(ユダヤの歴史)A SHORT HISTORY OF THE JEWISH PEOPLE〜ユダヤ人の歴史〜を読んで

前回に引き続き歴史に関する文献を読んだので内容の共有と個人的な感想を発信したいと思う。

今回紹介するのはレイモンド・P・シェインドリン著作(入江規夫さん訳)のA SHORT HISTORY OF THE JEWISH PEOPLE〜ユダヤ人の歴史〜である。前回まで紹介した作品と比べ、ややとっつき辛く読破に時間を要したものの世界の歴史の流れに沿って描かれていたこともあり、ざっくりとした世界史の歴史も辿ることができたのは有難かった。

今回も結論から申し上げると、ユダヤ人とはあるどの時点を取っても、巨大国家・巨大文明・巨大宗教・巨大思想をもつ国家・偉人達に「板挟み」され続けた歴史を持つ民族であると考える。そこにはユダヤの先祖が住んでいた地理的条件に加え当時の文明(時代背景)が多分に影響していると思うが、いつまで経っても世の中から「認めて貰えない」感情が常に存在していると捉え、従って、「シオニズム」運動やヘブライ語の「ユダヤ教」信仰が今でもなお盛んに(恐らく今後永遠に)引き継がれているのだろうと考えた。

世の常ではあるがユダヤ人も漏れなく、具体的な先祖が誰なのか特定することは出来ていない。著者はメソポタミア文明(アッシリア)とエジプト(バビロニア)の間にいたカナン人(カナン地方にすみ住人)・アモリ人(遊牧民)がメインではないかと推察するが、当時の記録は残っておらず民間伝承を通じてしか情報収集できない状態である。

ユダヤ民族の特徴としてキーポイントになると考えるのは以下の点。

① 中央集権(国家)が存在しないこと
② ディアスポラを通じて世界中にネットワークを張り巡らしていること
③ どれにも言えることだが「ユダヤ人」と一括りにできない多様性をもつこと

①は個人的に面白いと思ったポイントである。古代の大国(所謂、帝国や皇帝と言われる組織(国家))は広大な土地に存在するギルド(村のような小さい組織)を統治するために中央集権システムを当てはめ、君主制という形でその組織の象徴となる人を立てることでリードしていた(と個人的に捉えている)。一方、ユダヤの特徴としてギルドはギルドのままで夫々が自主的に統治し、ヤハウェという一人の王(神に選ばれし王)をトップとした組織体制を整えた。これは西欧から独立を図った今の米国(USA)の運営に類似するものだと考え、当時(紀元前)からある意味で一人一人の意見が尊重されやすい組織体制が整えられていたのではないかと考える。

②は上述の通り、文明間(メソポタミアVSエジプト)・国家間(エジプト対ギリシャ対ローマやイギリス&フランス対アラブ等)・宗教間(キリスト教対ユダヤ教)に代表されるようにそれぞれが夫々の目的により私的強奪(戦い)を繰り広げる中である意味巻き込み事故を食らいまくっている民族だと考える。またゲットーでの大量殺戮やユダヤ人による金融資本主義にも代表されるように、本来とは異なる勝手なイメージを植え付けられてきた過去もあり、まさに一難去ってまた一難の繰り返しの人生を過ごしていると感じる。だからこそ、ヘブライ語に拘るユダヤ教への信仰・選民思考等のイデオロギーの強さに繋がっているのではと考察した。

③一方で、世代交代が進む中、社会の変容も相まって夫々のディアスポラを通じて近代国家に同化する流れが加速しており、そのような事態が発生することは自然のことだと感じる。私がキャリアプランに不安を抱えるように、若いユダヤ民族も不安に駆られ、逃げ出すように他民族・国家・文化に溶け込んでいるのではないだろうか。勿論、右翼的な人たちは今でも「ユダヤ教」を信仰し次の世代に思想を引き継いでいくだろう。まさにJTCで窓際族と言われながらも安定して働きたい日本人のように。。。


以上、

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