最終章〜メルカリとソウゾウ
様々なドラマを乗り越えて、メルカリグループの子会社となったザワット。最後まで付いてきてくれた仲間と緊張しながら六本木ヒルズに移転した。メルカリのメンバーが優秀過ぎてザワット組のメンバーが果たして辞めないで残ってくれるだろうか、と心配していたのだが、カルチャーや仕事の仕方などが近しいこともあり、1人も辞めずに全員2年以上、メルカリで貢献してくれたことは嬉しい
メルカリでは新規事業特化の子会社ソウゾウにアサインされた。しばらくはザワットも平行して経営していた。元々運営していたスマオクをメルカリからの送客で一気に伸ばそうと考えていたが、いざ具体化しようと考えると問題が多々あった。複雑になりすぎてしまったシステムの設計コストや負債、スケーラビリティの観点から、事業としては据え置きつつプロダクトは最新技術を駆使してゼロから作ったほうが早いということになり、ブランド特化のAI査定付きバーティカルフリマアプリ、メルカリ メゾンズが誕生した。
メルカリの中でも、画像認識から販売価格と型番の推定をセットで行った社内で初めてプロダクトとなり、ここからメルカリのAIプロダクト化の議論が加速されたと思う。本当はメゾンズ自体を越境EC化することに勝ち筋を見出していたのだが、結局、メルカリ本体で実現したほうが全社影響力が大きいということになった。ザワット社自体も、役目を果たしたということもあり吸収合併することになった。GWウィークにそっと官報を掲載し、新卒同期からお祝いで送られてきた美味しいお酒を一升瓶飲み干し、ささやかなお疲れ様会をした
ソウゾウはいつの時代も、最高な組織だった。代表の松本、CTOの鶴岡のキャラクターが大きかったと思うが、スタートアップの集合体のような熱気とワクワク感があった。メルカリアッテ、カウル、メゾンズ、メルカリNOW、teacha、メルチャリ、メルトリップ、そしてメルペイ。社員全員が経営意識を持ってカルチャーを作ってきた稀有な組織だったと思う。
僕がCEOを努めた第二期ソウゾウも、メルカリと疎結合で全く異なる領域でメルカリ超えを狙うという、めちゃくちゃ難しい条件の中、少数精鋭でプロフェッショナルな仕事ができていて毎日出勤するのが楽しみだった(メルトリップは当初の計画から最後はだいぶ違う形で出さざるを得なくて悔しかったのだけど、それはまた今度)。
加熱するペイメント戦争ど真ん中でリソースのメルペイへの集中が決定し、ソウゾウは一旦All for Oneな解散を選択した。全てはエゴではなく、メルカリグループの成功のために。
その後、僕はメルカリ本体のHead of Product - Newbizという役割を担い、いくつかの新規事業(独自にP/Lを切りパートナーシップで新しい価値を創造)のテストを行ってきた。
越境ECプロジェクトはその一つで、ザワット時代から時間はかかったし形は変わったが、その意思はプロダクトに反映することができ、よりたくさんのお客さまに価値を届けることができた。世界中から集ったエンジニアと一緒に仕事できたのが嬉しかった。
また、PoCしてきた、とある新規事業のタネが「メルカリ超えする非連続成長のポテンシャル」があり、それを大胆に一気に準備するために、2021年、ソウゾウ社は再復活した。内容はまだヒミツ。アッテ、メルカリNOWやメルペイで成果を上げてきて、僕が知りうる限りメルカリで一番成長した鬼PM出身のmaze氏をCEO、言わずとしれた最強CTO名村さんという新経営陣と旧ソウゾウの残党も含むフレッシュなメンバーのチームで、ソウゾウらしい雰囲気は引き継ぎつつ、鋭意準備中だ。採用もしているので、メルカリのロードマップを大きく塗り替える大きな勝負をしたい人はぜひ門戸を叩いて欲しい
僕はというと、今は違う形で新規事業というか、グループ全体の次のストーリーづくりをサポートするためにグループの経営戦略室ので仕事をしている。新ソウゾウも今後の具体的な発表が楽しみだが、こちらはこちらで、よりGo Boldなストーリーを描き始めたところだ。事業スペシャリストとして特命係長な案件を担当しているのだが、このチームはミッションの割に本当に少人数(役員入れて4名...)で、仲間が不足している。条件が合い、我こそはという人ははぜひ連絡してほしい
いまメルカリグループはとっても楽しいタイミングです。IPO後の成長痛や様々な難産を乗り越えて、ひと周り成長して余裕もできた。ダイバーシティにも溢れてきた。もう日本発世界へとか言ってるのが昭和に感じる。世界的な時価総額1兆円はタッチできたけど、真のGlobalでサスティナブルな会社になるために、再度投資フェーズに突入した感じ。「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイス」ってこういうことだったのか!とこれまでの点が線に繋がりビジョンが明確になってきています。実現できたら10兆円企業も目指せるところにいると思う(あなた次第!)。我こそはという人ははぜひ連絡してほしい
終わりに
育休の合間に書き始めたこの振り返り日記。気がつくとシェアリングエコノミー、C2C、フリマアプリという世界で2011年に起業して、なんと10年が経つらしい。20代だった若手起業家のdaisaku氏も、もう立派なナイスミドルである。気をつけないと意図せず死ぬほど大嫌いだった「古株の謎の権威社員」みたいになってしまう恐怖がある、そのくらいには時が過ぎた。
