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インハウスデザイナーのリアル|苦悩と良さをまとめてみた

とある教育サービス事業部のデザインチームに配属されてから2年が経過しました。配属前はセールスチームで営業担当をしていたため、デザイナーという肩書がついてから2年ということにもなります。せっかくなので、2年間で感じたインハウスデザイナーならではの苦悩と、仕事を通して得られたポジティブな学びをまとめます。


デザイン未経験の私がインハウスデザイナーになるまで

私は新卒でベンチャー企業に入社し、教育サービスを提供する事業部で、2年間営業を担当していました。B to C商材の営業だったため、毎日それはそれは多種多様なタイプのお客様と商談をしました。数字に追われるつらさやスケジュールの読めない仕事にストレスを感じ、転職を考えていた時期もあります。

今思うと人生の大きな転機の一つだなと思うのですが、営業時代から、組織構造の関係でマーケティング関連部署の仕事を任せてもらうことがありました。主に、自社で運営するブログの執筆や公式SNSの画像制作です。そのころから漠然と「デザインを軸にした仕事をするのもいいかな」と思っていました。

社会人3年目を迎えようとしている頃、その後も営業職を続けることに精神的な限界を感じ、当時の上司との評価面談で「デザインチームに異動させてもらえないか」という相談をしました。振り返ると、営業職を続けることへの不安や今後のキャリアの展望について当時の上司に正直に話せたこと、上司に思いのたけを正直に相談できるレベルでよい関係性を築けていたことは、とてもよかった点だなと感じます。

意を決して相談した甲斐があり、その年の4月からクリエイティブ制作を担っているチームに配属されました。デザイナー人生(というより今や何でも屋さんのイメージが強い)の始まりです。昔から絵をかくのは得意でしたが、大学はいたって普通の社会系の学部だったため、デザインは全く未知の領域でした。

異動後は現在まで、html・css・javascript・phpを使ったウェブ制作、photoshopでのバナー制作、公式SNSで使用する画像制作、自社で使用するロゴ制作など、デザイン業務に関するいろはを学びつつ、自社のデザインにかかわる幅広い業務を任せてもらっています。
以下が、現在の主な仕事です。

  • LP制作(デザインからコーディング、公開後の修正まで)

  • facebook広告やLINE広告用のバナー制作(企画、制作、数値の分析をもとにしたPDCAを回すところまで)

  • 自社サービスで使用するロゴ制作

  • オウンドメディアのUI設計・改善

  • 公式SNSで使用する画像の作成

  • キャンペーンページ制作(デザインからコーディングまで)

  • 自社サービスで使用するスライドデザインの作成

弊社のデザインチームは私を含めた3名体制なので、時期によってはかなり業務が多くなることもあります。とはいえ、基本的には楽しく自由に仕事ができています。思いのほか長くなってしまったので、本題に入ろうと思います。

インハウスデザイナーならではの苦悩

私は短いデザイナーとしてのキャリアを企業お抱えの「インハウスデザイナー」として歩んできているため、制作会社やフリーのデザイナーの仕事の仕方はわかりません。それぞれ違った大変さがあるのだと思います。今回は、インハウスデザイナーならではの苦悩をまとめてみました。あくまで私の経験をもとにした見解ですので、実情との差異がある場合はご容赦ください。

担当業務範囲が広く浅い

バナー制作、サービスのロゴ制作、LP/自社ブログ/公式サイトなどのWebページ制作、公式SNSの運用、各種キャンペーン時のデザイン制作など、担当業務は多岐に渡ります。そのため、コーディングスキルを上げたいと思っても画像制作をしなければならない時間の方が長いなど、一つのスキルを深めることが難しいと感じます。

ノンデザイナーの主観的な判断に納得できない

デザインチームの制作物を最終的に判断するのは、専門的なデザイン知識のないマネージャー陣であることが多いです。そのため、最終的な判断者の主観的な好みによってやり直しが発生したり、デザインの良し悪しだけで言えば納得できないようなフィードバックが返ってきたりします。

