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【17枚目】くるり『ソングライン』

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くるりの12枚目のアルバム『ソングライン』(2018)

くるりは邦楽でトップクラスに好きなバンドです。自己紹介で音楽が好きと話すと「どんなアーティストが好き?」という究極な質問がありますよね。あれって何か試されてる感じしませんか?(ひねくれてるだけ?)自分は「くるり」と「ゆらゆら帝国」と答えてます。好きなアーティストなんて挙げだすとキリがないですよね。

くるりは音楽性もメンバーも変化してきたバンド。一応はポップなオルタナティブ・ロックって感じですかね。作品ごとにテーマがあって好きな作品が分かれる印象。ゴリゴリの尖ったロックをしている「くるり」、クラシック音楽に影響を受けた「くるり」も好きです。ただくるりの音楽には芯があって普遍的な良さがあると思います。「くるり」らしさって何か...「柔らかい温かみのある音楽なんだけど挑戦的で遊び心がある」ですかね、あくまで主観ですが!

くるりの曲の中でも「ばらの花」が特に好きです。ソースは思い出せませんが、この曲は歌詞に余白があることで聴き手に想像の余地を持たせているそう。日常や別れや幸福のとらえ方は人それぞれだなと思わせる素敵な曲。

常に変化してきたバンドですが最新作が最高傑作ともいわれますね。懐メロバンドにならず20年以上進化しているバンド、かっこいい!
去年ライブを見に行った帰りに「くるりのこと」という本を買って読みました。当時の作品を作っていた状況や本人による作品の感想等、くるりの歴史を知れて面白かったです。この本を読むと現在のメンバーは納得して音楽に向きあえている状態でくるりの全盛期は今なんだと感じました。

『ソングライン』は現時点の「くるり」の最新作で「くるり」の原点回帰を追求した作品だそうです。過去の「くるり」らしさを拾いあげた曲が多い印象、懐かしさを感じる。『ソングライン』というタイトルからも今までの旅の軌跡、過去と現在のリンクを感じますね。歌もの、良いメロディの詰まった筋道のある王道な作品。「牧歌的」という表現がしっくりきました。悠々のんびりした自然や時間を連想させる内容。ミドルテンポな曲が多い、刺激のある曲は少ないけれど地味、退屈ではない。じっくり聞くと挑戦的な作品に感じます。

”「ソングライン」という言葉は、アボリジニが土や樹木や水に宿る精霊のの声に導かれるがまま移動を続けた旅の軌跡のことを指す、イギリスの紀行作家ブルース・チャトウィンの言葉である”

【収録曲】

1.その線は水平線
「その線は水平線」という曲名が絶妙ですね。視界が徐々に開けて澄んだ景色が曲から伝わってくる感じがする。夜明けのイメージ。ミドルテンポで前向きな曲。10年前から温めていた曲だそうで熟成された感じ。ギターがゴリゴリに歪んで重いけどくどくない不思議。王道のロックなようでいろんな音が渦巻いていて邪道にも感じる。

2.landslide
ブルー・アイド・ソウル風を目指した曲だそう。聴いていて心地の良いシンプルな曲。爽やかで切なさを帯びた感じ。弦楽器がいいですね。ベースがジャジー。

3.How Can I Do? (Album mix)
ポップス色が強い。落ち着いた大人な明るさ。トランペットやフルートの音が華やかで好きです。ベースも主張している印象。歌詞が意外と暗くて驚いた。確かに曲名も暗いですね、この曲は疲れている。

”これで終わりのような そんな気がしてる君と
歩く土曜日の午後 静かな遊歩道
風が吹いているから 進め前止まれ見よ
指先が絡みだす もつれた糸ほどく いつも”

4.ソングライン
牧歌的で多幸感あふれる曲。ビートルズっぽい。フォーク、サイケデリックな感じもあるけど「くるり」らしい。聞けば聞くほど良さがわかるスルメ曲。途中に入る「ボレロ」風なフレーズも曲のイメージにあってる。アウトロでギターソロが炸裂、音圧が最高!元は奥田民生に歌ってもらう予定だったそうで確かに歌い方とかそれっぽい。元の曲名は「ハイネケン」商標登録の関係で没。イントロの泡の感じとか栓が開いたプシュって音が良い。

5.Tokyo OP
変態。インスト曲。プログレッシブで攻めた内容。このアルバムで一番ロック。プログレ感満載のシンセ、分厚いギター、地を這うようなベース、突拍子もないドラムなどなど美味しいところが詰まってる。特にドラムのクリフ・アーモンドの技術が変態でかっこいい。中盤の讃美歌みたいなパートも好きです。非公式の2020年東京五輪のテーマソングだそう。予見していたのか混沌とした内容ですね。

6.風は野を越え
優しくておおらかな曲ですね。このアルバムでも特にお気に入りです!なんといってもサックスがずるい。風が吹き抜けるようなどこか寂しさを感じるような音。スローで歪みまくったギターはシューゲイザー感もある。透明感のあるアルペジオが映える。仮タイトルは「美しい歪み」こっちもいいな。

7.春を待つ
深みのあるバラード。アコギの音に優しい声やキーボードが絡みついてくる。「春を待つ」という曲名が良い、希望を見出そうと明るくも暗い感じ。4:10~のソロが情緒豊かで心に沁みる。

8.だいじなこと (Album mix)
J-POP感、ノリが明るくて良い。1:37秒という短い曲でサクッと終わるけれどパワーがある。(3分くらい聞きたいけど今の尺がちょうどいいのかも...)このアルバムでは飛び道具的な印象。TVアニメ「3D彼女 リアルガール」の主題歌。見たことはないですが...少女漫画の世界観に寄せた雰囲気ある曲ですね。

”時を駆け抜け やがてくる 新しい季節 夢とは少し違う
ただ覚えていることは だいじなことなんだ”

9.忘れないように (Album mix)
ポップでキャッチー聴き心地がいい。充実感のある休日みたいなイメージ。ピアノのタンタンとしたリズムが軽快で好き。トランペットも気持ちいいところを突いてくる。グルーヴ感、モータウンっぽい曲調。後半の転調とか含めてお手本のような良い曲って感じです。

10.特別な日 (Album mix)
飾り気は少ないけど丁寧で素敵な曲。歌詞が可愛い。優しいソフトなドラムが印象的。京都駅ビル20周年のメモリアルソングだそうで背景を知るとより良いですね。

11.どれくらいの
しんみりする。シリアスだけど優しく包み込まれるような曲ですね。泣かせに来るフレーズてんこ盛り。3:15~の後半の展開が最高、感情的で揺さぶられる。各楽器の音(特にギター、ピアノ)に色気、艶があって好きです。最後がぶつ切りなのが気になる。フェードアウトにしないのはこだわりなんだろうか...次につなげるため?

12.News
アルバムの〆、どこか懐かしくてすっと染み入る曲。この曲は個人的にもやもやする部分があってビリー・ジョエルの「Piano man」という曲に似ている。似ているけど「Piano man」を超えていないと思う点でマイナスな印象。嫌いではないんですが...まだ2つの作品を切り離して聞けていない。先入観がなければ良い曲だと思います。アウトロの光が指している方向へ進むような明るい終わり方は好き。

※今年は未発表曲を集めたアルバム『thaw』がリリースされましたね。サブスクでさーと聞いた印象は冒険してるなぁという感じ。未発表曲なんで冒険してて当然なんですけど。『ソングライン』に似てる個所もあるけど『thaw』のほうがやんちゃしてる感じ。ちゃんと腰をすえて聞き込みたいです。好きなバンドの新作をサブスクで聴くと罪悪感のようなものがある。

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