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渡航先でパスポートをなくした。その記憶と教訓。

私の今のパスポートの発行官庁の欄は

EMBASSY OF JAPAN
IN SPAIN
(在スペイン日本大使館)

となっている。何もスペイン在住とかそういうわけじゃない。
スペインでパスポートを新規発行する事態が起こったのだ。


パスポートがない


以前、海外の渡航先でパスポートを紛失したことがある。たしか2016年だった。

場所はスペイン、マドリードだった。仕事でいくことになったので、そこそこ滞在日数があった。10日間くらいだったかも。

その到着翌日の2日目。その当時はスマホの海外データローミングするには一日2~3000円くらいのものしかなく、海外の現地プリペイドSIMカードに差し替えて利用するのが一番安くてよい方法だった。

現地SIMを買うのに身分証明が必要になるということだったのでパスポートを持参してSIMカードを買いに行った。SIM自体は問題なく購入できて、スマホも自由に使えるようになって気分もよく、その日の仕事をしていた。

今から思えばここで最大のミスを犯している。パスポートをバッグに入れたままSOL~OPERAというマドリードでも有数の繁華街をうろうろしているのだ。

仕事が一段落した午後、バッグのくちが開いているのに気づく。あれ?と思ったら、パスポートと日本円を入れていたポーチごとなくなっている。要するにどこかでスリにあったのだ。幸いユーロの入った財布は別途ポケットに入っていたので無事。といっても最も大事なパスポートがなくなっているのが痛い。

パスポートが無いのだから何とかするしかない

かなりの焦りで若干パニックだったが、焦ってもしょうがないのでとりあえず仕事仲間に時間をもらって日本大使館、領事館をネットで検索。マドリードだったので地下鉄一本で行けるところに日本大使館があった。

よく大使館と領事館がごっちゃになっている場合もあると思うが、
大使館→外交がメインの大使がいるところ
領事館→自国民保護がメインの領事がいるところ
という区別なので本来的なパスポート関係は領事館ないし領事部が正解。
大使館のなかに領事部が一緒にある場合もあり、領事館が無い場合は大使館で対応していることも多い。

大使館にせよ領事館にせよヨーロッパでも主要な都市にしか存在しないので、近くにあったのはラッキー以外の何物でもなかった。もし地方都市だったら、予定を全部キャンセルしてその都市まで移動するしかない。

まずは電話で事情を説明。日本ではなく海外だったのでスマホの音声通話も高額になる要素だったのでSkypeで通話。スカイプクレジットがあれば一般電話や携帯電話にも発信可能だったので助かった。とりあえず窓口で相談に乗ってくれるとのことだったのでいざ大使館へ。

窓口で担当者の方にパスポートをスられて紛失したと相談すると、まずは当時の場所、状況などをできるだけ詳しく事情説明を用紙に記入。この時助かったのがなくしたパスポートの写真を撮っておいたこと。パスポート番号や有効期限なんかを書く必要があった。
その後、
「今回の滞在の旅程はどうなっていますか?」と聞かれたので、「スペインにはあと8日くらい滞在して、そのあと韓国で仕事をした後、帰国の予定です。」と答えた。

すると、「そーですかぁ…」と一拍あとにこのような選択肢をいただいた。
①紛失したときの為の臨時旅券(帰国のための渡航書)を発行
当日発行が可能で基本的に日本に帰るだけの臨時旅券。(正式には帰国のための渡航書というらしい)
直行便とかならこれで帰ることができる。戸籍謄本などの写真やコピー、運転免許証などがあれば発行可能。
②マドリードで新規パスポートを発行
戸籍謄本の原本が必要になるが、マドリードの大使館ではICパスポート発行ができるので、書類さえそろえばスムーズに発行できる。
(このICパスポートの発行機が無い大使館もあるらしくそこでは結構時間がかかるらしい。)

「韓国にも行く予定なら、滞在の時間もあるので②番でやってみましょう。日本に戸籍謄本を取得してスペインに送付してもらえるご家族はいますか?」

「はい。いますので頼んでみます!」

「送る前にスキャンしてデータを先に送ってもらってください。ただ、原本を送ってもらう時に郵便局のEMSとかではなく、FedExとかDHLとかのサービスを使ってください。スペインの郵便局の事情が悪くて到着までの日数が読めないので。」