振り返るとこの10年は幸せだった。今のメルカリグループの世界観はザワットが目指していた世界とシンクロしていて、本当に起業してよかったと思う。たまたまメルカリが急成長(時価総額だと10倍近い成長)してくれたおかげで人並みに生活できるようにはなったが、生活の安定はあれど、幸せの上限はスケールしなかった。投資する側になり、育休を長めに取得し、若者の憧れプチFIRE状態を味わってみてこの記事もそのモラトリアム期間に書いた。しかし幸せを感じるどころか、世間や会社から取り残されて浦島太郎になってしまう恐怖のほうが勝った。Youtubeでクソコンテンツを量産して小銭を稼いだりしたが、お金がほしいわけではなかった。自分にとって、そこに人生のゴールがないということははっきり分かった。仕事の報酬は仕事。人生にビジョンを持ち、人生のミッションステートメントをちゃんと考えて、ロードマップを引いて、それに直結する仕事に真剣に向き合えることこそ、僕にとっての幸せな人生なんだなと一周回って気づいた。
適格な時が来たらまた自分で何か旗を立てせざるを得ない性分だと思うが、次はもっとうまくやれるはず。今は10年前とは大きく違う。人生長そうなので、健康に気をつけつつ、焦らず、どっしりと構えて、たくさんの仲間と一緒に楽しい人生を。資本主義に踊らされず、インターネットで子どもたちの未来や地球環境に貢献できるミッションを見つけて、それに時間を使っていきたい思いが強い。テクノロジーを最大限駆使し、適格なタイミングで適格なマーケットの課題解決に挑戦すれば、Well Beingに生きながらでも良い仕事ができることは、メルカリが教えてくれた。死ぬまでに次のCatch the Starな何かを成し得たいと思う。
# 最終章
これまで一体どのくらいの人数が携わってくれたのだろうか?社員・アルバイト・インターンや業務委託を入れると100人〜200人くらいだろうか?
僕を中心として、未熟なメンバーばかりのザワットだったが、みんな必死に努力し、新しい船の中で成長していったのが嬉しかった。金髪だし態度も悪いし勤怠も悪いけど、ギターだけはめちゃくちゃ上手いという理由だけで採用したCSメンバーがメルカリでもCSとして活躍してくれた。主婦の時短ライターアルバイトとして採用したものの、簿記できるということで気づけば経理になり、M&Aのデューデリジェンス対応などを通じ成長、メルカリの経理や労務として活躍、今は有名VCのオフィスで働いている方も。ザワット時代は忙しいお母さんに娘が反抗期で手を焼いているという話を聞いていて高い給料を出せないことが悔しかったが、ファミリーデーという家族がオフィスに来るというメルカリのイベントにその娘さんが参加してから、六本木ヒルズで働いているカッコいいお母さん、と尊敬されて家庭が平和になった、という話は心の底から嬉しかった。また、外資系コスメ大手に内定が出ていたインターン生が新卒入社の直前の3月中旬ごろ、やはりこのメンバーでがんばりたい、とメルカリの新卒採用をうけ直して見事新卒採用、その後メキメキと成長し今では立派なPM Mgrに成長しているのが、本当に嬉しい。エンジニアもスキルが認められてメルカリでも大活躍してくれた。幸いなことに全員途中で投げ出さずメルカリでも仕事をがんばった結果、ストックオプションも付与され、最後まで諦めなかった社員・アルバイト全員がスタートアップドリームを多少なりとも体験できたのは、最低限の責任が果たせたかなと思う。
こんなにボロボロのパンチドランカーでも、起業してよかったと思えるし、その思い出の中には、いつも苦楽を共にした仲間がいた。一番うれしいのは仲間が加わった時、一番悲しいのは仲間が去った時。細かい事業のトライアンドエラーも色々あったけど、なんだかんだで経営は人だなぁと思います。
この1年はコロナ禍で1年くらいほとんど会食もできず、新しい人との出会いが激減してしまいました。2021年は忙しい中でもオンライン/オフラインで新しい出会いや懐かしい出会いを増やしていこうと思います。
このnoteを公開してみて、想像以上にたくさんの方から連絡をいただき驚いています。僕としてはプライベートに書いていたものをベースに付け足し編集したもので友人からの読みたいニーズがあったから公開したものだったします。中身は普遍的なこともありますが、オワコンな話も多いです。なので、ひとおとり落ちついたら全記事をsnapchat化してアーカイブすると思います (→意外と反応が良かったので、無料でそのまま残しております)
20章と長かったですが、ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました!
全20章、いくらの価値がありましたか?100円?1000円?1万円?良かった方は、ぜひこのページの下から、サポート募金もよろしくお願いします!ありがとうございました!
原田大作 の次回作にご期待ください
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