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悪いヤツに恋する


私は男性になったことがないので分からないのだが、
悪い人に憧れる、カッコいいと思う、好きになる、
そんな恋愛対象は、男性・女性どちらの方が多いのだろうか。
ファム・ファタール(魔性の女)という言葉があるくらいだから、どちらもそういうことはあるのだろうけど。


この人は悪い人だ。
この人を好きになっても、幸せにはなれないだろう。
でも、頭では分かっていても目を逸らすことができない。ふと見せた意外な顔に、また心奪われてしまう。

それを恋と言わないで何と言うだろう


‥何の話?


数ヶ月前、自分には推しと呼べる存在がない、何か、胸ときめかせる存在が必要なのでは‥と思ったことがあった。


でもありました。

というか、いました。ときめいてしまう相手。

大丈夫です、家庭仲は安泰ですよ。


寝る前に、繰り返しその人の出てくるシーンを観て、
布団に入ってもスマホでその人の名前を検索し、
自分が思っていた以上に、その人の人気が高いことを知り、
私だけじゃないんだ!ということに、納得を覚えると同時にひどく悔しくなり。

でも私の場合、別にその人のグッズを集めたり、課金したりしようとは思わない。
また、私よりその人の魅力について、詳しく、また熱く説明出来る人は、世の中に山ほどいるだろうとも思う。

でも、私だって語りたい!

だって気になる存在だから!!

これを推しと言わずして何と言うだろう。

その人の名前は、


尾形百之助 という。


今さら‥という感じではあるのですが、
ご存じでしょうか。

ゴールデンカムイ」という漫画に出てくるキャラクター、しかも超が付くほどの主要人物の1人です。

アイドルや若手の俳優さんを期待された方すいません。
昔から、あまり、ジャニーズとかに詳しいタイプではないのです。
オタクと言うほど、詳しく、またどっぷり沼に浸かる訳ではないけれど。中学生頃から、どちらかと言うと友だちも、芸能より漫画やゲームに詳しい子の方が多かったかも。

‥ここでは「ゴールデンカムイ」のあらすじや細かい解説は省略します‥(説明できる気がしない。)


現在は堂々完結、コミックスも最終巻まで出ているけれど、連載当時から、新聞やネット等、あちこちのメディアで度々取り上げられて、話題になっていた作品だ。手塚治虫文化賞、日本漫画家協会賞などの数々の賞も受賞している。

ちなみに漫画のキャッチコピーは
冒険、歴史浪漫、狩猟グルメ全部入りッ!和風闇鍋ウエスタン‼︎」。

分からない人には全く分からないと思う。私もよく分からない。
でもとにかく色々あって、考えさせられるし、ものすごく勉強になるし、ジーンとくるし、へんてこりんな人たちも馬鹿馬鹿しいシーンもいっぱい出てくるけど、とにかく面白い漫画である。


コミックスは(元々は夫が)義弟から借りて読んでいた。最終話は、WEB上で期間限定・無料公開されていた時に読んだ。
布団の中で、明け方まで夢中で読んで、目と頭が痛くなった。最終巻が出てからはそちらも読んだ。平たく言って感動した。大満足だった。

でもその時は、まだ、ここまで推しではなかった。
作品そのもののエネルギーがすごくて、大きなドラマと個性的な登場人物たちが怒涛のうちに突き進んでいく、その全てに圧倒されていた感じだった。

何で今さらなのか、私にも分からない。
私が知らなかっただけで、尾形推しの人は、連載中からかなりの数いたようだから。
最後まで読んで、大きなうねりが落ち着いて、ここへきて、の尾形。

ただ、大きなきっかけの一つが、アニメであることは間違いない。
声を充てているのは、津田健次郎 氏。俳優としても活躍されている。朝ドラ「エール」ではナレーションを担当されていた。
クールで深みのある声、感情を抑えた喋り方は、一度聴いたら忘れられない。尾形のイメージにピッタリの声なのだ。

尾形は狙撃の名手である。
出自が複雑で、彼の生育歴における哀しい影と、その後の彼の思考・決断とが、物語の後半で更に深い闇となって浮かび上がってくる。(‥とは言えこの作品に出てくる人物は、みな大なり小なり複雑な過去を背負っていて、一癖も二癖もあるヤツばかり。そこがまた作品を魅力的にしている。)

強さは勿論魅力の一つである。
「不死身の杉元」と呼ばれ、やはり繰り返し繰り返し瀕死の状態から立ち上がる主人公 杉元佐一は、文句なしにかっこいい。手放しで応援したくなる存在だ。私も最初はどちらかと言うと杉元にばかり目がいっていた。
でも尾形の強さは、頼もしさや好感度とイコールでは繋がらない。肉弾戦で力を発揮する杉元と違い、離れたところから虎視眈々と標的を狙う尾形には、常に得体の知れないところがある。

尾形は、杉元からは、「一度寝返った奴はまた寝返る」と評される。実際、時を変え立場を変え、杉元は何度も何度も尾形と対峙することになる。

もう1人の主人公、アイヌの少女アシリパからも「お前は何一つ信用できない」と言われる。(アシリパさんは、普段、人をこのように強く非難することはあまりない。)

常に冷静沈着。頭はキレるが、要所要所で共に行動する相手を変え、最後まで敵か味方か(あるいはそのどちらでもないのか)分からない。彼の本心はどこにあるのか誰も知り得ない。
悪いヤツ。いや、
哀しいヤツ か、
彼のことを知れば知るほど、惹かれていく。

格好良すぎる。
あまりにミステリアスで。目が離せない。

頭で考えてるうちは、恋じゃない、分からないから、恋なのだ。

誰よりも愛情から離れていて、
おそらく誰よりも愛情を求めていた男‥
彼が、心から解き放たれ(祝福され)る時はくるのか‥

ちょっとどこへ向かっているか自分でも分からなくなってきました。多分こんな記事は今回だけな気がします。そろそろ終わりますね。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

でも悲しいかな、その人はこの世にいない。二重の意味で。物語はもう完結してしまっている。

平穏な現実生活を送っている私は、そのことは十分に理解しているのだけれど、
記事を書くためにコミックスを読み返し、ネットで彼についての情報を読み漁り、アニメで彼の出てくるシーンを何度もリピートして、溜め息をついている。


まだ少し。もう少し。しばらくアニメの進行を見守りながら、彼のことを追い続けていたい。

尾形百之助 が、今の私にとっての推しである。


悪いヤツを好きになったことは、ありますか。



ところで。(まだ書くんかい)

noteで #尾形百之助 のタグをつけたら、55件のヒット数でした。私が書いたので56件になりました!実際にはもっと沢山記事があります。ちなみに、noteにもこの作品のことを熱く語っている方が沢山いて、ゴールデンカムイ で記事を見つける、と記事は5000件ほど出てきます。読み応えがあるものもいっぱいなので、興味のある方はぜひ覗いてみてください。


ちなみに、とっても面白く、アイヌの文化(特に食)について詳しくなれる漫画ですが、血や殺し合いの描写が苦手な方には、あまりお勧めしません‥。あと変わった人たちや???な場面も沢山あります。なにせ、凶悪な囚人たちに彫られた刺青を集めながら、金塊を探す話なので‥。

ゴールデンカムイ」 野田サトル (集英社)全31巻

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