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【52枚目】はっぴいえんど『風街ろまん』

はっぴいえんどの2枚目のアルバム『風街ろまん』(1971)

このアルバムを取り上げると最終回っぽいですが、そんなことはありません。『風街ろまん』は初夏、個人的に五月のイメージがあるので聴きなおしました。まぁ割とちょくちょく聴いてるんですけど。聴いてると爽やかな気分になれますね。

はっぴいえんど (英語: HAPPY END) は、日本のフォークロックバンド。細野晴臣、大瀧詠一、松本隆、鈴木茂によって結成された。日本産ロック史の草創期に活動したグループの一つ。サウンド面においては、アメリカのバッファロー・スプリングフィールドなどの影響を受けていた。

レジェンド4人によるスーパーバンド。邦楽への絶大な影響力もあって「はっぴいえんど中心史観」って言葉もありますね。サウンド面においては「バッファロー・スプリングフィールド」「モビー・グレープ」の影響を受けていたとか。アメリカン・サウンドと日本の空気をミックスした音楽。

『風街ろまん』は「日本語ロック論争」に終止符を打った偉大な作品なんだそうです。その辺は詳しくないのでwikiをご参照ください...。どこか懐かしくて心地が良い作品。レトロ。古臭いとは言いたくないです。変わらない魅力、輝きがあると思います。フォークを普段聞かない人でも聴きやすいはず。日本人で『風街ろまん』嫌いな人いないんじゃないかな。若い人には退屈なんですかね。

改めて松本隆の詩が素晴らしいです。ベタですが「風をあつめて」「夏なんです」の2曲は特に素敵な詩と曲だと思います。他にも実験的で可笑しな曲が入っていて楽しいですね。ロックの精神も感じます。

1964年東京オリンピック以降の開発・近代化で急激に失われゆく「古きよき日本・東京の姿」「風街」という架空の街にみる、といったテーマが見て取れる。全体的にけだるい空気感がただよう。前作『はっぴいえんど』とくらべると松本隆による詞の世界観、大瀧詠一、細野晴臣、鈴木茂ら作曲陣による楽曲の質ともに洗練されており、はっぴいえんどとしての活動はこのアルバムでほぼ完成したと言っても過言ではない。

【収録曲】

1.抱きしめたい
フォークソング。乾いたヒリヒリする感じのギター。機関車に乗ってきみの街まで向かう、割と可愛い?内容だけど重め、ハードボイルドな雰囲気がおもしろい。「スゥー...」って煙草を一服する演技が渋いっすね。間奏がサイケな感じ。「ですます調」の詩も特徴的。

※アウトロの「シュッ」はビートルズの「Come Together」ですね。

”ぼくは烟草をくわえ 一服すると きみのことを考えるんです”
”きみを燃やしてしまうかもしれません”

2.空いろのくれよん
カントリー。のどか。ペダルスティールギターの音色が眠たくて良い。「オロロロ~」ってヨーデルが耳に残ります。”ぼくは きっと風邪をひいてるんです”って詩がなんだか好きです。

3.風をあつめて
名曲。素敵な街の情景が浮かぶ曲です。優しい。連続テレビ小説みたいな清々しい雰囲気。風が通り抜けていくようで爽やか。繊細なギターのフレーズ、素朴な細野晴臣の歌声が沁みる。オルガンの音色もアクセントになってますね。美しい日本語。

”街のはずれの 背のびした路次を 散歩してたら
汚点だらけの 靄ごしに 起きぬけの 露面電車が 
海を渡るのが 見えたんです 
それで ぼくも 風をあつめて 風をあつめて
蒼空を翔けたいんです 蒼空を”

4.暗闇坂むささび変化
”ところは東京麻布十番 折しも昼下り 暗闇坂は蝉時雨”ってスタートが決まっててかっこいい。日本語のテンポが軽快で楽しいです。”真昼間から妖怪変化”とか”ももんがーっ”とか。リズム隊のテンポ感、仕事が素晴らしい。マンドリンの演奏も爽快。

※原題は「ももんが」。暗闇坂は麻布にある坂であり、松本の東京へのノスタルジアを端的に現した曲である。

5.はいからはくち
チンドン屋的な愉快なイントロ。ハイカラですね。"ハイカラ・イズ・ビューティフル"はおちゃらけてて好きです。かき鳴らされるギター。曲を引っ張るようなベース。マシンガンみたいなドラム、パーカッション。うきうきします。”間奏!”とかロックでかっこいい。

※モビー・グレープ「オマハ」からの影響が濃厚な作品。
※タイトルは“ハイカラ白痴”“肺から吐く血”のダブル・ミーニング。

”ぼくははいから 血塗れの空を 玩ぶきみと こかこおらを飲んでいる”
”きみははいから 唐紅の 蜜柑色した ひっぴーみたい”

6.はいから・びゅーちふる
5曲目で飛ばした後の休憩な感じ。ゆるさが良いですね。尺もちょうどいい。

※お囃子が終わったところで入る多羅尾伴内(大瀧の変名)による「ハイカラ・イズ・ビューティフル」という英語のMCは、当時流行していた「フジカラー・イズ・ビューティフル」というコマーシャルのパロディ。

7.夏なんです
ここからB面。「夏なんです」曲名が最高。詩的で上品な一曲です。聴いてて個人的には夏の神社とか田舎の景色とか「緑」が浮かぶ。なんだか大正ロマン的な良さも感じます。”ぼくはたいくつ”って詩が夏の気分とマッチしている感じで好きですね。この曲も繊細なギターが沁みる。

”空模様の縫い目を辿って 石畳を駆け抜けると
夏は通り雨と一緒に 連れだって行ってしまうのです”
”日傘くるくる ぼくはたいくつ”

8.花いちもんめ
細野・大瀧からの作曲要請を受けた鈴木のデビュー作。スワンプロック感が出てますよね。ギターのぬるっとした感じが好きです。心地いいテンポ。のびのびした雰囲気の曲で綺麗にまとまってる。ゴリっとしたベースも良いです。

9.あしたてんきになあれ
コミカルでポップな曲ですね。ちょっと無理してるような裏声が印象的。全パートのフレーズがお洒落に仕上がってます。じっくり聴くとベースがクセになる一曲。

10.颱風
ブルージー。泥臭い。ボーカルはもちろん、ハーモニカ、バスドラの「ズン」「ズン」って音が渋いです。ワウの効いたギターのぶっとい音色とオルガンの軽い音色による不思議なハーモニー。あと自由に歌ってて好きですね。"迅く迅く迅く迅く"とか。5:10あたりの”休憩”、"台風 来るよ"、”来たぁ!”のとことか楽しそう。ちょっと長いかなとは思います。

11.春らんまん
気楽。春らんまん。肩の力抜いて聴けます。力入ってなさそうだけどコーラスが美しく感じます。気怠い雰囲気に上手さが詰まった演奏、味わい深い。

※「春よ来い」のアンサー・ソング。

12.愛餓を
最後はNHK教育みたいな曲。変で可愛い。30秒で耳に残る良いメロディーだと思います。口に出して歌いたくなる。

”あいうえを かきくけこ さしすせそそそそ たちつててとと
なにぬねの はひふへほ まみむめもももも やいゆえよ
らりるれろろろろ わゐうゑを ン”

「幸せな結末」もサブスクで聴けるようになってて良いですね。


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