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【読書録】大人のための書く全技術

齋藤孝、2016、☆☆☆☆

 ライターとして書く技術を高めていきたいと思っている。ブログを書く中で、記者としての書く技術だけではやっていけないと感じているためだ。記者としての記事は語彙や文体が限られていて、それに沿って書き続けてもレベルアップには繋がらない。自由な文体を使いこなしていくためには、書く技術にフォーカスした本から学ぶことも大事だ。

 この本は「書く技術」というタイトルが付けられているが、書く人になるには社会人としての心構えがまず大事だということを説く。仕事相手とのメールでも淡々と用件を伝えるだけでなく、どこかに個人的な心情を感じさせるような文章にすることで、個人と個人のつながりが深まるということだそうだ。

「自分の本当の部分が出せている人の文章は、『あ、この人は形式的なだけじゃないな。自分というものを持っているな。自分を出せているな』と感じさせ、〝本気″が伝わってきます」(p.41)

 私は数年内に、自然分野に関することで独立して仕事をしていきたいと思っている。地球で今何が起きているのか、それを文章や写真で伝えていく仕事だ。地球温暖化は世界的な問題となっている。今年の冬も日本は記録的な暖冬だった。10代前半で山登りに出会い、数々の素晴らしい眺めに私は出会ってきた。四季のある日本の自然が私は大好きだ。気候変動によって異常気象が頻発すれば、アウトドア活動は難しくなるだろう。一次産業にも直接影響する。そうした自然と人間のこれからの関わりについて取材して書いていきたいと思っている。独立して働くためには、やっぱり人と人との関係が大事だ。この本では書く力は、その関係作りにも直結していると説く。

「同じような仕事をしていても、そこに個と個の関係を気づくことができるかどうかが、ビジネスパーソンとしてより力を発揮出来るかどうかの分かれ道だと思います。そこには各地からも大きく関係しています」(p.47)

 自分は今は会社の組織人として甘えがあるように思う。襟をただして、自分を磨いていきたいと思う。

 引用は読む人のお得感があるということは一つ留めておきたいと思った。名言と世慣れている言葉は、現代人にも強く響くということだ。
 ここで紹介されているのは論語の言葉。「憤せざれば啓せず」だ。これは「わかりたいのに分からず身悶えしているようでなければ、指導はしない」ということだそう。

 取材をしてても事前によく調べて、本当になんでそうなるのか、気になって仕方がないことがあるときの取材は、相手とのやりとりにも熱が入る。取材しているこちら側もわくわくする気持ちを感じるし、話す相手にもそれが伝わるように思う。ライターが各分野を選ぶときには、やっぱり身悶えするほど知りたいことが何なのかを見定めることが大事なように思う。

 私の場合は、地球が今どう変わっているのか。またこれまでどう変わってきたのか、それを強く知りたいと思う。人の手による無残な自然の改変によって元に戻らなくなってしまうことに憤りを感じる。また一度壊れた自然を元に戻していく健気な人間の営みにも注目していきたい。それを伝えていく上では、知りたい気持ちが強ければ強いほど、読み手にもきっと伝わるものだと思う。環境をめぐる政治的な駆け引きなんかじゃなくて、今本当に地球がどうなってしまっているのか、知りたいというニーズは必ずあると思う。それに十分に応えられるような書き手になりたい。


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