽しくなくなり食欲が減退してしまうケースも少なくありません。一度「食べる=危険なこと」といった認識をしてしまうと、なかなか食が進まずに体重が減ってしまい、栄養不良になってしまうかもしれません。

このように、嚥下機能の低下は心身ともにさまざまなリスクを高めてしまう可能性があります。加齢に逆らうことはできませんが、嚥下機能低下を少しでも遅らせることはできます。後述する、予防法を毎日繰り返してみましょう。

加齢による嚥下機能の低下を予防する4つの方法

加齢に逆らうことはできませんが、嚥下機能低下を少しでも抑えることは可能です。以下を参考に、毎日行なってみてください。

1. 口の体操を行う

口周りの体操を行ない、口腔周辺の筋肉を鍛えましょう。ポイントは「鏡を見ること」と「顔を大げさに動かしてみること」の2つです。普段しないような顔をすることで、あまり使われなかった筋肉にも刺激が走るので、自然と筋肉を鍛えられます。恥ずかしがらずに、鏡の前で思い切り普段しない顔をしてみてください。

2. 顔や首・口周辺のマッサージを行う

筋肉を動かした後は、マッサージを行なって収縮して固くなった筋肉をほぐしてあげましょう。おすすめなのは、お風呂に入って筋肉が柔らかくなっているときです。筋肉は柔らかくなると可動域が上がり、柔軟性を持ちます。嚥下機能を担う筋肉も柔軟性を持つことで、むせや誤嚥が少なくなるはずです。

マッサージのやり方として、まず指や手の甲で口周りを優しくマッサージします。頬骨の下やエラ付近を自分が気持ちいいと思える程度にやってみてください。家族や友人同士で行なってもよいでしょう。

3. 肩や首のストレッチを行う

口周りの筋肉は肩や首の筋肉と連動しています。したがって肩や首のストレッチを行うことで、連動している咀嚼や飲み込みに必要な筋肉も自然とほぐされるのです。

また肩や首周りの筋肉は、むせたり誤嚥を引き起こしたりしたときに、反射で押し返すときに使われます。そのためここをストレッチでほぐしたり、鍛えたりしておけば、押し返す力はより強くなるでしょう。

4. 早口言葉を言ってみる

早口言葉を言ってみたり、口を大きく動かしながら『ぱたから・ぱたから・ぱたから』と言葉を繰り返したりするだけでも、噛むときや飲み込むときに必要な口周りの筋肉をスムーズにできます。ポイントは、言えなくてもいいので口を大きく動かすことです。

嚥下機能の低下はリスクが多い!毎日の予防で少しでも低下を抑えましょう

嚥下機能は、私たちが生命を維持するために必要な機能です。そして、そんな嚥下機能の低下は命に関わる深刻な問題を引き起こしてしまいます。

少しでも食事を楽しみ、長く生き続けるためには、日ごろから嚥下機能低下を予防する運動を続けていくことがとても重要です。ぜひこの記事を参考に、嚥下機能低下の予防を始めてみてください。

【参考】言語聴覚士に相談する(一般社団法人 日本言語聴覚士協会)https://www.japanslht.or.jp/consultation/

【参考】言語聴覚士の仕事内容(めざせST.com)
https://mezase-st.com/works/


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