見出し画像

【文化財紹介】山内ビル(国の登録有形文化財)

大阪歴史倶楽部です。

大阪市内の中心部を流れる土佐堀川とさぼりがわの河畔に建つ、昭和初期に建てられたお洒落でモダンなビルをご紹介いたします。

山内ビル(国の登録有形文化財)
大阪市西区土佐堀とさぼり1丁目にある山内やまうちビルは、1930(昭和5)年に「山内香やまうちかおる法律特許事務所」として建てられた、いまから90年以上も前のビルです。装飾が豊かでとてもお洒落でモダンなビルだと思います。国の登録有形文化財です。

鉄筋コンクリート造り地上4階、地下1階建。山内香やまうちかおるという弁護士さんが法律特許事務所として建てたビルです。現在はアクセサリーショップやレストランなどが入るテナントビルとなっています。

山内ビル表側(南側)
山内ビル玄関
「山内○(欠落)法律特許事務所」の文字が残っています
土佐堀川に面したビルの裏側(北側)
ビル裏側(北側)のアップ
土佐堀川の水面がビルの外壁にキラキラと反射しています

山内ビルの立地
この山内ビルの立地ですが、地図を見ると当時の裁判所である大阪控訴院おおさかこうそいん(現在の裁判所の位置に建っていた赤レンガ造りの壮大な建物)までは、ちょっと遠いかなという印象を抱きました。弁護士の山内香さんが山内ビルから裁判所へ通うためには、どのルートをとっても必ず土佐堀川とさぼりがわ堂島川どうじまがわの2本の川を渡らなければなりません。橋を2本渡るわけです。

大阪控訴院
大阪市立図書館デジタルアーカイブより
管理番号:d0295001/書誌ID:0000402321/画像管理番号:2093/パブリックドメイン

けれども実際に大阪歴史倶楽部が山内ビルから裁判所までの3つのルートを歩いてみますと、いずれも20分たらずでした。ですから「遠いというほどでもないな」と感じました。

実際に歩いたルート
ルート(1)
山内ビル→錦橋にしきばし(※土佐堀川可動堰とさぼりがわかどうぜき)→水晶橋すいしょうばし(※堂島川可動堰どうじまがわかどうぜき)→裁判所

ルート(2)
山内ビル→淀屋橋よどやばし大江橋おおえばし→裁判所

ルート(3)
山内ビル→肥後橋ひごばし渡辺橋わたなべばし→裁判所

可動堰かどうぜきとは、水量の調節や水質の維持などを目的として造られたダムで、大阪市の錦橋や水晶橋はその上部が歩行者専用の美しい橋となっています。

実際に歩いた3つのルート
錦橋(土佐堀川可動堰)
1931(昭和6)年 完成
大阪市の公式サイトより
水晶橋(堂島川可動堰)
1929(昭和4)年 完成
大阪市の公式サイトより

このうち、山内弁護士が大阪控訴院おおさかこうそいん(裁判所)へ通われたルートは(1)の水色の線のルートではないかなと想像いたします。

(1)のルートですと、当時パリのセーヌ河畔をモデルに設計され、とても美しくてモダンな雰囲気が漂っていた中之島なかのしまを通るルートです。

当時の中之島
『大阪市大観』1925(大正14)年より
パブリックドメイン(九條正博 蔵)

そして天気が悪い日や急ぎの時などには、人力車やタクシーなどを利用されたのではないでしょうか。当時の大阪市電の路線図を見ますと、市電に乗るには少し遠回りだったように思います。

錦橋にしきばし土佐堀川可動堰とさぼりがわかどうぜき)が完成したのが1931(昭和6)年。山内やまうちビルが完成したのが1930(昭和5)年 ですから、山内弁護士は錦橋にしきばしの渡り初め式に参加されたのかもしれませんね。

山内ビルへの行き方
山内ビルへは、大阪メトロ四つ橋よつばし線「肥後橋ひごばし」駅3号出口または4号出口から徒歩約1分です。肥後橋の南詰、土佐堀川とさぼりがわの南岸にあります。

文化財データ
山内ビル
大阪市西区土佐堀1丁目1- 5
1930(昭和5)年 竣工
日本国登録有形文化財
写真:2021年10月 大阪歴史倶楽部 撮影

おわりに
ここでご紹介いたしました建物などの文化財を見学したり写真や動画などを撮影されるときには、所有者さんや管理者さん、ご近所さんや周りの交通などにご迷惑がかからないよう、配慮しましょう。

許可なく他の人の敷地内に入ったりすることはだめです。またとくに建物内部の撮影はセキュリティの関係もありますので、必ず所有者さんや管理者さんなどの許可を得てくださいますようお願いいたします。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

(『大阪歴史倶楽部』第2巻 第3号 通巻13号 2022年1月15日)

©2022 大阪歴史倶楽部 (Osaka Historical Club)
無断引用・無断転載等を禁じます。