見出し画像

Bobby Hutcherson / Happenings

画像1
Happenings / 1966

2004年8月20日に他のサイトへ掲載した原稿を加筆修正しました。==================================

ボビー・ハッチャーソン。なんとなく発音しにくい名前だ。

だから略してボビ・ハチとしておこう。なんとなく渋谷の名物、忠犬ハチ公みたいだけれど...

阿呆な話はここまでにして、『Happenings / ハプニングス』は1967年度ダウンビート誌人気投票で「ベスト・アルバム」を獲得。名うての若手ヴィブラフォン奏者・ボビ・ハチの代表作的アルバムだ。

このアルバムは1966年2月8日、ブルーノートのほぼ専属スタジオ、ヴァン・ゲルダー・スタジオで録音された。当時ブルーノートに多くの名作を残した“新主流派” の旗手的存在、ハービー・ハンコックがこのアルバムに参加している。

そしてハンコックは前年に発表した自身の代表曲とも言える《Maiden Voyage》をこのアルバムに提供している。そんな事もあり、このアルバムの聴きどころはハンコック自身がピアニストとして参加している《Maiden Voyage》のヴィブラフォンによるカバーだ。

ハンコックが参加しているぐらいだから、サウンドは新主流派らしく、抑制の効いたスマートなものになっている。つまり都会的で洒落ているのだ。スイング感抜群、ハードバップなノリのを残す《Aquarian Moon》、漂う静寂感が印象的な《Bouquet》、陽気なラテン・リズムの《Rojo》、そしてフリー・ジャズ的な《The Omen》まで、多種多様なスタイルを聴くことができる。

以上がこのアルバムのカッコよさを生み出している第一の理由。

そしてボビ・ハチが演奏するのはヴィブラフォン。そこから叩き出されるのは硬くてクールな音質なのだ。銀色っぽい輝きを放つ音色を絵具のように使い、ボビ・ハチはアブストラクトな風景画を見事に描き出す。それは無数のライトやネオンがリズミカルに点滅するマンハッタンの夜景を遠くから眺めているようだ。

以上がこのアルバムのカッコよさを生み出している第二の理由。

強烈なダークピンクにポーズを取るモデル風美女。この印象的なジャケットもブルーノートらしく大胆でオシャレな仕上がりだ。デザイン意図は不明だが、それがまたミステリアスな雰囲気を生んでいる。このジャケットの写真撮影とデザインを担当したのはリード・マイルス。マイルスはブルーノートの多くのジャケット・デザインを手掛けている。

以上がこのアルバムのカッコよさを生み出している第三の理由。

汗臭さとは全く無縁で、スマートさを感じさせる爽快なアルバムだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?