1年6組

「あいつやっぱ苦手だわ」
菜々子が話しているのは川田一郎の話。
転校生。こんな町に似合わないシティーボーイだ。
「なんか、ウザいよね」
煽るのは雅(ミヤビ)だった。
柔軟剤が香るシャツに腕を通しながら。

このグループでは菜々子がリーダー。
雅はいつもご機嫌とり。
「結海(ユミ)はどうなの?」
あからさまに肩が上がった、気がした。
ちょっとした沈黙。
ウ…ウ…みんなが求めている言葉。
「あー、だるーい」「雨じゃん」
「体育館に変更じゃね?」「えー」
助かった。天からの恵み、もう奇跡だ。

大きめのパックのミルクティーを
丁寧に潰しながら菜々子は更衣室を出る。
あとを追いかける雅たち。
入ってきたときと同じように
「女の子」の皮をかぶって。

雨 / 羊文学


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