「わ、分かりました。確か福岡にはFedExの持ち込み営業所があるのでそのように手配します。」

というやり取りでスペインでパスポートを発行する流れになった。

海外でパスポートの新規発行

ここからは再発行に至るまでの必要作業。
そうそうある話でもないとは思うがとりあえずのご参考まで。

①警察署に行ってパスポートをスられたと現地警察官に説明して「盗難届」を提出してその写しを入手する。マドリードの警察では英語で何とかなった。「盗難届」は日本語の翻訳付きで、「多くの日本人が盗難にあっているのだなぁ」と実感。っていうか盗難がそれくらい一般的だってことか。この盗難届も「盗難にあった」という証明になるので、新規発行には必要な書類。

これが当時の本物の盗難届の写し。「盗難届」って書いてある。日本の住所や家族の名前など、各項目に日本語訳がついていて自分で記入する欄にはアルファベットの大文字で記入してくださいと指示が書いてあった。

②パスポート用の写真を撮影するのにある特定の写真屋さんを紹介される。日本のパスポートの写真のサイズが特殊なのと、写真のクオリティも審査されるので「ここで撮ってもらえばいいですよ。店主の人に日本のパスポート用って言えばわかってもらえます。」と案内された。そのまま写真は無事入手。

③日本の家族に戸籍謄本をFedExで送ってもらう。まずは役所で謄本を入手してもらって、福岡のFedEx営業所にもっていって送付してもらう。
FedExアカウントがあれば集荷依頼すればいいが、アカウントが無くても持ち込み可能な営業所がある場合、営業所でも対応してもらえる。

何日かして戸籍謄本が到着(荷物の追跡ができるので)。大使館に直接送ってもらったのだが、大使館の担当者の方の名前ではなく、私の名前で送ってしまったらしく、一度大使館の警備員がそんな名前の人がいないと受け取りを断り、FedExが持ち帰ってしまったこともあったが無事大使館に届けることができた。

これで書類がそろったので確か日本と変わらない発行手数料をユーロで支払い、無事新しいパスポートを入手できた。通常は申請から1週間程度かかるらしいのだが、事情を汲んでいただき、大使にも事前にお話しいただいて、写真データで作業は進めていただいていたようで、支払いに窓口に伺った日に即日発行してただいた。本当に感謝。

発行官庁の欄は
EMBASSY OF JAPAN
IN SPAIN
ってなるんですねぇ。とつぶやいたら
「思い出に…」と返してもらった。確かにこんな思い出はそうそうできるものではない。

マドリードから出国するにあたり、マドリード→フランクフルトでトランジット→インチョンという経路だったが、各カウンターでまっさらなパスポートを出して「マドリードでスリにあって、パスポートを新規発行した」と説明しなければならないということはあるが、特に問題はないのでそのまま通過。韓国で仕事した後、無事日本まで帰国できた。

大変だったが教訓は多かった

かなり憔悴する事態だったが、ここから得た教訓は多い。

①パスポートできるだけもって歩かない。スマホで写真を撮っておくか、コピーをもって歩くこと。

②大事なものは一つのポーチに入れない。それが無くなったら終わりという状況はできるだけつくらない。
現金、クレジットカード、分散できるものは分散させて保管。いざという時のバックアップ。

③発行6か月以内のものは有効なので戸籍謄本をスーツケースの奥底に忍ばせておくとか写真を撮っておくと、もし渡航先でパスポートを紛失しても日本のだれかに頼む必要なしに、臨時旅券(帰国のための渡航書)の申請や私のような新規発行もできる。

特に③は戸籍のある自治体に住んでいないとか、頼める人がいない(戸籍謄本を取得する場合、家族でないと委任状とかが必要になる)とかの時に有効だと思う。裏を返せば戸籍謄本以外は現地で何とかなる可能性が高い。最近戸籍謄本をもって海外旅行をする方法を外務省も推奨しているらしい。

注意しなければならないのは現在は「戸籍謄本」が必須であるということ。
旅券法改定によって令和5年3月27日以降は
「戸籍謄本(戸籍全部事項証明書:戸籍に乗っている全員分の情報がある)」のみ受理可能になっていて、
「戸籍抄本(戸籍個人事項証明書:本人だけとか戸籍の一部のみの情報がある)」では受理してもらえない。

この出来事依頼、クレジットカードを複数もつようになった。特に携帯電話料金や、公共料金などをクレジット払いにしているような人はそのクレジットカードは家に置いていくことをお勧めする。紛失したらクレジットカードは止めなければならないが、この辺の支払いが全部止まるのは後々のダメージが大きい。定期的な支払いのないクレジットならば最悪止めてもただそれだけで済む。

戸籍謄本もっていくというのも大げさに思われる方もいるかもしれないが、長期で海外に行くとか、何か国か回る予定がある方は、お守りがわりに持っていると「困った」時に役に立つはずです。


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