Buffalo Springfield / Buffalo Springfield Again
2004年4月22日に他のサイトへ掲載した原稿を加筆修正しました。==================================
バッファロー・スプリングフィールド(以下、BS)は1966年にロサンゼルスで結成され、それから68年まで2年間活動しただけで解散している。
その間に記憶に残るようなヒット曲を生み出した訳でもなく、また三枚のアルバムを残しているが、ベストセラーになったものはない。
それでもBSが伝説的なバンドとして語り継がれているのは、このバンドのオリジナル・メンバーであるスティーヴン・スティルスとニール・ヤングが後に「クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング」を結成したり、リッチー・フューレイが「ポコ」を結成したり、出身メンバーが後に大活躍したためだ。
スティルス、ヤング、そしてフューレイ、いずれもバンド・リーダーをこなせるだけの能力と個性を備えた三人が同じバンドに属していたのだから、バンド内の人間関係は大変だったと思うし、バンドが短命に終わった理由もこの辺りにあると思う。
BS二作目のアルバム『Buffalo Springfield Again /バッファロー・スプリングフィールド・アゲイン』は三人のパワーバランスが未だ微妙に保たれていた頃の作品。
多様な楽器を器用に弾きこなし、ロックやフォークだけではなくブルースやジャズ、R&Bなどからも影響を受けているマルチな才能の持ち主・スティーヴン・スティルスが、個性と我の強いニール・ヤングやフォーク・カントリー志向のリッチー・フューレイを上手く取りまとめている印象が強い。
BSの特徴は三人が作り出す音楽の質そのもの、曲作りに於けるセンスの良さだろう。それは当時流行していたサイケデリック風やブルース・ロック風など、一定のスタイルに偏り縛られたものではない。
このアルバムにはラフな手触りと適度なドライブ感を備えたポップでメロディアスな曲が多く収録されているが、随所に実験的な試みも見られる。アルバム最後の曲《Broken Arrow / 折れた矢》では一部にライブ音源や効果音として心臓の鼓動を加えるなど、サウンド・コラージュ的な手法も用いられている。
ウエストコースト・ロックの礎を築いたアルバムとして知られいるが、それだけに留まらず、1967年以降のアメリカン・ロックの原型のような曲も多く、来るべきロックの試作品を並べた展示会のようなアルバムだ。
ニール・ヤング作のザラついた手触りが残るハードなナンバー《Mr. Soul / ミスター・ソウル》やスティーヴン・スティルスの個性が結晶した《Bluebird / ブルーバード》や《Rock & Roll Woman / ロックン・ロール・ウーマン》など、聴きどころは満載。メンバーの才能と音楽性がバランス良く融合した瞬間に生まれた名作。
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