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NPO支援者育成についての覚書き − NPOコンサルタントの働き方月次レビュー(2021年10月分)

こんにちは。11月になりました。2021年も残すところあと2ヶ月です。年末までなんとか走りきりたいなという思いばかりが強くなる忙しい秋を過ごしておりますが、天気の良い日の日中はポカポカ暖かいですし、感染者数も不思議な程に落ち着いた状況が続いていて、気を緩める訳ではないのですが、それでも忙しい中でもどこか落ち着いた日々を過ごしているような気分の最近です。ということで、今月も月次の振り返りです。

末尾のコラムはコラムっぽくなくなってしまいましたが「NPO支援者育成についての覚書き」です。いつもに増してマニアックなので関心のある方だけお読みいただければと思います。

10月の仕事の振り返り

稼働時間推移

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業務内容内訳推移

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業務内容の予定と実績

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9月、10月の稼働時間は以下のようになりました。

9月
時間枠 140.0h
予定  132.0h
実績  146.8h
10月
時間枠 133.0h
予定  139.7h
実績  162.5h

9月の時点で予定時間より10時間以上多い着地となり「忙しくなってきたな」と感じていたのですが、10月はさらにそれを上回る忙しさでした。予定していた139.7hに対して、20時間以上も多い162.5hでの着地です。感覚としては「道理で忙しかったはずだ」。ここまで予定以上の業務量になると、「忙しい」という感覚とを通り超えて「ツラい」という感じにすら突入してしまいます。実際月末は一時期相当に追われるように仕事をしていてひさしぶりにキツかったです。

原因としては忙しくなり始めた先月と同様で大型の連続講座の準備や講義、講義前後の受講者へのフォローなどが複数重なっていたためです。特に今年は完全新規のテーマで受講生の到達目標や研修内容、各回の構成案から資料に至るまで新規に書き下ろしで対応が必要なものを複数ご依頼いただいています。新しい研修テーマに挑戦させていただけることは、とても嬉しいのですが一方で当然ですがその準備は大変で、準備に必要な時間の見積もりがうまくいっていない(予定していた時間内で資料作成等を終えることができなかった)案件が複数発生したのが大幅に時間超過した背景です。(積み上げ棒グラフだと黄色の「スクール(連続講座)」に大きく時間を割いているのが非常にわかりやすいですね)

反省して11月以降に活かしていきたいところです。動き出した連続講座自体は終了まで(多くは2022年の2、3月まで)走り切るしかないのですが、その準備に思っていた以上に時間が必要ということなので新規の仕事を受けるのを少し制限しながら調整していく必要があるなと感じています。

ここ半年程は先3ヶ月ぐらいは常に仕事がパンパンに埋まっていて、新規の仕事は3ヶ月先から半年先ぐらいで調整するという状況が続いています。不安定なフリーランスとしては先の案件が決まっているというのは非常にありがたいことである一方で「身体を壊せないな」というプレッシャーも強く感じています。

個別の団体へのコンサルティング自体も関わり方を完全オーダーメイドにしていたり、講師業も研修内容の企画から担当する連続講座が多いと、一案件に必要な業務量の見積もりが難しいです。そういう自由で柔軟性の高い案件の方がやっていて面白みは大きいのでやりがいはあるのですが、あとどのくらい受けられるのかの見積もりが難しいです。そして必ずしもやりがいと報酬は比例しないということも難しい。つまり柔軟性が高くやりがいが高い案件は投入する時間がたくさん必要なことは間違いないが、時間を投入した分だけ請求できる契約であることはNPO相手だとほとんどないので、やりがいと生活と忙しさとすべてのバランスをとっていくのは難しいなと思います。

