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バーチャルをインターネットにしない

「どこから見つけてきたんだよ…」

アメリカ人は大好き「アメリカン・アイドル」という番組、中国でもコピー番組が乱立して大人気らしいです。素人さんが一芸を披露してゲストは驚き、会場のお客さんは狂喜する、という内容です。

筆者にとってVTuberを追いかける最大の理由は、この番組に近いものがあります。バーチャルの持つ最も輝かしい特性は、本来であれば世に出なかった才能が、化身を与えられることで守られ、見出される喜びが共有される場として存在することだと考えているのです。

実際、「今まで何処で何をしていたの…?」という、驚くべき才能を持ったVTuber数人とこれまでに出会いました。当然、「彼ら/彼女ら」は人間で、普通に楽しいからやっている人もいれば、顔出しでは活動しなかっただろう人もいるのでしょう。

この環境をどのように守れば良いのでしょうか。バーチャルであれば、肌の色も年齢も性的嗜好も障害や病気の有無も、極端なことを言えば前科前歴も問われない、そんな別世界を構築できるのでしょうか?

インターネット、我らの偉大なる

インターネットのトラフィック量はすでに「ゼタバイト」という理解を拒むような単位であらわされるのだそうです。大塚商会によれば、2020年にはデジタルデータは44ゼタバイトに達するとされています。ゼタバイトは1兆ギガバイトに当たります。

地球上にある「人間が興味ある情報」を全て集めても、ここまで膨大にはならないでしょう。かくも広大な領野はしかし、歴とした現実です。現実のニュースをトリガーに、住所や顔が特定されるのがインターネットです。ご存知の通り、バーチャルも現実の侵食に曝されています。

価値を創造する価値

この陣営に住んでいると、資本主義の素晴らしさを説法してくれる人に多く出会うのですが、ある人から聞いた面白い例え話があります。

大工が家を建て、ある夫婦がそれを二千万円で買う。大工は二千万円を手にする。夫婦は二千万円相当の家を手に入れる。世界に存在する価値は二倍になり、増分は経済活動によって新たに創造されたのである。

まるで買い物のお釣りをちょろまかすトリックや、数学のパラドックスのような話ですが、これを信じられるから人は投資をします。

先ほど触れましたが、インターネットの登場によって現実は非常な勢いで肥大しています。そこに何か新たに付け足す必要があるのでしょうか?それよりも、新たな価値創造に豊穣なフロンティアを探し求めるべきではないでしょうか。私たちは、新しい「アメリカン・アイドル」の番組プロデューサーを必要としています。

参加する

世界創造に必要なのは、ことば(ルール)だと言われています。

"Foisonnement des espaces et durées, galaxies, photons, spirales contraires, foudres inverses; par Lui (le Verbe) tout a été fait... à un moment, la création nous ouvre l'ombre lumineuse de sa Voix."

バーチャル全体では、それを進める主体も、そこへの参加の方法も正直よく分かりません。VTuberに限って言えば、視聴者の連帯を通して、総意の形成と意思表示の仕組みを作ることが今、重要に思えます。

この参加についても、視聴者が現実に立脚するのか、あるいはバーチャルに入るのかによって必要な仕組みが違ってくるのですが、どちらの整備が早いのでしょう。企業さんはYouTubeやTwitterの外にプラットフォームを作る機会を探っているのかもしれません。

いずれにしても、これは一個の社会であり、平等や公平をいかに担保するかという点において既存のプラットフォーム(例えば、Discord)の管理者さんたちには解決することが難しい課題のように思えます(例えば、誰かをキックする場合)。匿名インターネットの対偶として、実名バーチャルのような社会が本当に存立するのでしょうか?

でも何もしないと、バーチャルはインターネットになってしまいます。そうなれば「彼ら/彼女ら」はもう出てきません。


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