知性を武器に戦いたいアスリートのためのオススメ本 208選+α

割引あり

 僕(勝又大)は中学からソフトテニスを始めて今に至るまで約23年プレーしています(2024年現在)。東京大学文学部の哲学専修過程卒で、今も在野でスポーツに関する研究活動をしています。スポーツに関する本はたくさん読んできました。また、家庭教師を仕事にしています(模試で全国1位の経験あり)。「上達」についてのプロだと自負しています。

 今回の記事は、そんな僕が考えるヒントにしてきた書籍を紹介しようと思います。

 アスリートの方が、「スポーツについてもっと考えられるようになりたいけど、どんな本から読んでいいか分からない」と感じたときにヒントになるような記事になっています。もちろんプロでなくても、学生やアマチュアの方にも参考になる記事にしています。(指導者やトレーナーの役に立つような本の紹介は少ないです。ご了承ください。)
 「趣味は読書です」っていうアスリートを取り上げたweb記事を見ると、だいたい微妙なビジネス書を読んでいて「うーん」という気持ちになるので、せっかくだからもっといい本を読んでほしい!!っていう気持ちで記事を書きました!

 今後も本を読むたびに記事を更新していきます。一度購入していただければ更新の告知が届き、最新の記事をお読みいただけます!


評価の見方


 本は以下の3項目について5段階で評価しました。

①    読みやすさ ☆☆☆☆☆
②    僕が感じた面白さ ☆☆☆☆☆

 僕には客観的な良し悪しを評価するほどの判断力がないので、そういう評価はしないことにします。代わりに主観的に感じた面白さだけ5段階で評価します。僕の評価が低い本も、僕の理解力が足りないだけで本当は面白いかもしれない(Amazonのレビューではよくあることです)ので、低く評価した本もぜひ読んでみてほしいです。

 また、僕が読んだり知っていたりする本だけを紹介しました。僕が詳しくないジャンルもたくさんあるので、ここに紹介してない本でも面白い本はたくさんあります。載っていないものは単に知らないだけで、評価が低いわけではありません。



読みやすさ
 本を読むのに慣れていない人は星3以上を読むことをおすすめします。星4以上なら挫折する心配も少ないでしょう。

☆なし・☆ 学術的な本を読むことに慣れている人向けの本
☆☆ 話の論理展開を追うために頭を使わないといけない本
☆☆☆ 学術的な内容も紹介されたりしてはいるが、文章は読みやすい本
☆☆☆☆ 硬い言葉を使っていなくて読みやすい本
☆☆☆☆☆ 本を読む習慣がない人でもすんなり読めるレベル 字の量が少ない本


僕が感じた面白さ
 星4以上の本は自信を持っておすすめします。星が多いものだけ目を通すという使い方もOKです。

☆    なんで買ったんだろう
☆☆ うーん、読まなくても良かったかも
☆☆☆ まあ買った意味はあった。ぼちぼち
☆☆☆☆ 面白い!新しい発見が!!
☆☆☆☆☆ 考え方が変わった。すごい!!やばい!!

 また、記事を購入いただいた方は、内容の転載・共有等はしないでください。よろしくお願いします。

 記事の売り上げは研究費に充てさせていただきます。新しく本を読むごとに、こちらの記事も更新していく予定です。



本の選び方

 年間7万冊くらいの本が新たに出版されているという。そんな大量の本を読むことは誰にもできない。だから、読む本を選ぶことは読まない本を選ぶことでもある。世の中には面白い本もたくさんあるが、面白くない本もそれ以上にたくさんある。8割くらいの本は読む必要がない本だと思う。どうすればそういった悪書を避けて良書に巡り会えるだろうか。私がたくさん失敗した経験(このブックレビューに載っている本の中には、そういう「失敗」で読んでしまった本も含めてある)から学んだコツを紹介しよう。

・書店で選べ

 オンラインで買うのは便利だが、オンラインだけでいい本に出会うのは難しい。大都市に住んでいるなら書店で本を選ぼう。気になった本は、パラパラとめくる。特に、目次を見ると全体の内容がだいたい把握できる。著者のプロフィールもチェックする。タイトルと中身が一致しない本もあるので中身をチェックする。こういう作業がとても大切だ。
 そして、書店の経営はどこも苦しい。本を買うならリアル書店で買ってほしい。電子マネーは書店側が手数料を負担するから、現金で支払うとなおよい。ネットで買う場合もAmazonではなくhontoを使おう。ちょっとの不便を受け入れることが書物の文化をささえることにつながる。

