知識量やスキル量とコーチングの成果は関係ない?(後編)
この記事では、クライアントのコーチャビリティ(コーチングを活用する能力)と関連して、どのようにコーチングの結果を出していったらいいかを解説しています。
コーチ歴に左右されずに、結果を出すヒントが含まれていると思いますので、活用ください。
コーチングを受けるときに役立つ能力は色々ありますが、今回は上記のような要素を中心に検討しています。各項目の解説は前編にあります。
④コーチの能力で補う
クライアントのコーチャビリティが低くても、コーチの能力で補うことができます。要はコーチのコーチャビリティ(コーチングを活用する能力)が高い場合は、その力をクライアントのために使えるということです。
コーチのコーチャビリティが高いのは当たり前のような気がしますが、必ずしもそうでもありません。
もちろんコーチングを受けるのが上手、活用するのが上手なコーチは多いです。ところがコーチングを受けるのが苦手、コーチングを受けて結果が出てことがないというコーチもいるわけです。ほとんどクライアント体験がないコーチもいます。
自分もコーチングを受けるのが苦手なコーチと、コーチングを受けるのが苦手なクライアントの組み合わせだと、結果が出にくいのは想像できますね。
ですからコーチはコーチングをたくさん受けて(できればいいコーチに受けて)、コーチングを受けることになれたり、得意になると良いのです。そうすることでもクライアントの役にたてるようになっていきます。
ではどのようにコーチの能力を使って補うことができるのでしょうか。
例えば
コーチがゴール設定力が高いなら、クライアントがゴールをつくるのを
積極的に助けてあげることができますね。モチベーションが維持しやすかったり、どんな行動をとればいいかイメージしやすい形にゴールを作り込んでいくことを手伝ってあげるのです。
また、クライアントの「やりきる力不足」を補うために、コーチが積極的に仕組みづくりをサポートしたり、毎日のこまめな勇気づけなどで行動の継続を手助けできます。明るい元気なコーチがチアリーダーのように関わることができたら、それだけでコーチングがうまくいく可能性があがります。
他には論理思考力もそうですね。コーチの論理的思考力が高い場合は、クライアントのプランの抜け漏れをチェックしてあげたり、他の打ち手の提案などしてあげることができますね。「◯◯の点についてはどうですか?」など、くらいが見落としている観点を提示できているコーチは、論理的思考力や、フレームワークを活用する力で、クライアントをサポートしているのかもしれません。
コミュニケーション力もそうです。人間関係がテーマのセッションなどだと、コーチングのなかで対人コミュニケーションについて考える必要がありますね。相手とどのようにコミュニケーションを取るとよいか、クライアントが思いつかない場合、コミュ力の高いコーチだと、言い回しの提案などしてあげることもできますね。
あとは「思い込む力」。これはクライアントの「その気になる力」のことです。「できるかも!」「むいてるかも!」と思い込む力ですね。クライアントの思い込む力が弱い場合も、コーチの信念でサポートできます。「ぜったいいけるよ!」「むいてる気がする!」と確信もって伝えることで、クライアントがその気になるわけです。
例えば上記の例のように、コーチは自分がもっている能力を使って、クライアントをサポートするんだと決めたら、それで貢献できるわけです。ぜひ、自分のどの能力で貢献しようか決めて、それを使ってサポートしてみてください。
⑤コーチャビリティを鍛える
コーチングを受け続けると、基本的にコーチャビリティは鍛えられていきます。コーチャビリティは後天的に鍛えられる能力なのです。だからコーチが意図的にクライアントのコーチャビリティを向上させようと考えれば、クライアントはどんどんとコーチングを活用できるようになっていくのです。
