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日本学生野球憲章の矛盾

聖隷クリストファー高校についてという記事の中で、春の高校野球の選考の問題点の話をしました。その中で選考基準について言及しましたのでそちらについてもう少し詳しくお話しします。

こちらが、日本学生野球憲章に春の甲子園の選考基準です。

http://www.jhbf.or.jp/senbatsu/2022/guidance/

(1)大会開催年度高校野球大会参加者資格規定に適合したもの。
(2)日本学生野球憲章の精神に違反しないもの。
(3)校風、品位、技能とも高校野球にふさわしいもので、各都道府県高校野球連盟から推薦された候補校の中から地域的な面も加味して選出する。
(4)技能についてはその年度の新チーム結成後よりアウトオブシーズンに入るまでの試合成績ならびに実力などを勘案するが、勝敗のみにこだわらず試合内容などを参考とする。
(5)本大会はあくまで予選をもたないことを特色とする。従って秋の地区大会は一つの参考資料であって本大会の予選ではない。

以上が選考基準です。一つ一つ整理してみます。
まず(1)ですがこちらが参加資格規程です。
http://www.jhbf.or.jp/rule/enterable/enterable_2022.pdf

次に(2)の「日本学生野球憲章の精神」とはなんでしょうか。野球憲章の中で関わっていそうな、学生野球の基本原理を載せてみます。

第2条(学生野球の基本原理)
学生野球における基本原理は次のとおりとする。
① 学生野球は、教育の一環であり、平和で民主的な人類社会の形成者として必要な資質を備えた人間の育成を目的とする。
② 学生野球は、友情、連帯そしてフェアプレーの精神を理念とする。
③ 学生野球は、法令を遵守し、健全な社会規範を尊重する。
④ 学生野球は、学生野球、野球部または部員を政治的あるいは商業的に利用しない。
⑤ 学生野球は、一切の暴力を排除し、いかなる形の差別をも認めない。
⑥ 学生野球は、アンチ・ドーピングの教育、啓発、対策への取り組みを推進する。
⑦ 学生野球は、部員の健康を維持・増進させる施策を奨励・支援し、スポーツ障害予防への取り組みを推進する。
⑧ 学生野球は、国、地方自治体または営利団体から独立した組織による管理・運営を理念とする。

さらに(3)には、「校風、品位、技能とも高校野球にふさわしいもので、各都道府県高校野球連盟から推薦された候補校の中から地域的な面も加味して選出する」とあります。(4)には実力を勘案するが、勝敗のみにこだわらない。(5)には予選を持たないとあります。

全体を通して選考基準の不明瞭さが目立ちます。一言で言ってしまうと「私たちが勝手に決めますよ」という選考基準なのではないでしょうか。一例を挙げると日本学生野球憲章の精神に違反しないものとありますが、どうなれば違反で、それをどう判断するのかなどは不明確です。

ただ、恣意的に決めるのが一概に悪いかというとそうでもなく、例えば紅白歌合戦など不明瞭な基準で選んでいるものもあります。ではそのような不明瞭な基準で選手選考をするとスポーツの現場ではどんなことが起こるのでしょうか。例えば曖昧な基準で選手選考がなされると、まず選手たちはどこに向けて努力すれば甲子園に行けるのかがわからず、またいつなんの理由で精神に違反したとして権利を剥奪されるかわからないために、決定権限を持つ組織に過剰に萎縮し忖度し始めます。名文化しなければなぜ選ばないのかの説明をする必要がなくなり運営側としては楽です。「ふさわしくない」と言えば理屈上なんでも通ります。

以前、アマチュア競技でも選手選考が曖昧で問題になったことがありますが、「メディアで協会に対して都合が悪いことを言うと五輪の選考に不利になるかもしれないからやめなさい」とコーチに指導されていることがありました。曖昧な選考基準では、このような空気が蔓延し始め、うまくなることよりも阿ることに選手たちは集中し始めます。

さらに疑問が湧くのは「なぜこのような矛盾だらけの選考基準が明記されかつ指摘もされないで残っているのか」です。このルールを決め運用しているのは、日本高等学校野球連盟なのだと思いますが、どのような会議体が選考を行なっていて最終責任はどこにあるのかが私が調べた限りではわかりませんでした。責任者が明確でなく、疑問に対して答える人も明確ではないので追求をしようと思ってもケムに巻かれたようになってしまいます。

なぜ「なぜこのような矛盾だらけの選考基準が明記されかつ指摘もされないで残っているのか」ですが、これはおそらく以下の文化が影響しているのではないかと思います。

①組織の問題を指摘できない
②論理矛盾を気にしない
②社会の当たり前を意識しない

おそらく上位下達文化も強く、内部から指摘しにくい文化があり、社会から見て明らかにおかしいことがそのまま改善されず残っているのではないでしょうか。

日本学生野球憲章の第2条(学生野球の基本原理)には、こう定められています。

①学生野球は、教育の一環であり、平和で民主的な人類社会の形成者として必要な資質を備えた人間の育成を目的とする。

民主的な社会を形成するには、お互いがオープンに議論し問題点を指摘しあいより良いルールに変えていく必要があります。ぜひ広く意見を集めこのような選考基準は民主的なのだろうかという議論をおこなってほしいと思います。

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