【詩】 白雪の記憶

この降り積もる雪は年月
染まる大地は君との想い出
いつの日か僕らは僕らを思い出せなくなる

世界から色のない景色が生まれる すると誰もが心を奪われる
ならば君との想い出も完全に色を失えば 僕も素敵だと言えるだろうか
あの青い涙も 君の紅い頬も そして今の……この淡い想いも……

この降り積もる雪は年月
染まる大地は君との想い出
いつの日か僕らは僕らを思い出せなくなる

人にはなぜ 染まる大地が輝いて見えるのか
そこに光を当てているからなのか
いや違う 太陽があるから輝くのではない
その下に煌めく日々が埋没しているから 一面の雪が輝いてみえるのだろう
まだこの世界に趣がないのは 雪の輝きと本来の輝きとが
互いに主張し合っているからなのだろう

この降り積もる雪は年月
染まる大地は君との想い出
いつの日か僕らは僕らを思い出せなくなる

僕はそれでも雪が降ることを拒んだ
もちろん それには何の効力もなく 僕にも雪は降り注いだ 
けれど 大地は染まらなかった
心から眼に移した想いが雪を溶かすから 大地が染まることはまだないのだろう

されど その雫でさえ いつかは凍え 氷の世界をつくる
敷き詰められた氷の世界は下にあるものをみることはできようが もはや それは実態ではない
その下で輝く光は 僕に届くまでに 悲痛で固められた氷を通るから 歪められてしまうどんな光も 真っ直ぐに私に届くことはない 真実だと思う歴史も 稗史でしかない 
やはり それは歪曲された世界でしかないのであろう
結局 僕はこの大地を守ることはできない

この降り積もる雪は年月
染まる大地は君との想い出
いつの日か僕らは僕らを思い出せなくなる

僕はそれでもあがく
過去まで奪われる現実に僕は発狂し 氷を溶かそうとひたすら想いを流すだろう 
しかして 溶けることはない
その想いは雪を溶かすことにしか 意味をなさないのだから
ただ その静謐な氷の世界の下に微笑む女神をみつけるだろう
氷の下でもう明確に姿をみせてはくれないが それは間違いなく女神なのだろう
白い吐息を忘れさせ 心の深部を温めるのだから

この降り積もる雪は年月
染まる大地は君との想い出
いつの日か僕らは僕らを思い出せなくなる

君は雪が降ることを受け入れた
そして 一面白く染まった世界に瞳を閉じ それをそっとしまった
ふいにその世界に目を向ける そんなこともあるだろう
けれど もうその世界を真剣に見はしない
そこで少し遊んだあと 君はまた温かい場所へと戻るのだろう

これが素敵な世界なのだろうか。
いや そう考える僕が不自然なのだ
美しい絵を見て そこにある真意を探ろうとする評論化のような
そんな可笑しさを感じる
意思に関係なく 雪は降り そして 積もる
受け入れるかどうかでその後の世界は違えど いずれも美しい世界に変わりはない

この降り積もる雪は年月
染まる大地は君との想い出
いつの日か僕らは僕らを思い出せなくなる

けれど 僕たちはそこに素敵な世界をみつけるのだろう

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