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新聞記者を辞め「伝わる言葉」をつくるコーチング会社を立ち上げた理由

2022年11月11日、これまで1年7ヶ月手がけてきた個人事業を法人化し、フルエール合同会社を設立しました。法人のお客様も増えてきたことからこのタイミングで決断しました。

この記事では、私の自己紹介を交えて、なぜ大企業の新聞記者をやめる選択をしたのか、なぜコーチという職業を選んだのか、そして今回なぜ会社を立ち上げたのかについてお伝えします。

この記事の最後に、お読みいただいた方向けの法人化記念の無料セミナーもお知らせします。どうぞご活用ください。

12年間の記者生活で刻まれたこと

私は早稲田大学卒業後、2021年3月まで12年間、日本経済新聞の記者をしてきました。後半6年間は東京・霞ヶ関の環境分野の担当記者として官僚、政治家、企業経営者を取材していました。

人と向き合い、言葉と向き合う

記者時代の12年間は人と言葉と向き合う仕事でした。記者は「言葉」を扱う仕事です。取材では相手の言葉を聞き、記事として言葉で発信します。

原稿を書くとき、相手が使った言葉をできる限り尊重します。しかし多くの場合、相手の言葉をそのまま使っても、原稿にするとつながらなかったり、意味がよくわからなかったりします。話し言葉と書き言葉は異なるためです。そのため、記者はだれが読んでもわかるように、趣旨を変えずに「伝わる言葉」に仕上げます。


相手が何を伝えたかったのか。本当はどう思っていたのか」。原稿を書きながら、私はいつもこうしたことを考えていました。新聞に載せられる文章の量には制限があるため、限られた文字数で伝わる言葉にする力を徹底的に鍛えられました。

新聞記者とは、言葉を通じて人と向き合う仕事でした。人と向き合うことは、言葉と向き合うことだと知りました。

大手紙記者としての誇りと違和感

私自身、記者の仕事にはやりがいを感じていました。記者はなってみたいと思ってなることのできた職業でした。世の中に影響力をもつマスメディアの一員として、なんだか自分が等身大以上の大きな存在になったかのように感じ、それをどことなく誇りに思うこともありました。

しかし記者としてキャリアを積み重ねていくうちに、違和感も覚えるようになりました。自分が取材して世の中に伝えたいことよりも、会社の方針に従って書かざるを得ない原稿の方が多くなりました。自分が本当は思ってもみないことを「編集局の〇〇さんがこう言っているから、こう書け」といった指示を受けることが多くなりました。段々とその違和感が膨らみ、不協和音が大きくなっていきました。

悩みはすこしずつ深まり、だんだんと自分自身の生き方へに対する疑問が湧くようになりました。いわゆる世間的に「良い」とされる大学や会社に入り、他の人から「いいね」と思われるレールの上を進んできました。しかし、私自身はこの人生に本当に納得がいっているのだろうかと、夜遅くにひとり帰宅する道すがら、思うようになったのです。「自分は本当は何がしたいんだろう」。頭の中で答えの出ない問いがぐるぐると回り始めました。

言葉を失うことは、自分を失うこと

それとともに、それまで書けていた原稿がだんだん書けなくなっていきました。言葉が出てこないのです。10分で書き上げられていた原稿が1時間もかかるようになりました。自分自身が何を考えているのか、よくわからなくなっていきました。

34歳の時、私は9ヶ月間、ほとんどうつ状態になりました。記者として10年以上、取材して言葉を伝えてきたののも関わらず、自分の中には何も語る言葉がないように思えました。心は空っぽでした。「自分の言葉はいったいどこにあるんだろう」。言葉を失うことは、自分を失うことでもありました

「自分がまったくわからない」という感覚に陥ったのは、生まれて初めてでした。喉をかきむしりたくなるくらいの空虚感でした。自分が白紙に戻った気持ちです。ただ唯一、はっきりしていたことがあります。それはこの人生の延長に自分の幸せはないということでした。

ゼロから知り直そうと思い、インターネットで偶然見つけたあるコーチングのプログラムを受けました。2020年3月のことです。自分の価値観やビジョンを明確にする内容でした。3ヶ月間徹底して取り組みました。

その期間はそれまでの34年間を洗いざらい見つめる期間でした。自分が何者で、何を大事にしてきたのか。後にも先にも、その期間ほど自分を掘り起こした時間はないでしょう。それは自分の言葉を取り戻していく作業でもありました。確信のいく言葉が見つかるにつれ、壊れていた自分が、一つずつ新たな形として組み上がっていくようでした。

