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執筆紀行

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#小説

短編小説 風の吐息

短編小説 風の吐息

男は美術館の前で途方に暮れていた。

一月前から楽しみにしていたフランス絵画の展示会にわざわざ足を運んだのだが、突然の休館日。

「ネットで知らせしておいてくれよー」
という声と共にため息が肩から漏れた。

その日は完璧な一日だった。

朝から質素な食事を済ませ、早くに家を出る。
職場ではサッとメールをチェックし、少し時間が空くと本を読んだ。
正午を回るか回らないかで、
「よし、今日は仕事も少ない

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