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比べてみた形跡2014年10月31日

子供の頃、足が速かった僕はもしかして広島で一番僕が足が速いんじゃないかという考えにとりつかれた。仲がいい友達にそう言っても信じてもらえなかったから、証明してやるという気持ちと、本当は何番目なんだろうというのが気になって試合に出はじめた。

広島では同学年で一番になったけれど、日本一というのがその向こうにあるのを知った。中学校は陸上部に入った。中学三年生のとき、僕は日本一になった。その時プレゼンターをした人が井上悟という人だった。オリンピックに出た人だった。身長は同じくらいなのにすごい迫力だった。

高校に入って伸び悩む。早熟型だった僕をもっと優れた才能を持った選手たちが追い越していった。短距離からハードルに種目を変え、僕だって本当はすごいはずだ、と、あんなとんでもないやつには勝てないかもしれない、の間を行ったり来たりして、25年の現役生活は終わった。それなりによくやったなという実感と、天才はやっぱりすごいと思ったことが記憶に残っている。

インターネットや本やテレビでいろんな人の考えに出会う。最初はピンとこない人もいる。僕のような職業は実際に会うことができて話をすることもできる。そしてよく予想は覆される。会ってみて自分と比べると、これはものが全然違うなと思うことがよくある。

優秀な自分が評価されていない。そういう不満を抱えたことがある人がいると思う。実際にすごいと言われる人に会ったり近づいて比べる機会をなるべくもってみるといいと思う。できれば、その人のフィールドで勝負してみるといい。人生で自分と他人を比べることに一生懸命になったことがないと、等身大の自分がわからず、妙なプライドを持ったり卑屈になったりしてしまう。負けることに大した意味はないけれど、自分を大きく変えてくれる。

ちゃんと比べてみること。おおっぴらに比べられる舞台に身を置いてみること。ある程度時間と労力を費やして、自分の順位を知っておくこと。結局それが人生で無駄な心のざわつきを減らすコツだと思う。人生は勝たなくていいけれど、心のどこかで本当は勝ちたいという思いを消せないまま比較から逃げると、こじらせる。

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