例えば、ゴール設定力。コーチングではコーチから繰り返し「ゴールは何か」と問いかけられますし、SMARTゴールなどのガイドラインに従って、ゴールをより効果的な形に整えていくことになります。
そして、そのゴールを元に、行動のアイディアを出し、実施し、振り返り、ゴールの達成を目指すわけです。
こんなプロセスを繰り返すことで、どのようなゴールが描けると自分が変化しやすいかを学ぶことができますし、ゴールに向かって「やりきる力」も向上します。行動とその結果から学び、柔軟に次の行動へと変えていくことも得意になるのです。
他にも、自分の気持ちを問われ続けるので、内省力は向上します。ポジションチェンジを多用するコーチのセッションを受けると、相手の立場で考える立場力や、自他を俯瞰的な視点から観察する俯瞰力もあがります。そうするとコミュニケーション能力も向上します。
コーチと一緒にチャレンジを続けることで、自己効力感もあがりますし、他者を信頼することもますますできるようになってきます。
実はコーチングとは、目標としている結果が手に入るだけでなく、このように各種能力が向上するプロセスでもあるのです。こう考えると、コーチングセッションを受けないのは、勿体無いことだと思います。コーチングを受け続けると、幸せに生きていく能力自体が向上するのです。
このプロセスをさらに促進させたいと思うなら
『質問と勇気づけでどんな能力でも鍛えられる』
という原則を覚えておくと良いでしょう。
具体例で考えてみます。クライアントの「ゴール設定力」を上げたければ
「どうしたらゴール設定がうまくいくだろう?」
「どうしてゴール設定がうまくいったの?」
などと質問をすればいいのです。そうするとクライアントは、うまくいく要因や、うまくいった理由を考えることになりますから、「ゴール設定」に関する学習が進むわけです。
あとは
「では、どのようにゴール設定したらいいだろう?」と行動に転換し、その行動をとることを勇気づけしたらいいのです。
さらに
「やってみてどうだった?」と振り返ってさらに学習を促すこともできますね。
このように5W1Hの質問の活用で、相手の能力向上の手助けができるのは、覚えておきたいですね
⑥即効性のあるTIPS
ここまでの検討を踏まえて、あなたのコーチングを変える「簡単かつ効果的なアイディア」を5つほどご紹介したいと思います
A.チアリーダーとして関わる
もっとも簡単で効果的なのがこれです。とにかくクライアントをポジティブな眼鏡で見る。いつでも最高の応援団でいる。負け試合だろうが、負けて腐っている時であろうが、変わらないエネルギーで、信じて応援してくれる人がいたら、人はまた頑張ろうとするのです。
アドラー心理学では「勇気づけ」と言います。勇気とは行動を続けるエネルギーです。どんなときもクライアントが勇気をもって、現在の状況を切り開いていけるように手を尽くすのです。自分の一挙手一投足がクライアントのエネルギーにどのような影響を与えているか、観察し、常にエネルギーをあげる関わりしかしないと決めるのです。
結局クライアントの人生はクライアント自身にしか変えられないのです。クライアントが良いエネルギーでとりくめるように、チアリーダーとして関わりましょう。このことで結果を出し続けているコーチはたくさんいます。
B.ニーズを満たす
とはいえ、クライアントのエネルギーが上がりにくい場合は、心身のケアを考えもらうといいでしょう。簡易的にはまず心身の状態を10点満点で採点してみます。
最高の状態が10点だとすると、現在の身体の状態は何点?
最高の状態が10点だとすると、現在の心の状態は何点?
この質問の答えで、心身の状態が点数化されますね。そうしたら、
身体の状態を1点あげるために、できることは何?
心の状態を1点あげるために、できることは何?