それでもそれらのバランスで悩めるようになったのはほとんど見込み案件のなかった独立当初からしたら贅沢な悩みを持てるようになったのだなとも思います。


案件状況

コンサル・業務代行など個別伴走案件
 ファンドレイジング   3件(うち1件休止中)アドバイザリー的契約1件、デジタルFRの施策ディレクション1件
 Webマーケティング    2件(うち2件休止中)
 マーケティング     1件 広報・マーケティング戦略全般
 中期事業計画策定    1件 中期事業計画策定ワークショップの企画・ファシリテーション(10月開始1件)
 組織基盤・マネジメント 1件 ボランティアマネジメントや人事周りのご相談
研修講師
 NPOマネジメント    2件 地球環境基金若手PL研修講師(7月〜1月)、第5期アクサ地域リーダープログラムwithブラサカ(12月〜6月)
 ファンドレイジング   1件 NPOサポートセンター「デジタルファンドレイジング基礎ゼミ」(9〜10月)、島根県FRセミナー(11月〜3月)
 マーケティング     1件 某市マーケティング講座(11月〜3月)
 Webマーケティング    1件 にいがたNPOカレッジ2021(9月単発)
 ABD           2件 CRファクトリー『コミュニティマネジメントの教科書』ABD(10月)、NPOサポートセンターNPOキャンパス受講者向けABD(12月)
新規ご相談(お問い合わせなど)
 Webマーケティング    2件 SNS研修(年内調整中1件、1月で見積もり中1件)
 ABD           2件 実施時期内容相談中
 NPOマネジメント     1件 新規ご相談中 
 その他         1件 他の支援者の方と共同でNPO支援の固定プログラムを開発中
 研修講師        2件 年明けの講座・登壇が決定2件

案件の状況自体は先月の振り返り時点と大きくは変わりませんね。9月で終了した案件が抜けて、10月開始や11月開始のものに本格的に取り組むようになっています。また、新規のご依頼は年明け以降でのご調整が増えています。年内実施での新規のご依頼もあったのですが、スケジュール的に対応が厳しくお断りをさせていただきました。仕方のないことではあるのですが、せっかくお声がけいただいたお仕事をお断りせざるを得ないことは気持ち的にはけっこうツラいことです。もしこのような状況が続いたとして、こうしたことには慣れていくのでしょうか。慣れていくことが良いことなのかわかりませんが。慣れて何も感じなくなってしまうのではなく、NPO支援のニーズが多くあるのにそれを捌ける人材の量や質が足りないという事自体を社会的な課題と捉えて能動的に動いていけるような感覚を持ち続けていきたいところです。

業務時間の超過に特につながっている・これからもつながりそうなのは「某市マーケティング講座(11月〜3月)」です(半クローズドな案件なので地域名は非公開)。マーケティング自体はこれまでも研修としてもコンサルティングとしても扱ってきましたが、特に研修のマーケティング講座は単発研修となることが多くマーケティングの概論をざっと扱うか、あるいは情報発信(マーケティング用語っぽく言うならプロモーション)に近い狭めた範囲のみを扱うものが多かったのですが、今回は全6回と長期間に渡り、マーケティングの広い範囲を時間をかけて丁寧に扱っていくものです。そもそもマーケティングという概念自体が広く、この言葉でご要望をいただいたときは相手の求めているものや抱えている課題が何かをしっかりと把握しながら提供する内容を調整していくことが大切だと考えていて、今回は事業計画や事業戦略も含めた幅広い概念として扱い、検討していただく内容として作成をした方が良いと判断しました。この広いテーマを連続講座形式でしっかりまとめるということが初めてのチャレンジになるので、これまでの単発で実施していた内容をしっかり全6回に展開し直して、各回の内容やワークを設計し、必要なインプットもし直して…ということにかなり時間がかかっています。どこかでチャレンジしたいと思っていたテーマではあり機会をいただけたことはとてもありがたいのでなんとか良いものに仕上げていきたいです。


最近考えていること

【NPO支援者育成についての覚書き】
本当は別途記事にしたいぐらいのテーマなのですが、最近記事を書く時間がまったく取れないのでとりあえずこの振り返りの時間に書きながら考えられる範囲で書いてみようと思います。いつものコラムとはまったく雰囲気違って恐縮ですが、この記事は私自身の振り返りも兼ねているのでご容赦ください笑

