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「【悲報】救急車、まもなく有料化へ...」の投稿についてのファクトチェック

こんにちは。野嶋ゼミ2年ファクトチェックチームの大村と馬塲です。
今回は、「【悲報】救急車、まもなく有料化」というXの投稿をファクトチェックをしました。

1. 検証対象

この投稿は、2024年3月11日にXに「ツイッター速報〜Breaking News」というアカウントから投稿された「【悲報】救急車、まもなく有料化へ...」という内容です。6月14日時点で710万回表示・2006件のリポスト・1086件の引用・1.3万件のいいねされていました。

https://x.com/tweetsoku1/status/1766955944267673716?s=46&t=6fM6aRf6zOw7bmYb4ojsvQ

このアカウントは、主にインターネットの掲示板「5ch」の内容を転載しています。


2. このテーマを選んだ理由

・インプレッション数が大変多く、多くの人に見られ、影響力が大きいと考えられるから
・世間の関心が高く、話題性の高い話であるから
・救急車を呼ぶこと自体にお金がかかると誤った理解を世界に与えてしまう恐れがあるから

3. 検証判定・レーティング


https://fij.info/introduction/rating(FIJ基準)

私たちは、ミスリードと判定しました。

検証過程
・救急車の有料化は本当なのか
・記事には「入院なしで7700円」との記載があるが、どのようなときに費用
 がかかるのか
・なぜ三重県松阪市が取り組みを実施されたのか
・他の病院では導入されるのか

まず前提として
・すべての救急車が有料化されるわけではない。
 →特定の条件下において有料化されるだけであって、「救急車
  を呼ぶ」ということ自体にお金がかかるわけではない
・どういうことか?
 →基本的に入院に至らなかった軽症の人に対し「選定療養費
  7700円」が必要になる。

なぜ一部の有料化に至ったのか

松坂市の公式HPによると、三重県松阪地区では救急車の出動回数が増加しています。「助かるはずの命が助からない、早期治療ができなくなる事態」を懸念して、救急車の適正利用を促すために今回の決断に至ったそうです。
下の図から、救急出動回数の増加、救急輸送人員の軽症者の割合の多さが読み取れます。

松阪地区の救急出動件数の推移
令和4年度 救急輸送人員の内訳

TBS NEWS DIGがインタビューした記事では松阪地区医師会の平岡直人会長は
「決して救急車の有料化を目的にしているわけではない。この地域の救急体制をきちんと守るために選定療養費の徴収を厳格化しただけ」
と話しています。

どのような時に費用がかかるのか
救急車で運ばれた際に、入院に至らない軽症であった場合に「選定療養費」7700円が必要となります
→選定療養費とは「初期の診療は地域の病院で、高度・専門医療は大きな病院で行う」という医療機関の機能分担を目的に設定された制度のことです。

以下が松阪市のホームページの「三基幹病院における剪定療養費について」に添付されていた表となります。

このように対象外というものが存在しているが、明確な線引きがあるのかについて我々は松阪市健康づくり課へメールで問い合わせしました。

  • 普段と様子が違う、また、判断に迷った場合は、ためらわず119番通報していただくよう案内・周知している→「救急ガイド(リンク)」等を元に「ためらわずに救急車を呼んでほしい症状」を示した広報や、自分で判断するのが難しい時等には医師、看護師、保健師等が緊急性を見極め、状況に合ったアドバイスを行う365日、24時間対応のコールセンター「松阪地区救急相談ダイヤル24(0120-4199-17)」、子どもの急な病気やけが等の場合は、「みえ子ども医療ダイヤル(#8000)」等を判断に迷った際は利用するように案内している。

  • 「医師の判断による」に関して→救急事案の症例は、1つとして同じものはなく、個々の状態や状況等により判断されるべきとかんがえる。

  • 「様々な症例の問い合わせなどについても三基幹病院とも共有し、協議を行った結果、あらかじめ基準や線引きを行うことは実施していない

以上の内容が質問の内容に対する回答をまとめたものです。
明文化された線引きはありませんが、判断に迷った際には対応可能な窓口が設置されているようです。

なぜ三重県松阪市が一部有料化を実施したのか

続いては、三重県の松阪市が対象となった理由について調査しました。
まず、この図1を見て下さい。

https://www.city.matsusaka.mie.jp/uploaded/life/157025_602897_misc.pdf
松阪市市役所の公式ホームページ

この図は、松阪市役所の公式ホームページにありました、松阪地区 広域 消防組合消防本部における人口 1万人当たりの救急出動件数を表した図です。
この図を見たらわかる通り、全国の人口同規模の消防本部と比較すると、三重県の松阪地区の救急出動件数が突出して数値が高い地区であることがわかりました。
そして、図2を見て下さい。

https://www.city.matsusaka.mie.jp/uploaded/life/157025_602897_misc.pdf
松阪市市役所の公式ホームページ

これも同じく、松阪市役所の公式ホームページあったデータで、三重県内での救急出動数を表した図です。県内であっても、松阪地区は、四番目高い地区であることが判明しました。

これらのデータから、三重県松阪市の救急出動件数が全国的にも突出して多いということが三重県で一部有料化が実施され理由だと判断しました。

他の病院で導入されているのか

入院に至らなかった救急搬送患者に選定療養費を徴収している、取り組みについて三重県松阪市以外でもあるのか調査しました。
三重県伊勢市にある伊勢赤十字病院という病院が見つかりました。時期としては2008年から導入されていたことがわかりました。


まとめ

・救急車の「有料化」というより、入院する必要がなかった場合や緊急性がなかった場合の救急車搬送の際、選定療養費7700円が必要になる措置。
・救急車搬送に費用が必要となる取り組みは、目下のところ、三重県松阪地区など一部に限られており、救急出動件数が非常に多かったことが理由となっている。

よって、「【悲報】救急車、まもない有料化へ...」は、事実を含んでいるものの、状況を過剰に伝えている恐れがあり、ミスリードと判断しました。

出典
https://x.com/tweetsoku1/status/1766955944267673716

https://www.city.matsusaka.mie.jp/soshiki/24/sennteiryouyouhi.html

https://www.city.matsusaka.mie.jp/uploaded/life/157025_602897_misc.pdf

協力

  • 松阪市役所 健康づくり課


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