と質問をして、状態を良くするための行動について考えてみるのです。その答えは多くの場合「ニーズ」と呼ばれるものと関係しています。
ニーズは、アブラハム・マズローの欲求階層説でお馴染みの、欠乏欲求と呼ばれるものです。マズローの図式だと「生理的欲求」「安全欲求」「所属欲求」「承認欲求」の欠乏欲求が満たされることがないと、成長欲求にスイッチが入らないのです。
コーチングがうまくいかないときは、クライアントの欠乏欲求=ニーズが満たされていない可能性があります。そんなときには、上記の質問を使って、クライアントの心身の状態を良くするためにできることを探してください。結果としてニーズが満たされ、成長欲求が芽生えてくる可能性があがります。
C.外部リソース活用
つぎは外部リソースの活用です。なんでもコーチとクライアントで成し遂げようとせず、むしろなんでも外部リソースの活用を狙っていくのです。
ゴール達成のために活用できそうなリソースは?
これまで活用していないリソースにはどんなものがある?
もし誰でも手をかしてくれるなら、誰に手伝ってもらいたい?→どうしたらその人が手伝ってくれる?/それに近いことはどうしたら起きそう?
などなどリソースを明らかにする質問を多用しましょう。
僕の大好きな質問も紹介します
誰とコミュニケーションをとったら、ゴールがもっと明確になる?
誰とコミュニケーションをとったら、使えるリソースがわかる?
誰とコミュニケーションをとったら、行動しやすくなる?
なんでも使えますね。コーチングがうまくいかなかったらこの質問に頼って、外部リソースを活用してもらってください。
D.体験学習サイクル活用
コーチングは行動と学習のサイクルを回すことが命です。うまくコーチングができなくてもいいのです。とにかくどんなものでもいいから、意識的に行動をしてもらってその結果を観察してもらいましょう。
そうすることで、主体性も向上するし、効力感もあがります。そして何かやってみたいことが生まれてくるのです。
とにかく行動してもらう。と決めて、どんなことでもいいので行動してもらいましょう。セルフケアのための行動でもいいし、自己理解のための行動でもいいし、他者貢献のためも行動でもいいのです。
何かしてもらって、結果を観察してもらったら
「次は何をしてみたい?/してみるとよさそう?」
と質問して次の行動に繋げます。これもチアリーダーになったつもりでやるといいですね。※詳しくは僕の体験学習サイクルに関する記事を読んでみてください
E.ポジションチェンジの活用
ポジションチェンジを使うと、クライアントの人間関係がよくなりますから、クライアントは生きやすくなりますし、パフォーマンスが向上しやすくなります。
そんなに難しいものではありませんから、あまり使ったことのないコーチも練習して使ってみてください。僕は特に頑張ってきたのは実はこれです。
例えばあなたに使ってもらいたい質問は
相手にわかってもらいたいことは何?
どう伝えたらわかってもらえそう?
というものですが、質問だけだとさすがにうまくいく可能性は低いので、ポジションチェンジをやったことのないコーチは以下の記事などを参考にしてみてください
応用の仕方はさまざまですし、コーチングの可能性が相当広がりますから、僕の書いた色々な記事も漁ってみてください
⑦コーチとは何者か
いかがだったでしょうか?
コーチは狭義のコーチングをするだけの人ではない!と言うのが僕の持論です。コーチ自身が持っている各種能力でクライアントをサポートして良いのです。
大切なのは、クライアントが幸せになること。そして自立と協力のライフスタイルで、この社会を生きていけるようになること、です。
だからそこに繋がるなら何でもあり。クライアントのリソースも、コーチのリソースも、外部のリソースも使い倒したらいいわけです。
コーチとクライアントは、人生のベースキャンプです。ぜひクライアントが、自信を持って人生にチャレンジ出来るような、安全な基地を作りましょう。
しかしコーチは、その前線基地の番人ではありません。私たちが生きていること、現役であること、チャレンジしていることもクライアントにとっては大きな刺激です。
人生の主人公同士(コーチとクライアント)が出会うのがコーチングとい場なのです。
ぜひそんな風に生きていきましょう
おわり
僕たちと一緒に人生を変えるコーチになりたい方は
お気持ちありがとうございます。資料入手や実験などに活用して、発信に還元したいと思います。