自分を掘り起こし、自分の言葉を内側から見つけ、それを言語化していったことで私は立ち直ることができました。

「たかが言葉」と思われる人もいるかもしれません。「言葉は現実じゃないよ」と言いたくなる人もいるかもしれません。しかし、私には刻まれています。内側から出てきた言葉には、人をダイナミックに変える力があるということを。

私がその後、コーチに転身しコーチングを通じて思いを言語化する仕事をしているのは、自分自身が言葉を見つけることによって、人生最大の危機を乗り越えた経験があるからです。自分の言葉を見つけることで、人は変われると知りました。

なぜ今、会社を立ち上げたのか

企業や個人の理念づくり

2021年4月に独立し、企業理念を作る仕事から始めました。経営者の思いを聴き、それを伝わる言葉にしていくコーチングです。九州の林業の会社、東北の住宅メーカー、北関東の小売店など、ご縁をいただいた経営者の方とともに、従業員や取引先に思いが伝わる理念を作ってきました。

そうするうちに、意外なご依頼をいただくようになりました。会社員や個人事業主の方からのご相談です。「ブレてしまう自分を変えたい」「やりたいことをはっきりさせたい」というお話です。対話を通じて思いを聞き、それを一緒に「ブレない軸」として言葉にしていきました。「自分を生かす道が見つかった」「やりたいことがはっきりした」「周りに伝わるようになった」といった声をいただくようになりました。

なぜ自分の軸を持ちたいと思う個人の方が増えているのでしょうか。それは、仕事や人生の選択肢が多くなっているからだと思います。自分で道を決めようとするときに、決める基準がなければ選べないでしょう。深い山に入るとき、コンパスがなければ道に迷うのと同じだと思います。




だれもが納得いく自分の言葉で理念を作れるように、コーチングのプロセスや新聞記者の言語化方法を体系立てて10ステップのプログラムにしました。これが私の仕事の原点です。

私個人のためでなく社会のために

独立して1年ほど経ち、だんだんと個人事業でやっていくことに限界も感じるようになりました。私の仕事は「私個人」のためではなく、社会のためにひらかれたものにしたい。それが新聞記者として公的な仕事をしてきた私の務めだと感じるようになりました。

法人のお客様も増えてきたこともあり、私自信の覚悟が問われはじめていることにも気づきました。新聞記者12年の経験と、プロコーチとしての仕事を組み合わせた時、思いを言語化し伝わる言葉にする仕事が、私にとって社会に最大限貢献できることだと思いました。そのため、このタイミングで会社を立ち上げることにしました。

「伝わる言葉」に着目する理由

「言語化」にまつわる本は世の中に多く存在します。また、コンサルタントやコーチとして活動されている人の中にも、言語化をうたう人も少なくありません。

しかし私は「言語化」を強調する世の中の流れに、何か一方通行で自己満足に終わっているような残念な気持ちを感じています。なぜかといえば、言語化したとしても、それが伝わる言葉になっているかどうかはわからないからです。

言葉は自分の思いを表現するものであると同時に、人にメッセージを伝える手段でもあります。自己表現だけでしたら「言語化」だけで済むのかもしれません。しかし「言語化」できても「伝わる言葉」になっているとは限りません。人に伝わる言葉こそ、私たちが本当に必要としている言葉なのではないでしょうか。

私自身が「伝わる言葉」への意識があるのは、新聞記者時代に多くの「伝えるプロ」と一緒に仕事をしてきたからです。

記事にしたくなる人に共通すること

記者12年間で多くの人に取材をさせていただきました。国務大臣からトップバーテンダーまで約2000人ほどのリーダーの人にお話をお聞きしてきました。その中でも「伝わる言葉」への意識が特に高いのは「政治家と経営者」でした

なぜかといえば、彼らは「言葉」の仕事であるためです。言葉で人の心をつかみ、そして動かす仕事だからです。

同じ言葉でも、だれか語るかによってまったく意味合いが変わります。多くの人の話を聞いて知ったことは、人を動かす言葉とは、自分の内側と結びついている言葉だということです。どんなに口先でかっこいいことを言っても、それが自分の本心から出ていなければ、やはり人の心には届きません。また、どんなに思いが強くても、その思いが伝わる言葉になっていなければ、やはり相手の心を動かすことは難しいでしょう。

