戦前の日本の母


【7月の回想録】

先日、『太陽の子』公開までのカウントダウンが始まり、キャスト以外の場面写真が幾つか公開され始めた。

例えば戦前には、所謂中流家庭と言われた家には必ずあった手入れの行き届いたそう広くはない中庭、そして腰を掛けられる縁側、キッチンとは言わなかった台所。

あの時代当たり前のことだが僕は生きていないが、あの時代を生きた先祖の記憶や味覚や嗅覚が、僕の身体の何処かに息づいているのかも知れない。

そう言った意味では僕はやっぱり日本人なのだろう。何だか酷く懐かしくて胸があたたかくなった。

あの時代の女親は本当に忙しかったと思う。

職業婦人という呼び名で手に職を持った女性が昭和に入り、少しずつだが社会進出を果たしていたがそれはまだ極僅かだった。

春馬くんもおにぎりを食べる少年で出演したNHK朝の連続テレビ小説『あぐり』の吉行あぐりさんのような進歩的な女性が結婚し、仕事と家庭を両立する等あるにはあっただろうが、それはまだまだ非常に不可能に近い時代だった。

話が脱線したが、そもそも女親が家にいなければ元気でいてくれなければ家長である男親というものは、仕事に励めなかったということもあのセットを見れば頷ける。

あの時代いちばん偉かったのは男親ではなく女親だったと私は思う。

家族の誰よりも早く起き一日が家事で明け暮れる。今では考えられない時代だ。

そんな時代を直接知る人たちも今は少なくなってしまった。

この映画に出演するもしくは関わるスタッフ、その中に果たしてあの時代を直接知る人が何人いることだろう。

それ位あの時代は映像で記録されているとはいえ、フィルムより寿命の短い人間が伝えるには遠くなってしまった 。

『忘れてはいけないこと』

それを僕らはこの作品から 

『二度としてはいけないこと』

として学ばなければいけないと思うし、あの時代を生きた人々にやはり敬意を払うべきだと、映画の公開が近づくに連れそんな思いが強くなったのたった。

2021年7月10日付・インスタグラム掲載文を基に再編集。



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