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週刊わたしの映画メモ『モーリス』『エゴイスト』

今日で6月が終わります。早い。もう7月。夏じゃん。夏は暑いし、湿度も高いし、冷房は寒いし、生きてるだけで疲れちゃいますね。でもなんか夏ってだけでワクワクしたりもします。海とか見たいな。そんなに行きたくはないけど、見たいです。行くと暑いからね。そんな夏を目の前に浮足立ってる私の今週の映画メモです。


『モーリス』
監督:ジェームズ・アイヴォリー

この作品、私の映画元年である2018年にリバイバル上映をしておりまして、そのとき映画館で観ています。がしかし、すっかり忘れてしまい…。オススメしていただいたのを機に、改めて観てみることにしました。

舞台は1910年代のイギリス。モーリスは中流階級の家の子として、子供の頃からごく普通に「女を愛し、子を持つことが幸せである」と教わり成長していきました。しかし大学で出会い意気投合したクライヴと惹かれ合い、プラトニックな関係を育んでいきます。卒業後、それぞれの道を歩みつつ交流は続けていた二人ですが、少しずつ状況が変わっていき……というお話です。

内容はだいぶ忘れていたのですが、1つだけ覚えていたのが、ある人物が、同性を愛してしまったことについて医者に「病気なら治してほしい」と懇願するシーンでした。すごく悲しくて。改めて観てもやっぱり悲しかった。病気でもないし、治すものでもないし。お医者もそれまで恋煩いか?性病か?心配するな問題ない!と頼れる感じだったのに、その告白を受けたら怒り出すんです。忌々しいって。

ただでさえそんな社会だった当時のイギリスですが、身分が高いほど同性愛なんてとんでもない!という世界だったみたい。途中から出てくるアレックという青年はクライヴのお屋敷で猟場番をしています。つまり、身分は下の方。彼も男性と恋に落ちるのですが、それは彼にとってとても自然なこと。まっすぐに好意を表現していきます。世間の目や常識が気になる程度には地位のあるモーリスと、それよりも更に上流階級のクライヴ。彼らの心のなかには精神的・肉体的に本当に愛したい人がいるのに、それに従うことは難しい。それぞれの人物の選択が、どれも理解できるし、どれも正解だけど、それぞれ少しずつ失くすものがあって苦しかったです。

この物語のあと、彼らはどんな人生を送ったんだろうとか、何を思って生きたろうとか、ずっと考えてしまう作品でした。

あとは特に学生時代のプラトニックラブなモーリスとクライヴのシーンのきらめきがすごい。あれがキラキラまぶしいほど、あとが重い。まぶしい。重い。きれい。つらい。たすけて

『エゴイスト』
監督:松永大司

こちらも男性同士の恋愛を描いた作品です。鈴木亮平さんが好きなので観ようと思っていたもの。ちょうど似たテーマの作品を観たところなのでその流れで、ということで視聴しました。

主人公は華やかなファッション誌の編集者・浩輔さん。14歳で母を亡くし、地元では同級生から「オカマだ」といじめられ、窮屈な思いをしていました。今は東京でバリバリ仕事をこなし、気の合うゲイ仲間と飲んだりして、自由に生活しています。そんなある日、パーソナルトレーナーの龍太という青年と出会い、惹かれ合っていきます。彼は女手一つで自分を育ててくれた母親を支えるために高校を中退して働いていました。浩輔さんは、龍太もその母親も支えてあげたいと思うようになっていきます。穏やかで温かな時間を過ごしていた二人とお母さんですが、ある日突然その生活は終わってしまうのでした。というお話です。

浩輔さん役を鈴木亮平さん、龍太役を宮沢氷魚さん、そして龍太の母役を阿川佐和子さんが演じています。この阿川さんのお芝居がとっても素敵で…!エッセイやインタビュアーとしての印象が強く、また大好きなので、嬉しい衝撃でした。なんて素敵な方なんだろう…。そして鈴木亮平さんはもう言わずもがなの素晴らしさでした。本当にすごい。宮沢氷魚さんの儚さもすごい。一緒に歩いてたのに、ちょっと目をそらして次に振り向いたらふっと消えちゃってそう。そしてそのまま会えないし周りの人に聞いても知らないって言われそう。確かにいたのに。そんな儚さ。どんな?

映像の作り方がドキュメンタリーのようでした。カメラが固定されていない感じ。持って歩いて見たままを映していますというような。それも相まって、出演者の皆さんの会話がまるでお芝居じゃないみたい。こういうものってどんな台本になっているんだろう。セリフがあるのにないみたいに見えているのか、セリフがはっきり決まっているわけではなくてリアルに感じられるのか…

そんなリアルな空気だったからこそ、激しく心を揺さぶられるのとはまた違った気持ちになりました。誰かに感情移入して上がり下がりするんじゃなくて、受け止めるしかないというか。なんでその選択をしたのよ~と思っても、どうしようもない。その人の人生なんだもん。そうか…そうだよね……と受け止めるしかない。それが苦しい。

作品の要素として目立つ部分が「男性同士の恋愛」ではあるんですけど、そこは単にそうだっただけというか、関係ないというか、人間と人間の愛の話です。誰かを思って、こうしてあげたい、こうなってほしいと願うこと、そのために行動することは愛なのか、わがままなのか。押し付けだと受け取る人もいるだろうし、愛だと感じる人もいると思う。一人でどうこうではなくて相手がいてはじめて形になったりならなかったりするんだな、と思いました。それを確かめ合うのが、人と人との関係なんだ。


という2本でした。男性同士、女性同士、男女でも、私はわりと愛についての話が好きだな、と思います。その愛が美しくても、汚れてても。叶っても叶わなくても。笑えても泣けても。愛があるから物語とか人生って動いていくし面白い。前回書いた『ピアニスト』もその前の『ベニーラブズユー』も、あれもこれもみんな愛の話だ。ラブ!だけじゃなくいろんな愛がいろんなところに転がっている。ちまちま拾い集めて楽しみたいと思います。



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