アイコンタクト
私の名前を呼ぶことさえままならない
言いたいことも言えない
でも会話をしたい
意識が朦朧とした中で
力をふり絞っての
アイコンタクト
今まであれだけ
あなたと言葉を交わしたのに
渾身の会話って
言葉がなくても
アイコンタクトでできるんだな
黙って寄り添っている私
あなたがようやく言えた言葉
帰れ
遅くなるから帰れと
施設に足繁く通う私を
いつも気遣ってくれたあなた
そして
いつものように
バイバイし合って
あなたと別れた
いつもと変わりない別れも
いつかは永遠の別れとなる
四日後
あなたは
あの世へ
旅立った
抜け殻になったあなたに
黙って寄り添っている私
天寿を全うしたあなたらしい
今にも目を覚ましそうな
安らかな顔
レクイエムを脳裏に響かせながら
最期まで力強く生き抜くことを
身を持って教えてくれたあなたに
黙って寄り添っている私
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