記者として取材先と向き合ったとき、記事として伝えたいと思う人には共通点がありました。それは「自分の言葉で、仕事や人生を語れる人」でした。借り物の言葉でなく、自分の血が通った言葉で語られた内容は、ほとんど例外なく心に感じ入る話でした。そうした話を、私は記者として300万人の読者に届けたいと思いました。

記者12年間を通じて知ったことは「目の前のひとりの人に伝わる言葉は、300万人に伝わる」ということでした。

「伝わらない」のはもったいない

どんなに優れたアイデアや素晴らしい考えがあっても、それが伝わらなければ仕方ありません。「伝わる言葉」にならないことはとてももったいないことだと思います。思いが伝わることで、共感の輪を広げることができます。

これを実感したのは20代の駆け出しの記者だった宇都宮支局時代です。あるテーマパークの経営者を取材しました。そのテーマパークは世界中の建築物のミニチュアを園内に展示していることで有名な場所でした。園内にはエジプトのピラミッドや、パリのエッフェル塔、東京のスカイツリーなどが、現実の数百分の1サイズで並んでいます。

私はなぜ、このテーマパークは建築物をテーマにしているんだろうとふしぎに感じました。なんだか、SNS映えのためにある施設のようにも思えたからです。

経営者の取材で、ふしぎに感じたことを直接尋ねてみました。するとこの経営者は、熱っぽく語り出しました。

「建築物とはその時代における人類の最高の英知が詰まった作品なんだ。それを展示することで、人間の偉大さを伝えていきたい」

私はこの考えに心打たれました。単にSNS映えを狙っているものではとしか思っていなかった自分を恥じました。この思いを伝えたいと考え、後日「英知の結晶 伝えたい」という見出しで記事にしました。

新聞に掲載されて数日後、この経営者から手紙をいただきました。「友人や知人から多くの電話をもらった。旅行代理店からの連絡もあった」という感謝が綴られていました

私はこの時「伝わる言葉」には人を心を動かし、世の中を動かす力があることを身をもって知りました。思いが伝わる言葉になることで、仕事や人生、そして世の中すら変えていける。これが私の今の仕事につながる原体験のひとつです。

私たちがチャレンジするテーマ

フルエール合同会社には、チャレンジしていきたいことがあります。「世間体から自然体へ」というテーマです。

世間体から自然体へ

日本社会にはいまだ私たちを縛り付ける「世間体」がはびこり続けています。「他の人がどう思うか」を過剰に意識させる空気、「そんなことやってどうなるの」という諦めのひやかし、「長いものに巻かれた方が無難」という謎の当たり前、「空気を読め」という根拠不明の常識。日本社会が行き詰まっているのは、社会の中枢にはびこりつづける世間体にあるのではないでしょうか

米ギャラップ社の社員意識調査によれば、日本企業における「熱意ある社員」の割合はわずか6%で、調査を実施した139カ国の中で最低レベルの132位です。およそ9割の人は自分の仕事に「意味」や「やりがい」を見出せていません。またメンタルに疾患を抱える人も先進国中トップクラスです。また「自己肯定感の低さ」も国際調査でも最下位クラスの結果が出ています。

コーチという仕事は「他人の視点が内面化された人を、自分の価値観で生きる人に変える」という明確な役割があります。私はコーチングには、現代の日本において社会的に大きな意味のある仕事なのではと思っています。

森を歩けば一つとして同じ木や葉っぱの形がないように、人も本来、一人一人が多様な存在なのではないでしょうか。私たちはコーチという仕事を通じて、世間体の人を、自然体に還していきたいと思っています。


ふるえる道をひらいていこう

「フルエール」は、2つの意味があります。コーチとは、人を応援する仕事だと思っています。挑む人をめいっぱい(フル)応援(エール)したいという思いを込めました。

そして「ふるえる」道を一緒に進んでいきたいという願いも込めています。心ふるえる道の第一歩は、自分の言葉を見つけることでしょう。かつて自分の言葉を失った私が、言葉を取り戻したことでコーチというまったく予期しなかった道がひらいたように、だれもが自分の内側から言葉を見つけることで、新しい道がひらけてきます。

これからフルエールと関わるすべての方と一緒に、心ふるえる道を進んでいきたいと思います。

フルエール合同会社代表・安倍大資


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