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コンプレックスの構造

単一の評価基準で生きることは大きなエネルギーを生みます。例えば「人間の価値は賢さで決まり、学歴がそれを示す」と信じている人は、学歴を高めるための努力(勉強)を惜しみませんし、よそ見もしません。努力が集約されるので達成確率も高まります。

そして、この単一の価値観で成功した人はそれを誇ります。これは学歴のみならず、美しさ、富、社会的地位、スポーツなどでの成果、面白さ、人の良さ、優しさ、どの要素でもあり得ます。学歴がよく引き合いに出されますが、優しさや共感でのみ人を判断することもあります。単一の価値観は、人を評価する際に「一つのものさし」を用いるのが特徴です。

皆がうまくいくとは限りません。現実にはほとんどのが人がうまくいきません。 そうするとこの単一の価値観が自分自身をまさに裁くことになります。学歴が全ての世界で頑張ってきたのに、学歴のない自分。優しさが全ての世界で生きてきたのに、優しさのない自分。一つの価値観がありませんから、もしそうなれなかった場合、逃げ場がなく強烈な劣等意識を持つようになります。自分自身を徹底的に蔑みます。

劣等意識、コンプレックスは単独では存在しません。コンプレックスを抱かせる価値観が存在します。学歴に価値を感じなければそこにコンプレックスも生まれません。言い換えれば自分自身が一つの価値観に染まりそれを大事に大事に抱えているからこそ、コンプレックスが生み出されていることになります。

コンプレックスを解消するために他者に攻撃的になる人もいます。しかし、その奥には深い悲しみがあります。多くの場合、単一の価値観はその人が選んだのではなく、周囲の環境(親、社会)が物心つく前にそういうものだと教え込んでいます。いきなり単一の価値観の中に放り込まれ、努力を迫られ、それに敗れた時に勝手にがっかりされ、さに自分で自分を裁く。 二重の苦しみが、強いコンプレックスとなり攻撃性を生み出します。

自分が単一の価値観に囚われていることを認め、価値観はたくさんあることを受け入れることで人生の転機が訪れると思います。 アスリートのセカンドキャリアも、ビジネスマンの転職も、その人が抱えている価値観の可視化が鍵だと思います。単一の価値観も自分を傷つけなければ問題ありません。ただ、私はこの価値観を抱えていると認識することが大事なんだろうと思います。

価値観から離れれば、世の中に素晴らしいものも、しょうもないものもなくなります。道傍の石と、英雄に本質的な差がなくなります。ですが、そのような達観はなかなか難しい。 ではどうしたらいいのか。ここに夢中の価値があります。夢中の瞬間人は価値観から解き放たれます。これは素晴らしいとか、これは意味があるとかそんな理由で人は夢中になりません。夢中はただそれをやっていることが楽しく、自分と対象が一体化する体験です。この一瞬が自分を価値観から解き放つ練習になります。

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