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Pentangle / Cruel Sister

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Cruel Sister / 1970

2004年6月30日に他のサイトへ掲載した原稿を加筆修正しました。==================================

バート・ヤンシュとジョン・レンボーン。二人の名ギタリストを中心に結成されたトラッド・フォーク系バンドがペンタングルだ。トラッド色の濃いバンドではあるが、ベースやドラムにはジャズっぽい雰囲気も漂う。

このアルバム《Cruel Sister / クルエル・シスター》の曲は全てトラディショナル・ソングを彼ら流に翻訳・アレンジしたもの。

アコースティック楽器のみ使い、電気楽器を一切使いわない”原理主義的”なスタンスを貫いてきたバンドだったが、このアルバムから、ジョン・レンボーンは抑制の効いたエレクトリック・ギターも弾くようになった。多分これは同時期に活動していたトラッド・フォークロック系のバンド、「フェアポート・コンヴェンション」に影響されたからだろう。

バート・ヤンシュはトラッド系のギターサウンドだけではなく、幅広いギター・サウンド、あまりジャンルに捉われない、ある種のクロスオーバー的なサウンド志向があったのかもしれない。トラッド系のサウンドには必要な楽器とはいえ、バートがダルシマー、コンサーティーナやリコーダーなども演奏するのは、そんな志向の現れかもしれない。

しかしジョン・レンボーンの方は、どちらかと言えば、もっとトラッド寄りの志向が強いような気がする。

このアルバムでは、バートとジョンの見事なギターワークだけではなく、ジャッキー・マクシーの、鼻からツ〜ンと抜けるような、透明感溢れる素晴らしいヴォーカルも聴くことができる。

アルバム最大の聴きどころは最後の曲《Jack Orion》。トラッドの輪郭をきっちり保ちながらも、ジャズやブルース、ロックの匂いも漂う名演。18分を越す曲だが、テンポやアレンジ、サウンドが次々と変化するので飽きない。

ドイツ・ルネッサンスの大画家、アルブレヒト・ デューラーの版画を使ったジャケット・デザインもアルバムの雰囲気にぴったり。

深い森の中を彷徨うような、バラードの世界を堪能できる一枚だ。

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