デザインの専門的な技術指導者が少ない

デザイン経験の長い先輩が社内に1人しかいないため、制作物に対してもらえるフィードバックやアドバイスが限定的になります。もっとバシバシ指導してほしい!と思うこともしばしばあります。業界水準でのデザイナーとしての市場価値を高めるために、自ら積極的に最新のトレンドや技術をキャッチアップする必要があります。

デザイン以外の業務が結構多い

デザイン業務以外にも、自社サービス顧客からの問い合わせ対応やブログ記事の投稿作業(ライターから上がってきた文章をコピペするだけ)、公式SNSの定期更新などの業務を担当しています。組織の構造上仕方のないこととはいえ、デザイン以外の業務に使わなければいけない時間もそれなりに長いため、自分のキャリアパスに対する不安を感じることもあります。

質よりスピード重視の場面が多い

私の所属するデザインチームはマーケティング系の部署直下なので、LPやバナー製作など、広告運用に密接に関連した仕事が多いです。

広告運用ではスピード重視でPDCAを回す必要があるため、「明日の16時までにやってほしい」「最短でいつできる?」などの要望も多く、デザインの細部にこだわる時間がなかなかとれません。デザインに納得いかないままリリースしなければならないこともしばしばあります。

デザインスキルだけを上げても評価されない

社内での肩書きはデザイナーですが、キャリアアップを目指す上で、デザイン以外のスキル、とりわけ分析系のスキルが高く求められます。実装したWebページの離脱率やCVR(コンバージョン率)、クリック率などを分析して、どのような改善をするか提案し、それをデザインに落とし、成果が出て初めて評価されるイメージです。

逆に、いくらデザインスキルを上げたとしても、分析結果に基づく提案と、実装による成果が出せなければ、いつまで経ってもキャリアアップできません。クリエイティブなスキルを身につけるだけではキャリアアップできないので、今後やらなければならないことは山積みです。


インハウスデザイナーをしていて「良かったな」と思う点

前項では苦悩ばかりを挙げてしまいましたが、もちろんインハウスデザイナーならではの良さもあると感じています。私なりに感じている良さをまとめます。

自社の案件を扱うため、納期の変更が柔軟

先に「タイトなスケジュールを組まれがち」とお伝えしましたが、それはあくまでも自社のマーケティング部としての要望であり、どうしても制作が間に合わない時は、柔軟に後ろ倒しにしてもらえることが多いです。基本的にクライアント発注の案件は発生しないため、「残業するくらいなら公開は明日でいいよ」というスタンスで納期を調整してもらえます。私の場合は、残業は毎月ほぼ0です。

リリース後の結果や、実際の使われ方まで追える

例えば、作成したバナーのクリック率や、公開したWebページが実際にどのくらい見られているのか、製作物が社内でどのように使われているのかなど、リリース後の結果や使われ方を自分の目で確かめることができます。作って終わりではないため、「もっとこうした方がクリック率が上がるんだな」という気づきを得たり、「今回のデザインは営業チームに好評だな、やってよかったな」という喜びがあったりします。

他部署との連携次第でやりたい仕事を生み出せる

他部署のメンバーとの雑談の中で「こんなスキルを身につけたいんですよ」という相談をすると、自分がやりたいことに合致した仕事を任せてもらえたり、時には仕事を作ってもらえたりすることがあります。逆に「デザイン関連でこんなことできない?」と聞かれて「それ、私できますよ!」という流れで仕事が発生することもあります。

社内で発言力のある社員と良好な関係を築けていることが前提ではありますが、雑談から仕事が生まれるのは嬉しいことだなと思います。

提案が通りやすい

ジャストアイディアの提案でも、比較的すんなり「やってみてよ」と言って任せてもらえることが多いです。制作物の内容を詰める会議で、あまり肩肘張らずに発言できるのも、インハウスデザイナーならではなのかなと思います。


結果、私にはインハウスデザイナーが合っているかな、と。

ここまで色々述べましたが、今のところフリーに転向する気も制作会社に転職する気もないので、そこそこ気に入って働いているのだと思います。

キャリアパスについては悩むこともありますが、今は目の前の業務の質をコツコツあげることに専念し、インハウスデザイナー3年目も頑張っていきたいと思います。

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