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おしゃべりペダル : 妄想ショートショート008

「おしゃべりペダル」

都会の喧騒から逃れるため、アヤは自転車が欲しかった。ある日、少し古びた自転車屋の店先にあった自転車に目がとまった。その自転車には「おしゃべりペダル」というラベルが貼られていることに気がついた。
「カワイイ」
アヤはその自転車が一瞬で気に入り、買うことにした。

その週末、アヤは新しい自転車にまたがりペダルを踏み込んだ。すると、彼女の心の中を読み取るかのように、スルスルと気持ちよく街中を走った。まるで自転車とおしゃべりをしながら散歩でもしているような感覚だった。
「これってホントにおしゃべりペダルなのかも⁈」
彼女が少し疲れたと感じると、自転車はゆっくりとしたペースになり、彼女が元気になると、自転車はスピードを上げた。
「これは偶然だろうか?」とアヤは思ったが、その後も自転車は彼女の気分や感情に合わせて動き続けた。彼女は自分がどの道を選んだのか、それとも自転車が選んでくれたのか、はっきりとは分からない。彼女はその不思議な感覚が気に入り、ただただ楽しんだ。

数週間後、アヤは友人のミナと公園でピクニックを楽しんでいた。ミナはアヤの新しい自転車に興味津々。「おしゃべりペダルって、本当におしゃべりするの?」と尋ねた。
アヤは微笑みながら答えた。
「言葉でおしゃべりするわけじゃないけど、私の気持ちをちゃんと理解してくれるの。不思議と、この自転車とは特別な絆を感じるのよ。」
ミナは興味津々で「試してみてもいい?」と尋ねた。アヤはうなずき、ミナに自転車を貸した。ミナがペダルを踏むと、彼女の驚きの声が聞こえてきた。「本当に! この自転車、私の気持ちを感じ取ってるみたい!」
二人は笑いながら、その特別な自転車の魔法を楽しんだ。

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