・著者を見ろ

 著者のプロフィールを見れば、本の信頼度がだいたい分かる。権威主義になるのもよくないが、大学の先生が書いた本の方が、よくわからない会社をやっている人が書いた本より信頼できる。他にどのような著作を出しているか見ると著者の専門分野が分かる。うさんくさいタイトルで大量の本を出している人の本は避けよう。インフルエンサーの本は読まなくていい。今売れている本よりも長く売れている本の方が良書揃いだ。大量に本を出している人の本を買う場合は、初期の著作か集大成のような著作を選ぼう。そういうものは気合いが入っている。売れている本を読むときは、内容を参考にしようという意識で読むよりも、今どういう考えが世間で流行っているか知ろうという意識で読むといい。それなら参考になる。

 きっちりしたタイトルの本を数冊出している人の本が、良書であることが多い。著書が1、2冊しかない場合は、著者にあまり実力がない可能性が出てくる。プロフィールと併せて、どういう人なのか考えてみよう。こういう著者の本の中にも、ときどきすごく面白い本がある。そういう本を掘り当てられるとテンションが上がる。

・タイトルにだまされるな

 本のタイトルは内容を反映していることもあればしていないこともある。無味乾燥なタイトルがついている場合は、サブタイトルまでよく読めば本の内容がだいたい分かる。学術的な本は内容をそのまま表すタイトルが付けられている場合が多い。タイトルをしっかり読もう。一方で、売れる本にするために、内容とあまり関係のないキャッチーなタイトルが付けられている場合もある。「〇〇が9割」とか「人はなぜ〇〇を〇〇なのか」みたいなやつだ(笑)。こういうタイトルの場合は、冷静に中身を確認することが大事だ。海外の本を邦訳したものにも、こういうタイトルのものが多い。

 例を一つ挙げよう。

 『いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学』

 これは合わせ技だ。前半が釣りに来ている(笑)。みんな「時間がない」と悩んでいるのでつい手に取ってしまう。本の内容を正確に反映しているのは後半だ。学問のジャンルとしては「行動経済学」にあたる本だということが分かる。そして「欠乏」をテーマにした本だということも分かる。欠乏というテーマを行動経済学の観点から考察した本だ。

・レビューは数字だけで判断するな

 Amazonなどでレビューを見るのもいい。だけど、単純に数字だけで判断するのはよくない。僕は以下のようなポイントを見る。高評価レビューと低評価レビューを読んで、レビューの質を判断する。薄っぺらい高評価は信頼できないし、言いがかりみたいな低評価も信頼できない。評価のばらつき具合を見て、全体的に高評価なら手堅い良書で、高評価と低評価に割れる本は挑発的な内容で、全体的に低評価ならつまらないだろうと予想できる。高評価と低評価に割れるタイプは良書か悪書かの判断が難しい。レビューをパラパラと見ていると、本の内容が分かることも多いので、タイトルや著者プロフィールに加えて、レビューまで参考にすると本の内容がそれなりの精度で予想できるようになる。レビューはアマゾンだけでなく読書メーターやブクログなどにもたくさんあるので、複数サイトに目を通せばさらに信頼度が上がる。

・芋づる式に探せ

 上記のような方法で、本を探していけば良書に出会う確率は上がる。だが、本の数は膨大で時間は限られている。選書にかける時間も節約したい。信頼できるブックガイドからスタートするのがいいだろう(勘のいい人はもう気付いただろう。そう!この記事を買うんだ!今すぐに!)。

 そして、面白いと思った本に引用されている本を読むといい。そうやって芋づる式に本のネットワークを広げていけば、面白い本がどこにあるのか段々分かるようになってくる(ただし、これは引用がたくさんある学術的な本の場合で、自伝のような本の場合は芋づる式には広がらない)。

超おすすめの16選

1.『ゴルフ「ビジョン54」』シリーズ ピア・ニールソン、リン・マリオット

読みやすさ ☆☆☆☆
僕が感じた面白さ ☆☆☆☆☆人生が変わったレベル

  アニカ・ソレンスタムや宮里藍のメンタルトレーナーとして有名な方による本。ビジョン54という言葉は、全てのホールでバーディーを取れると信じるといことからきている(全ホールでバーディーだとスコアが54になるから)。決断ボックスと実行ボックスに分けるという考え方。漫然と打ちっぱなしをするのではなく、1球1球クラブを変えたり、狙う位置を変えたりするという練習のやり方。素晴らしい考え方と練習方法に溢れている。僕がアカウント名やメールアドレスに54という数字を入れているのは、ここから来ている(どうでもいい)。

