オーベルシュタインの殉死

 アニメ『銀河英雄伝説』の登場人物、オーベルシュタインの死について、自分が思う所を述べます。

 って、題名で結論が出てるけど……。


 長い銀河の歴史も最後に近づき、主人公ラインハルトの死に際し、敵方である地球教徒が最後の突入を試みます。

 この地球教徒の突入の原因となったのは、オーベルシュタインによる策略でした。

 もはや風前のともしびとなり、弱り果てたラインハルトを利用して、今後の災いのタネとなる地球教徒を滅ぼす。皇帝ラインハルトの命を臣下であるオーベルシュタインが利用したのです。

 登場人物たちはそのあまりに冷酷なオーベルシュタインの策略に呆れ、怒りをぶつけます。しかし、自分たちの従う皇帝の最期ということもあり、それ以上のことはせず、ラインハルトの身辺警護に努めます。

 地球教徒は武器弾薬を用意し、突入、そして攻撃、爆破。

 そこにいたのはオーベルシュタインでした。彼はラインハルトの身代わりとなって攻撃を受け、重傷を負い、短い言葉を残して絶命します。

 オーベルシュタイン。

 物語の中では最強の相手、ヤン・ウェンリーの行動すら見抜き、常に最小の行動で最大の効果を得る手段をラインハルトに提示してきました。

 話中最強の策略家。そんな彼が自分の命を落とすというようなミスをしたのかどうか。

 最低でも、アニメの方ではミスはしていないと思います。なぜなら、ラインハルトの言葉があるからです。オーベルシュタインの死を知らないラインハルトは今際の際にこういいました。

「そうか、あの男がやることはいつももっともな理由があるものな」

 その言葉に怒りはまったく含まれていません。しかしこの言葉一つで、オーベルシュタインが自分から死を選んだ理由になります。

 物語において、死に際した正しい人間の言葉は神聖を帯びます。平たく言えば「絶対的に正しい」のです。

 主人公として時に苦しみ、時に間違えるのは完璧と言われるラインハルトですら同様ですが、いま、まさにその命が尽きようとしているのです。

 演出として、この言葉がある以上、オーベルシュタインの死には「もっともな理由がある」のです。

 ではオーベルシュタインがラインハルトのために命を落とす理由とはなんでしょうか。

 物語初期、ラインハルトの最愛の友人キルヒアイスの死の直前でも分かります。

 オーベルシュタインは、銃に狙われ相手をにらむラインハルトの前に立ちはだかり、身を挺して主君の命を守ろうとします。この「男のやることにはもっともな理由がある」からです。

 オーベルシュタインは、キルヒアイスにも言っていました。「貴官は良い上官をお持ちだ」と。そしてこのセリフが決定的なほど、オーベルシュタインの心情を表したセリフになります。

 能力がありながら意見を聞き入れられなかったオーベルシュタイン。その彼を取り立て、その冷徹さを毛嫌いしながら、それでもその意見に従ってきたラインハルト。その構図が最期にも現れているのです。

 多分、めちゃくちゃオーベルシュタインはラインハルトが好きだったんです。だからラインハルトのいない新王朝には興味が無く、最期まで付き従ったのだと私は分析しています。

 以上、オーベルシュタインは計画的に殉死した、ということを説明いたしました。実は小説版の方は読んでいないので、また違った書かれ方をしているのかもしれません。あくまでアニメ版の考察と思っていただければ、と存じます。

 もうずいぶん前のアニメですが、最近はアマゾンプライムにもあるようなので、まだ見たことのない方はぜひご覧下さい。独特な登場人物の造形と噛めば噛むほど面白くなるストーリー展開。100話越の長いストーリーですが面白くて僕は多分10回以上通して視聴してしまいました。

 って、この題名でこの文章をここまで読んでくださった(ごくわずかな)方で、銀英を見たことがないなんてありえないとは思いますが、一応お勧めさせていただいてこの文章の締めとさせていただきます。

 しかし、この文を最後まで読んでくださる方いるのかなあ。

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