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逃走の軌跡 : 妄想ショートショート023

逃走の軌跡 - アリアと移動体AI "ノマド"


西暦2078年。かつての緑豊かな地球は今や荒廃の地と化していた。環境汚染と資源の枯渇は、人々に定住の喜びを奪い、絶えず移動し続ける運命を与えていた。この厳しい世界で生き抜くため、人々は資源を求め、危機を避けるために日々移動を続けていた。

アリアは、この過酷な日常の中で仲間と共に移動を続ける若者の一人だった。彼らの移動を支えていたのは、高度に知能化されたロボティクスモビリティ「ノマド」であった。ノマドは高度に進化した自動車型の移動体AIとして設計されており、安全に移動し滞在できる空間のみならず、資源探索、危機の評価、そして他のグループとのコミュニケーションを支援していた。

ある日、ノマドが北方に新しい水源と可能な食糧資源を検出した。アリアたちはノマドと共にその地域へと向かった。途中、ノマドは地形や気象、さらには他の移動体の情報を収集し、アリアたちに安全かつ効率的なルートを提案した。

北方地域に到着した彼らは、ノマドの助けを借りて資源の確保を試みた。しかし、同じ資源を目指す別のグループとの競争と小競り合いが避けられなかった。アリアはノマドの通信機能を利用して他のグループと交渉し、一時的な資源共有協定を結んだ。

安心は束の間、ノマドが再び資源の枯渇を予測し、次の移動先へと誘導する。アリアは自らの感覚を信じ、ノマドにより安全かつ資源豊かなルートを探索させる。ノマドはアリアの心拍数や皮膚の微細な反応、呼吸のパターンを分析し、それをデータとして判断材料に加えた。

アリアの感覚とノマドのデータ分析が連携し、彼らは新たな資源地を発見する。この連携により、彼らは少しでも長く生き延びることができる。アリアは夜空を見上げ、人とAIが協力し合えば、この過酷な世界でも生き抜くことができるのかもしれないと感じた。

しかし、この希望も束の間、彼らの探求は永遠に続くループのように感じられた。アリアは未来に対する小さな希望を心に抱えつつも、この絶え間ない逃走がいつ終わるのか、安住の地は本当に存在するのかと疑念を抱えていた。

ノマドと共に新たな資源地へ向かうアリアの視線は遥か遠く、未知の未来へと向けられていた。人とAIが連携し、少しでも生き抜く可能性を見出してはいたが、その先に待ち受けるのは新たな危機と不安の連鎖だけだった。

静かな夜空を見上げながら、アリアはこの無限のループから抜け出せる日は来るのだろうかと、ひたすらに思いを馳せた。そして、ノマドと共に次の未知へと進んでいくのだった。

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未来のシナリオを、"移動"を切り口に
4つのショートショートにしました

①移動しない未来のディストピア
②移動する未来のディストピア
③移動しない未来のユートピア
④移動する未来のユートピア

このお話は
②移動する未来のディストピア
です。

移動する。というより、移動しなければ生きていけない。定住が許されない強制的な移動の世界です。
少ない資源の奪い合いをしているマッドマックスの世界にも通じますかね。

Sustainable Circulation(持続可能な循環)をディストピアとして妄想してみました。
テクノロジーの活用でなんとか生き続ける。それは閉塞したループのようです。
変化の無い循環というのは耐え難いことかもしれません。
個人的には持続可能な循環よりも、変化のあるスパイラル循環が良いのではないかと。。

ショートショートをつくり始めてそろそろ1ヶ月。
これは間違いなく脳の鍛錬です。
思考実験にもなりますし、発想刺激にもなる。
無いモノゴトを考えるのは簡単ではないですが、面白い知的活動。
益々将来が見えにくい時代に必要なスキルになるかもしれません。

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