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【65枚目】Kendrick Lamar『To Pimp a Butterfly』

Kendrick Lamarの3枚目のアルバム『To Pimp a Butterfly』(2015)

2022年2月14日のスーパーボウル ハーフタイムショー、かっこよかったですね。いつの話だって感じですが。出演アーティストは「Dr. Dre」、「Snoop Dogg」、「Mary J. Blige」、「Kendrick Lamar」、「Eminem」そして、サプライズ出演した「50 cent」、「Anderson .Paak」。HIPHOP詳しくない自分でも知ってるレジェンドなメンバーです。

今回はKendrick Lamarの名盤『To Pimp a Butterfly』を深堀りしたかったので取り上げました。今年は新譜が出るとか出ないとか。期待大です。

ケンドリック・ラマーはアメリカ合衆国のラッパー。カリフォルニア州コンプトンの生まれ。幼少期に観た2pacとDr.Dreの音楽の影響を受ける。学生時代はギャング行為にはしる友人が多い中、学校を首席で卒業する真面目な学生だったそう。少し意外でした。

1995年(当時8歳)父と共にコンプトン・ファッションセンターにて撮影された、2pacとDr.Dreのヒットシングル「California Love」のミュージックビデオの撮影を生で観て感銘を受ける。

2010年代 最重要作とも評される『To Pimp a Butterfly』。第58回グラミー賞で最優秀ラップアルバム賞を受賞しています。2020年に改定された『ローリングストーン誌による「歴代最高のアルバム」500選』では19位にランクインしてますね。ちなみに18位がボブ・ディラン『Highway 61 Revisited』、20位がレディオヘッド『Kid A』です。歴代の名盤に引けを取らない一枚。参加しているメンバーは「George Clinton」、「Thundercat」、「Dr. Dre」、「Snoop Dogg」、「Robert Glasper」、「Pharrell Williams」などなど、エグい。成功が約束された作品ですよね。

アルバムはHIPHOPスターの成功→破滅→復活のストーリーで進んでいきます。芋虫から蝶への変化『To Pimp a Butterfly』というタイトル、超かっこいいですね。現代社会に生きる問題、苦悩を歌っていて詩の内容や背景を知るとより楽しめそうです。

1stアルバム『Section 80』は本で、2ndアルバム『Good Kid, M.A.A.D City』は映画で、今回のアルバムは詩、という。ブックレットの中に「A Blank Letter by Kendrick Lamar」と読める点字が隠されており、Kendrick曰く「アルバムの正しいフル・タイトルだ」。

当初、アルバムタイトルは「Tu Pimp a Caterpillar」で、省略すれば「Tu.P.A.C(2Pac)」となる。
このアルバムの最後のトラック「Mortal Man」で2Pacインタビューを引用しているためであるが、最終的に現在のアルバム名に変更した。`Butterfly'に変更した理由については「生活の明るさを見せたかったんだ。`Pimp'は攻撃性をもってるしね。他の理由としては、業界に誘惑(Pimp)されてないよ、ってことかな」と話している。

HIPHOPにジャズの要素が足されていて面白いですね。このジャズの塩梅がちょうど良い。耳に残って且つ聴きやすいです。ファンク、ソウルの要素もあってブラックミュージックの歴史を感じられます。クラシック・ロックのような良さ、輝きがある作品じゃないですか?前述のHIPHOPスターのストーリーで曲に喜怒哀楽、起伏があって聴いていて退屈しないです。

特に好きなのは「Wesley's Theory」「King Kunta」「Alright」です。

1.Wesley's Theory

懐かしくて優しいメロディーから一転。いかついHIPHOP。このイントロで心掴まれますね。「Hit me !」の掛け声がクソかっこいい。ぐにゃぐにゃしたベースに怪し気な電子音が絡んでドープな雰囲気。タイトルは2010年に脱税で実刑判決を受けたウェズリー・スナイプスのこと。黒人スターの問題を歌っている曲だとか。

※”Boris Gardinerが1973年にリリースした「Every Nigger is a Star」をサンプリングしている。”サンプリング元も好きな感じです。「Wesley's Theory」を聴きすぎて、途中から「Hit me !」の掛け声とともにラップが始まる幻聴が聴こえます。

2.For Free? (Interlude)

サックスのムードたっぷりな演奏から「アー!」というコーラス。テンションぶち上がりますね。そこから一気に駆け降りる。ジャジーでお洒落なピアノ、ウッドベースのスピード感が良いです。ドラムも激熱。高速で繰り出されるラップも流石。

3.King Kunta

元気で悪そう。ベースのリズム感が好きです。ズンズン進んで盛り上げていく。サビがシンプルに熱い。拍子抜けな「チーン」て音やゲップが曲に合ってますね。汚れた感じがかっこいい。タイトルの元ネタは黒人奴隷問題がテーマの小説「Roots」の主人公クンタ・キンテ。