 


2.『インナーゲーム』シリーズ ティモシー・ガルウェイ

読みやすさ ☆☆☆☆
僕が感じた面白さ ☆☆☆☆☆ 人生が変わったレベル

 著者はテニスで全米ハードコート選手権優勝経験があり、ハーバードでテニス部の主将を務めた経験のある人。禅の影響があると思う。
 最も中心になる理論は、あれこれと心の中でおしゃべりをする「セルフ1」の働きを抑えて、「セルフ2」の力の自然な修正能力を引き出そうというもの。ボールのバウンドとインパクトに合わせて声を出すことだけに集中していると、セルフ1の働きが弱まる。そしてセルフ2の自然な修正能力が引き出される。実際にやってみると本当に変わる。高校生のときに読んで衝撃を受けた。当時は頭でっかちで努力していたから。
 テニスを題材にしたものとゴルフを題材にしたものがあるが、どれを読んでも他のスポーツに活用できる。『新インナーゲーム』が1冊目にちょうどいいかな。『インナーゴルフ』は書かれた時期が遅いので理論が深まっていて内容が充実している。『内面の障害に打ち勝つ!インナーゲームオブストレス』だけは未読。


 

3.『習得への情熱』

読みやすさ ☆☆
僕が感じた面白さ ☆☆☆☆☆ スゴすぎる。こんなスゴい人がいるのか。ヤバい

 チェスの全米チャンピオンで、太極拳の世界チャンピオンというイカれた経歴の持ち主が、自身の学習理論を語っている本。心理学の知識も踏まえているが、基本的には自分の言葉で語っている。こんなヤバい人がいるのかという感想。そりゃあ二つの分野を極めることができるわけだ。ネガティブな状況を利用して集中状態に入っていく手法とか、相手の心理を観察し熟練した技術を活用して行う駆け引きの技術とか、レベルが高すぎる。この人はほんとレベチなので必読。


4.『走る哲学』為末大

読みやすさ ☆☆☆☆
僕が感じた面白さ ☆☆☆☆☆

 X(twitter)でのつぶやきを元にした初期の本。為末さんの基本的な考えは一通りここに出揃っていると思う。初期の本なので、基本的な考え方が一番ありのままの形で表れていると思う。つぶやきを元にしているのでちょっと粗削りでもあるけど、それが逆にいいし、読みやすいのでこれがおすすめ。

 

5.『禅とハードル』為末大・南直哉

読みやすさ ☆☆☆☆
僕が感じた面白さ ☆☆☆☆☆

  禅僧との対談本。南直哉は禅僧の中でも変わった人で尖っている。座禅体験と、ゾーン体験の共通点を軸に対談が進んでいく。禅から見ると、ゾーンがそういうふうに見えるか!という面白さがあって、2人の組み合わせがいい相乗効果を生んでいてとてもいい1冊。南直哉にさらに興味を持ったら『老師と少年』や『語る禅僧』もどうぞ。


6.『弓と禅』『日本の弓術』オイゲン・ヘリゲル

読みやすさ ☆☆
僕が感じた面白さ ☆☆☆☆☆

 翻訳が複数あるので、タイトルもいくつかあるけれど内容は基本的には同じ。戦前に来日したドイツの哲学者が、弓道の達人に弟子入りして、困惑しながらも修行を続けた過程を記述した本。なんでも分析して論理的に考える西洋の哲学者からすると、東洋の武道は不思議すぎてとにかく困惑したらしい。何度も師匠に質問しては、跳ね返される。そういう人だからこそ、かえって東洋的な武道の本質を徹底的に考えて、その特徴をわかりやすく印象的に描き出すことができている。武道・武術を哲学的に考察する際には、頻繁に引用される重要な著作。
 哲学的な本ではあるけれど、具体的なエピソードもあるし、比較的薄いので、まだ読みやすい部類に入るかなと思う。
 師匠が、暗闇でまず1本矢を放ち、次の矢を1本目の矢に当てる場面とかやばい。
 「私」ではなく「それ」が弓を射るのだ、とか分かるような気はするけど、その域には全く到達できている気がしない、、

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