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孤独の克服


彼女が日常になっている。


私はずっと一人だった。
正確には猛犬のような母と暮らしているが、パートナーはなく独りモノだった。

これがある日を境に彼女が日常になってしまった。


休日の過ごし方も、半分は趣味に、半分は仕事の準備に。
そして余った時間で喫茶店に行っては、近所のおばあちゃんの体の具合を盗み聞きしていた。

たまに彼女らの娘さんや息子さんの話になると、新しい話題に興奮したものだ。

「上は結婚したんだけどねぇ、下がまだ全然で...」
みたいな話題に親戚のオジサンのような気持ちで参加していたのだ(脳内参加)
「ま、下は下で心密かにお母さんの面倒見てくれるつもりでいるんじゃないか?」

少し飽きたら帰って意味もなくパソコンをあける。




それが今や休日には彼女に、「ねぇーお昼どうするー?!どっか行きたいとこあるぅー?」などと嬉しそうに言い出す始末。おっさんのくせに。

彼女はこれまた可愛く「どこでもいいよ。公園でピクニックでもいいし!」なんて言っちゃう人である。
普通の男なら「それもいいね!」で済むかもしれないが、私は何せ長い間独りモノだった。
こういう言葉に出くわすと、一度"萌え死ぬ“必要がある。


怒りにも似た萌えを数秒味わい、そして返答する。
「そ れ も い い ね」

そんな休日になってしまったのだ。


おっさんの恋愛は聞きたくないかもしれない。 
けど、ただの恋愛話ではない。

これは私が長患いした孤独の克服物語なのだ。



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