4.Institutionalized

フラフラしててスピリチュアルな雰囲気。終始心ここにあらずって感じです。1:05~、ダーティに。ここの「ズンズンズンズン」ってとこ、ちょっと笑える。ちょこちょこ入るサックスがオサレで好きです。

5.These Walls

女性の唸り声からスタート。インパクトあるけど少し苦手。0:38~、爽やか。ポップ。踊れる曲ですね。サビのギターがピロロってなるとこ好き。3:19~、ロバート・グラスパーのシンセの演奏が落ち着く。ここからまったり、ねっとりしたパートも好きです。曲調は明るいですが、和訳を見ると暗くてエロに満ちた曲だった。

6.u

イントロから迫真の叫び。シリアスで感情的なラップです。1:55~、急に曲が切れて会話?が聴こえてホラーな感じ。そこからヘロヘロ、泥酔したような歌い方。バッド入ってますね。

Kendrickは「今まで書いた曲の中で最もキツかったひとつだ。とても自分の暗い部分が書かれている。利己主義だったり失望だったり。本当に憂鬱な部分だよ。でもたまにそれが助けとなるんだけどね」。

7.Alright

「ダッダッダッダッダー」ノリの良いイントロ。このコーラスずっと聴けます。「Alright!」のキメが気持ちいい。「Alright」という曲名ですが、底抜けにポジティブな曲ではないようですね。6曲目「u」の後に聞くと無理やり鼓舞している感じ。

8.For Sale? (Interlude)

イントロがちょっとゴスペル感あるような。そこから息切れの後、キマッた感じに多幸感あるメロディーが流れる。夢心地。お告げっぽくも聞こえます。曲が徐々に不穏になって終わり。

9.Momma

南国でゆったりなムード。3:30~、展開変わって忙しい、都会っぽい感じ。Jump!Jump!て叫ぶとこカッコ良い。前半と後半のギャップが良いですね。

Sly & The Family Stoneが1974年にリリースした「Wishful thinkin」とLalah Hathawayが2008年にリリースした「On Your Own」をサンプリングしている。

10.Hood Politics

イントロが抜群にお洒落で好きです。フラフラ。まったり。ダウナーな曲。曲に残響、モヤがかかった感じ。だけどラップは鋭さがある。2:50~、怪しい。テンション上がって好きなポイント。

Sufjan Stevensが2010年にリリースした「All For Myself」をサンプリングしている。

11.How Much A Dollar Cost

シリアスで美しい。少しもたったリズムが好きです。サックスの少し寂れた響きが良い。ピアノの音がぽろぽろ溢れる感じも良し。1:20~、展開が少し明るくて心地よい。ちなみにバラク・オバマ大統領は2015年のベストにこの曲を選んでいるそうですね。

12.Complexion (A Zulu Love)

何だかすごく今風って感じです。サンダーキャット感ある。ギターのフレーズとか近いのかな。超気持ちいいフレーズがずっと続く。楽器隊がズンズンとデカい音出してる上で優しいメロディが鳴ってる。スクラッチの音も好きです。

13.The Blacker The Berry

荒い。やさぐれ感。怒りが籠ってる曲。コーラスのヤジ飛ばしてる感じが特徴的ですかね。

14.You Ain't Gotta Lie (Momma Said)

ベースのフレーズがイケてる。お洒落。13曲目に比べて肩の力抜いて聞けます。クセがなくて聴きやすい。2:22~、ブレイクも良いですね。

15.i

喧騒からイケイケなギターのフレーズが聴こえてくる。ロックでファンクな一曲ですね。「I Love My Self!」のフックが心地いいです。女性のコーラスがパーティ感あって良い。自尊心の獲得がテーマの曲。収録曲の流れが6曲目「u(お前)」から15曲目「i(俺)」に変わってるのグッと来ますね。

The Isley Brothersが1974年にセルフカバーした「That Lady」(オリジナルは1964年にリリース)をサンプリングしている。

※イントロばちくそかっこいいですね。元気いっぱい。絶頂って感じ。

16.Mortal Man

この曲は2Pacのインタビューをサンプリングし、疑似対話形式となっていることが特徴だとか。神々しい。スピリチュアルな感じあります。悟りを開いたよう。落ち着いてて満たされてる心地よさがあります。ケンドリック・ラマーの声、メッセージは重みがあって落ち着いた曲調にマッチしてます。最後に「Pac?」と疑問を投げかける良い〆方だと思います。

Houston Personが1977年にリリースした「I No Get Eye For Back」をサンプリング。また1984年11月にニューヨークでMats Nileskar氏が行った2Pacのインタビューをサンプリングし、Kendrickとの疑似対話形式となっている。2Pacと最初にレコード契約を結んだTom Whalley氏は「これはKendrickのアイデアだね。素晴らしいアイデアだ。Kendrickが2Pacのファンで影響を受けていることも知っていたよ」と話した。

※2nd『Good Kid, M.A.A.D City』、4th『DAMN』の内容も理解したくなりました。『DAMN』の「Love」が特に好きです。ゆったり浮遊感。心地よい。


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