McDonald and Giles / McDonald and Giles
2011年5月16日に他のサイトへ掲載した原稿を加筆修正しました。==================================
見開きジャケットにはイアン・マクドナルドとマイケル・ジャイルズが彼女を連れた写真が使われている。
写真に何の色調補正も施さず、そのまま使っていたら、つまらんジャケットになっていただろう。
しかしピンク~パープル系のトーンで巧みに色調補正されたこの写真が醸し出す雰囲気は、マクドナルド・アンド・ジャイルズの音楽色調を巧みに表現している。
幻想的で牧歌的。まるでのどかな田園風景のような雰囲気を湛えている。
二人がキング・クリムゾン脱退直後に制作したこのアルバムには、ロバート・フリップが嫌った “人を騙して惑わすような音楽” が満載されている。
キング・クリムゾンはエッジの鋭い硬質なサウンドを内蔵していたが、このアルバムからこもれ出るのは、英国らしい陰りのあるフォーク、トラッド系、それにジャズ、クラシックなども加えた、穏やかな色合いのサウンドだ。プログレッシブ・ロック特有の暗い雰囲気、緊張感や悲壮感はなく、ほのぼの感に満ちた心地良さを味わえる好アルバムに仕上がっている。
キング・クリムゾンから狂気的な激情を取り去り、穏やかな性格を注入すると、こんな感じのアルバムが仕上がるのだろう。悪く言えば、去勢されたキング・クリムゾンのサウンド、良く言えば、まろやかに発酵させたキング・クリムゾンのサウンドだ。
全ての曲は精緻に構成されていて、抜群の演奏力で仕上げられている。
兄・マイケル・ジャイルズ(ドラム、パーカッション等)、弟・ピーター・ジャイルズが(ベース)がリズムを仕切り、その上にマルチ・プレイヤーのイアン・マクドナルド(ギター、ピアノ、オルガン、サックス、フルート、クラリネット等)が多彩な楽器で曲に彩を加える。
少し残念なのは、このアルバムではイアン・マクドナルドがメロトロンを一切使っていないこと。キング・クリムゾンのアルバムではメロトロンが創り出すサウンド効果が重要な役割を果たしていただけに、イアンはキング・クリムゾン的なものから離れるため、故意にメロトロンを封印したのだろうか?
同時期に同スタジオで『John Barleycorn Must Die / ジョン・バーレイコーン・マスト・ダイ』(これも素晴らしいアルバム!)を収録していたスティーヴ・ウィンウッドも《Turnham Green》でオルガンとピアノを弾いている。
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