Traffic / John Barleycorn Must Die
トラフィックは1967年、当時若干18歳だったスティーヴ・ウィンウッド(ボーカル、キーボード)がデイヴ・メイスン(ギター)、ジム・キャパルディ(ドラム)、クリス・ウッド(サックス、フルート)と結成したバンド。
アルバムを三枚の残した後、R&B、ソウル志向の強いウィンウッドと反りが合わなくなったメイスンがバンドを去ることになり、そして1969年にはウィンウッド本人がエリック・クラプトンの新バンド「ブラインド・フェイス」に参加するためバンドから離脱。こうしてトラフィックは一時的に活動を休止することになる。
「ブラインド・フェイス」解散後、キーボードやギター、ベース、ドラムスも演奏できるマルチプレイヤーのスティーヴ・ウィンウッドは、文字通り一人でソロ・アルバムを制作するつもりでスタジオに入る。しかし紆余曲折、かつての仲間、ジム・キャパルディ(ドラム)とクリス・ウッド(サックス、フルート)を誘い入れ、三人編成でトラフィックを再結成し、トラフィック名義で『John Barleycorn Must Die / ジョン・バーレイコーン・マスト・ダイ』をリリースする。
ブルースやジャズ、R&B、ソウルなどの黒人音楽、そこから派生したロック、そして己のルーツであるトラディショナル音楽などの共存・融合を試みる... このアルバムはスティーヴ・ウィンウッドがトラフィック以降も続けることになる実験的な試みの実質的な第一歩、第一作目として捉えることができる。
冒頭を飾る《Glad》はインストゥルメンタル・ナンバー。オルガンにピアノ、そこにドラムやサックスが加わる、まるでフリージャズのジャムセッションのような曲。たった三人でこれだけ重く弾けるようなグルーヴ感を醸し出しすのは凄い。そして後半にはウィンウッドが弾くクラシカルな響のピアノが加わり、曲の雰囲気は一転する。
ソウルフルでジャージーな《Freedom Rider》、《Empty Pages》などの後に続くタイトル曲《John Barleycorn Must Die》は擬人化された大麦について歌われたイギリスのトラディショナル・ナンバーで、バックはアコースティックギターとフルートだけのシンプルな曲。John Barleycorn (大麦)は刈り取られて死ななければならず、その後に美酒となって人々に幸福をもたらす... と美しいメロディに乗って歌われる。
スティーヴ・ウィンウッドが影響を受け、愛した音楽が相互に絡み合う実験的なアルバム『John Barleycorn Must Die / ジョン・バーレイコーン・マスト・ダイ』を仕上げ、リリースした時、彼の年齢は22歳。その早熟さは驚くばかり。
And More...
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?