基本的な認識、前提
・NPO支援者が足りない
・NPO支援者を増やし、育てていきたい

”NPO支援者”とは何を指しているか
・ひとくちにNPO支援といってもいろいろな種類や形態がある
・分類の仕方自体がいろいろ考えられるけど、解決にコミットできる課題の大きさの分類というか段階分け
 - 機能支援:ファンドレイジング(あるいはその中のさらに一部)、マーケティング、会計、法務、IT、Web制作、デザインなど特定の課題に特化して支援を行う
 - 団体支援:団体のビジョン実現に向けて必要な支援を、機能支援のいくつかを必要に応じて組み合わせながら行う。組織基盤強化、事業戦略立案など
 - 分野支援:子どもの貧困対策分野、環境分野など分野全体での課題解決を行うコレクティブインパクト的なアプローチへの支援を行う
 - 地域・生態系支援:地域つくりや地域の担い手つくりなど、複雑に絡む課題や多様なステークホルダーと地域課題解決へ向けた動きに対しての支援を行う
・団体への関わり方、専門性の提供の仕方の分け方
 - 代行的支援:団体が所持していない専門性を団体に代わって引き受ける形式(例:HPを制作する)
 - 伴走的支援:専門性の提供は行いつつ団体の中に入り込んでメンバーの一人に近い関わり方でともに課題解決に取り組む
 - 育成的支援:団体スタッフの成長や組織の仕組みつくりを目的に一定期間以上の支援を行う (伴走支援との境界は曖昧。重複することも)
 - 教師的支援:研修の提供など個別団体で研修会を実施することもあれば集合研修形式で行うことも
・基本的にすべての支援段階、関わり方が足りていないが、特に問題だと感じているのは機能支援だけができる支援者と団体支援までできる支援者の間に断絶があること。機能支援は個別の支援者(プロもプロボノ・ボランティアも)だけでなく、サービスベンダーもプレーヤーに入るので数が増えやすいし、実際に増えてきている。一方で団体支援については簡単には増えない。

なぜ団体支援ができる人材が増えないのかの仮説
①団体支援の必要性が認識されていない。機能支援だけで十分だと機能支援提供者が認識している
②団体支援に魅力がない。めんどうくさいから手を出したくないと考えられている
③団体支援ができるようになるために必要な能力や視点、経験が不透明
特に③を解決することが必要と感じている。

その他で問題だと感じていること
・「伴走支援」「コンサルティング」などの用語の定義がばらばら
・支援方法や関わり方、成果の置き方、料金などもばらばらだし不透明
・NPO側が支援者どのように比較し、選べばよいかわからない

③の解決も含めた幅広い団体支援ができるNPO支援者育成のために必要なこと
・最終的に団体支援ができるようになることを目指すにしても機能支援の経験は必要。まずは何ができる支援者なのか強みを明確にする
・団体への関わり方としては「代行的支援」もしくは「教師的支援」が入りやすい。自分の専門性の型をつくって、その型の範囲内で支援を行うことができるため。ただし、代行的支援には一人でクライアントとコミュニケーションをやりきる姿勢や営業的なマインドが必要。教師的支援には講師としてのふるまいの習得・修練が必要。
・団体支援へのステップアップには、自分の強みとしての専門性以外に、NPOマネジメント全般についての一定のフレームワークの理解が必要(「NPO経営戦略6つのステップ」など)。その上で、各テーマについて最低でも「教師的支援」ができるようになることを目指す。
・NPOマネジメントフレームワークの習得が進むと、NPOからの相談があったときに、何をどこから解決すべきなのか「支援のための要件定義」ができるようになる。NPOからの相談は「財源」か「人」あるいはさらに個別の「IT」など機能支援のニーズが顕在化したときに入りやすく、最初から戦略や根本的な基盤強化としての依頼が来ることは少ない(基盤強化を前提とした助成金利用の場合を除く)が、機能的な部分での課題が発生している根本原因はより上流の戦略や組織自体にあることも多く、その課題を特定し、団体側と共通認識を作り必要な支援について合意することが、団体支援を行う上で最も重要であり機能支援からのレベルアップと考えると難しい部分。
・先輩支援者が要件定義を行っている打ち合わせへや課題解決のための支援を行っている状況への同行、同席は有効だが、前提としてNPOマネジメントフレームワークの習得ができていることや、同席した現場での気付き・学びのフィードバックを丁寧に行うことが必要と感じる。

堤個人が自分が団体支援ができる支援者になるまでに有効だったと感じている経験
・先輩支援者の支援への同行。議事録作成やワークショップの補佐など。振り返りやフィードバック機会はもう少し強化の余地あり。手間かかるけど。
・先輩支援者が講師をしている連続講座での参加団体への補助。ワークのサポート、問いかけなど。
・自社メディアでの記事執筆(機能支援のための専門性のアピール)
・自社主催セミナーの企画(安心安全になりやすい場でのセミナー実施)
・関係性の深いクライアントでのトライアル支援の実施

だいぶ粗いので各項目もう少し精査が必要ですが、NPO支援者育成について人とお話させていただく機会も少しずつできてきているので。ここら辺を元にもう少し言語化を進めて記事化ないし資料化を進めていきたいと思います。


最後までお読みいただきありがとうございました。

NPOコンサルや伴走支援者になりたかった数年前の私のような方に向けて仕事をする中で感じたことや考えたことを書いています。 支援者育成やNPO支援の仕組み化などに取り組んでいくために、もしいいなと思ってもらえたら、サポートしてもらえると嬉しいです。