コーチの質問
コーチの質問によって選手の能力は大きく変わります。特に何かを失敗した後は大変なチャンスです。
ただの叱責はほとんど学びを生みません。「どうして失敗したのか」は失敗を詳細に分析する方法としては優れていますが、過去に目を向けがちです。私の経験した中で最も良い質問は「何を学んだのですか?」です。これは失敗の分析を行い、そこから抽象度を上げて、さらにそれを未来にどう活かしていくかまでが含まれています。
理屈上、人は学び続ければどこかではうまくいきます。いつかはなんとかなると思っていれば希望を持つことができ、動機も続きます。
失敗から何かを学ぶときは「失敗を経験する→抽象化する→次に活かす」のサイクルが必要だと私は考えています。
経験しても抽象化しなければ「なんとなく学んだ感じ」で流れていきます。抽象化とは「あの失敗とはなんだったのか」が自分の中で整理されることです。整理されればそれを活かして次に行うことの成功確率を高めることができます。また自分の考え方を変えてもくれます。
一度このサイクルが回り出すと、次の挑戦の際に最中の観察眼が変わります。着目する部分が変わるのです。前回は自分の心で失敗したと思っていれば、自分の心を観察するようになります。思い込んでいないか、悲観的になりすぎていないか、などです。こうして人は賢くなっていきます。
失敗をしない人生は「経験学習をしない人生」と言い換えられます。なぜかというと、人間の人生に影響を与えるような学習は必ず「情動」を伴うからです。悔しい、悲しい、嬉しい、さみしい。
失敗が与えてくれる最も重要な要素は激しく揺さぶられる「情動」にあります。失敗しても痛くも痒くもなく、思い入れもない状態で人の情動は喚起されません。現実に自分の心がかき乱され、落ち込むことを伴うからこそ失敗に意味があります。失敗を経験させようとして、バーチャルな環境を作ってもほとんど意味がないのはそのためです。
選手の人生において最も大事な学びは「自分の心の扱い方を知ること」で、これは失敗からしか学べないと考えています。
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