老眼鏡
ちょっとしたわけで現金封筒が必要になった。
買い物に出かける母に、ついでに郵便局に寄って現金封筒を買って来てほしいと伝えた。
その際、買って来てから宛所を書いて現金封筒に金を入れ、再び郵便局に出しに行かなければならない手間を考えていた私は、母に届け先の住所を窓口で書いてその場で出して来てもらえないかという話をした。
私としては、母への思いやりのつもりであった。
しかし、母はピシャリとこういった。
「買い物に行くだけなのに老眼鏡まで持って行きたくないわ」
私はハッとした。
そうだ、老眼なのだ。老眼鏡がなければ字が書けないのだ、と改めて私は母が歳を取っていることに気がついた。
私は目が悪いが、まだ老眼の世界を知らない。
母の齢を感じて私は少し寂しくなったのだった。
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