ビジョン駆動型リーダーシップの典型例:ヨシダナギさん

ヨシダナギ講演会@大牟田文化会館

「提案しているリーダーシップの典型的な例」として2、3ヶ月前から注目していたヨシダナギさんが、大牟田で講演会を開かれるということで、すぐに席を確保しました!一般的には「リーダー」というより、タイトル下のリンク先の記事のように、少数民族の写真をとる写真家として知られていると思います。

自分が提案しているリーダーシップの定義は「他人には見えないビジョン(閃きや感動などのシステム1による強い思い)を他人に伝える、共有するプロセス」ですので、名前をつけるとすれば「ビジョン駆動型リーダーシップ」と言えます。共有したい、伝えたいという強い思いがないと始まらないという意味です。

しかし、システム1での認知、つまり、ビジョンを他人が直接見る手段はありません。なので、どういうのがビジョンかを言葉で使えるのが難しいため、うまい例がないかなと探していましたが、ヨシダナギさんの作品を見れば、「ああ、たしかに、彼女のそういうビジョンが想像できる」という感じがするでしょう。

他のモデルとの違い

「ビジョン駆動型リーダーシップ」と書きましたが、似たような概念にビジョナリーリーダーシップ(Nanus)あります。ビジョナリリーダーシップを含め、従来のモデルではビジョンというのは策定するものであり、正しいことが期待されています。一方で、提案モデルでのビジョンは、システム1を用いて定義されており、「正しいか正しくないか」という意味は含まれていません。むしろ「好きか嫌いか」のほうが近いかもしれません。

例えば、スティーブ・ジョブズが「現実歪曲空間」を作り出すと言われたように、革新的なことをするリーダーには、当初はムチャとしか思えないことを推し進める力があるように見えます。しかし、従来のモデルで言われる「正しく策定したビジョン」には、そのような非論理的な面が感じられません。システム1で得られた強い思いだからこそ、正しいかどうかではなく、他人がムチャだと思っても推し進められるのでしょう。

定義によって導かれる新たなリーダー像

さて、モデルや定義の違いによって、従来の定義ではリーダーとは思えないような人が(このタイプの)リーダーであることが見えてきます。こちらのエントリ「死んだ後もリーダー?」でも述べましたが、芸術家は典型的なビジョン駆動型リーダーだと思います。

ただ、「この人がまさにそんなリーダーだ!」と感じる実例がなかなか見つからなかったのですが、『SWITCHインタビュー達人達』というNHK Eテレの番組でヨシダナギさんと志茂田景樹さんが対談した回を見て、ヨシダナギさんこそビジョン駆動型リーダーシップの典型例だ!と思いました。

まずはヨシダナギさんのオフィシャルサイト『Nagi Yoshida(ヨシダナギ)Official Web Site』で、彼女の作品を見てください。すごく個性的で強烈な印象を残す作品だと思いますし、多くの方が同様の印象を持つのではないでしょうか。このような作品を撮る動機として、スイッチインタビューで、以下のようにおっしゃっていました。

「(テレビ番組で日本に来たマサイ族を見て)仮面ライダーとかセーラームーンとかヒーローのような存在って思ってて」
「でも なかなかそれが世間の人には伝わらなくて」
「私が見えてるようには 見えてないんだなって」

大きくなったらマサイ族のようになると小さい頃周りに言ってたということもおっしゃってて、相当に強い印象だったことが分かります。ただ、上の引用にも書いたように、他人にはそのようには(ヒーローやヒロインのようには)見えていないんだなあと気付きます。なので、彼女の作品は、そのように見えるように撮ってあります。

「芸術家はビジョン駆動型リーダーシップの例である」ということ自体は、理論的に導かれる結論として私にも理解できていましたが、ヨシダナギさんの思いと作品は、そのようなプロセス(そもそもプロセスは見えにくいもの)をvividに魅せてくれました。講演会も楽しみです。


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