バイトの先輩 day26
4/8 (Mon.)
#66日ライラン day26
長男が夫に、パパは何のバイトしてたの?と聞いていた。
私も聞かれた。多分、彼の中で「働く」「仕事する」「アルバイトをする」ということへの興味が高まっているんだろう。
私が人生で初めてアルバイトをしたのは、大学一回生の春、ファーストフード店の接客だった。
それまで友だちにいたことのないタイプの、ばっちりメイク女子高校生の「先輩」に仕事を教えてもらった。
お店があったのは、大学近くの県道横、どちらかと言うと田舎だ。開店直後は、ほとんどいつも人がいない。お客さんが少ない時間帯には、本来なら店内の掃除やペーパーの補充などをするのだが、それさえも済んでしまうと、基本的にカウンター内で雑談しているしかない。
お客さんが来るとパッと接客モードに切り替えて、混雑してきたら、素早く正確に注文をさばく。仕事の合間には、雑談。働いた経験などそれまで一度もない自分は、どうしようもなく鈍くさかった。例え、ちょっとだけ先に生まれて年は上でも、例え、それまで受験勉強を必死で乗り越えて大学生になったのだとしても、ここでは、そんなことは何も関係ない。これをしといて、と仕事を言いつけられたら気が楽なのだが、自分からは、同僚のJKギャルに何を話しかけていいか見当もつかなかった。
「◯◯さんは、カレシいるん?」「いませんよー、いたこともないです」「マジで!好きな人は?」「んー、別に今はないですね」「えー?うそー、早く作りよ!」ことわっておくが、敬語が私で、タメ口は先輩高校生だ。初めてのバイトで私が学んだのは、接客業だけじゃなかった。
そのアルバイトは、途中大学の実習期間と採用試験前は休ませてもらったが、大学卒業直前まで続けた。その間、新人さんの仕事も何度か教えた。相変わらず、お客さんの混む時間帯に注文をさばくのは得意ではなかったけれど、雑談には困らない程度に、メンバーの古株にはなっていた。
私に仕事を教えてくれた、細い眉毛のO先輩は、私が2回生の頃にはもう辞めていた。
今ごろ何をしてるだろう。再会してももう分からない自信があるが、もし会えたらお礼を言いたいと、あれから20数年経った今思う。
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