Santana / Abraxas
2004年7月10日に他のサイトへ掲載した原稿を加筆修正しました。==================================
中学3年生の時、サンタナにはまってしまった。
そしてこのアルバムがリリースされた時、それは大阪万博も閉会した1970年晩秋の頃だったと思う、貯めた小遣いを握り締めながら、すぐに買いに走った事を覚えている。
精緻なイラストの圧倒的な迫力。
インナー・ジャケットのライブ画像が醸し出す雰囲気。
『Abraxas』という呪文のようなタイトル。
ギターとパーカッションが激しく交差するサウンド。
総てが完璧だ。
このアルバムほど、私を視聴覚共に満足させてくれたものは少ない。
『Abraxas / 天の守護神』はサンタナの二作目にあたるが、この辺りでサンタナ独自のラテン・ロックのスタイルは確立された。
サウンド・コラージュ風の《Singing Winds, Crying Beasts》から始まり、サンタナの代表曲《Black Magic Woman / Gypsy Queen》へと続き、最終曲の《El Nicoya》まで、ラテン・ロックが息つく暇もなく炸裂する。
中学生だった私は《Oye Como Va》や《Se Acabo》の意味が知りたく、英和辞典を何度も引いたが判らなかった。アメリカのバンドなら英語で歌っているのだろうという固定観念があったからだ。ちなみにこれらの曲名の意味はスペイン語で “調子はどうだい?”、“おしまい” みたいなもの。
話は逸れるが、アルバムタイトル、Abraxas / アブラクサスについて。
当時の若者たちが愛読していた作家ヘルマン・ヘッセが書いた小説『デミアン:エーミール・シンクレールの青春の物語』にはこんな一節がある。
アブラクサスとは古代グノーシス主義の文献に登場するアルコーン(地上の支配者)の一人らしく、選ばれし者を天国に連れて行く存在らしい。
ところで、ジャケットに使われているアブドゥル・マティ・クラーワインが描いたイラストはサンタナ版の『受胎告知』だろうか?
コンガを股に挟んだ赤い音楽の天使が裸体の黒人女性に、体内には斬新な音楽が宿っている事を告知しているシーンのように思える。
またはコンガはラテン系音楽の象徴であり、黒人女性はアフロ系音楽の象徴で、それらを混合したものがサンタナの音楽であることを象徴的に表しているのだろうか?
いずれにせよ、意味深なイラストだ。
And More...
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