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ちょっとした贅沢

せっかく目の前にホタテの刺身を出されたのだから、さっさと食べておけばよかった。

たったひとつだったが食べておくべきだった。

たったひとつのホタテの刺身だというのに、食べる前に目が覚めてしまった。哀しい哉、夢の中の話ですら貧しさが私の心を支配している。

そんな中、からし菜を細かく刻んで炊き立ての白米に混ぜて食べた。

からし菜のおにぎり
photo by daisukenta 

やはり酷く美味しい。 

最近の日本人は、昔から野に生えている野草を食べなくなった。食生活も日本食から洋食へ、魚から肉へ、米からパンへと変わってしまった。

そのせいか知らないが、どうも本来日本人が持っていた「日本人らしさ」というものが、悪い意味で消えてしまったような気がする。

昔から意地悪な人はいたし、血の気が多い喧嘩っ早い人もいたのは確かだが、むやみやたらに人を攻撃するようなそんな人はいなかったと思う。

時代も変われば食も変わり、食も変われば人も変わる。

日本人の心が失われつつあるのは、食事が変わって 栄養が良くなったからかもしれない。

それを良しと思うべきか、嘆かわしいと思うべきか。

私はもっとタフになりたい。

野草を食べていてもタフになれる方法はないものだろうか。

ちょっと奮発して高い肉を食べるよりも、今の時期にしか食べられない旬な野菜を食べる方が私は好きである。

どうやら私は、根っからのタフにはなれなさそうである。

嗚呼、ホタテが食べたい。

         2023年3月17日・書き下ろし。

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